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2014年3月15日2014年7月7日

福岡民報 2014年3月号

「分かるまで勉強したい」―子どもと親の願いにこたえる無料塾

党県委員会 青年・学生委員会副責任者 小林解子

福岡市内3か所で開催している無料塾のとりくみについて報告します。

3か所の無料塾のうち、城南区と東区は2011年から、南区は2013年から、それぞれ開催を始めました。私も、スタッフとしていくつかの塾に関わっています。どの塾も継続していますが、最初から順調だったわけではありません。実際に運営する中で見えてきた課題もあります。走りながら考え、解決する、というのがほとんどの塾に共通していると思います。そういう状況ですので、とりくみを振り返って総括することができていませんでした。

今回は、紙面を通じて無料塾のとりくみをお知らせすると同時に、ここでは、私が開催当初から関わっている城南無料塾の経験を中心にしながら、無料塾の課題と可能性について考えてみたいと思います。

無料塾ってどんなところ?

まずは、無料塾がどんなところか、ご紹介したいと思います。

新聞やテレビでも無料塾のとりくみが紹介されはじめ、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。最近は赤旗日曜版(2月9日付)でも紹介されています。全国的には、NPO法人や自治体、退職した教師、民青同盟など様々な団体、個人がとりくんでいます。

福岡市内の無料塾は、倉元たつお前市議と民青が中心になってスタートした城南無料塾、東博多地区党青学と民青でスタートし新婦人や保護者が中心になって運営している松島無料塾、福建労と民商の事務局が中心になり法律事務所に場所の提供をしてもらっている南無料塾があります。

南無料塾は始めて問もないために不定期となっていますが、残る2つの無料塾は毎週定例開催しています。

無料塾は、塾とは言え、いわゆる進学塾とは違います。まず、授業はありません。時間割がなく、出入り自由です。地域によってばらつきはありますが、小学生から中学生、高校生まで幅広い年齢層の子どもたちが参加をしています。

バラバラの時間帯にやってきては、学校の宿題、予習・復習、問題集、テスト勉強などそれぞれがしたい勉強をします。基本的には自習ですが、質問があるときにはスタッフが一緒に考えたりアドバイスをしたりしています。

塾の中ではパンやおにぎりなどの軽食を出すところもあります。放課後の時間帯ですので、当然おなかがすきます。特に部活帰りの子どもは「疲れたー。」「おなかすいたー。」と言いながらやってくることもしばしば。軽食の時間はちょっとした楽しい時間にもなっています。騒ぎすぎて大変な時もありますが。

地域で無料塾が定例化していくにつれて、子どもたちの保護者や地元党支部の方からお米やパン、おやつの差し入れをいただくことも多くなり、時には運営のためのカンパをいただくこともあります。「無料」塾ですから、子どもたちからお金をとることはなく、スタッフもボランティアです。多くの方々の支えで無料塾は運営されています。

無料塾開催まで

無料塾開催にあたっては、場所とスタッフ、子どもと保護者の要求があればどこでもできます。

城南無料塾は、党の事務所で開催するときに「城南無料塾」の立て看板をかかげています。松島無料塾は、地元の松島会館という公共施設を借りて開催しています。南区無料塾は、法律事務所の一室を借りて開催しています。

学び合い、居場所としての無料塾

母子家庭、父子家庭の経済的に困難な子どもたち、進学塾に行ってみたけど授業のスピードについていけない、雰囲気があわないなどの理由で無料塾に来ている子どももいます。

集中力が切れて、おしゃべりをはじめたり遊び始める小学生もいます。最初のうちは「勉強が終わったら帰っていいんだよ。」と言っていましたが、「家に帰っても誰もおらんもん。」「家に帰ったらテレビ見てしまう。」など、帰れない、帰りたくない事情があることも分かってきました。今では、ほとんどの子どもたちが最後まで残っています。

城南無料塾では、子どもたちの発案で2回のクリスマス会をしました。当日の司会、ゲーム係、ケーキの材料分担など、声かけ担当などを自分たちで決めて、大人たちはそのサポートにまわりました。生き生きと準備をすすめる子どもたちの様子を見て、頼もしく思いました。こうしたことは無料塾を始めた頃には考えてもいませんでした。

継続して開催する中でお互いが仲良くなったことと、子どもたちの自主性を尊重する無料塾の雰囲気がよかったのかなと思います。

3年間にわたって子どもたちと関わっていく中で、無料塾は単に勉強する場というだけでなく、子どもたちにとっての居場所にもなっていることを実感しています。当時小学生だった子が中学生になり、中学生だった子が高校生になり、多少の入れ替わりがありつつもほとんどの子どもが今も事務所に顔を出します。久しぶりに顔を出した高校生が「学校で先生に質問しにくい。」と打ち明けてくれたこともありました。

中には塾から出される膨大な宿題を持ちこんでくる中学生もいて、聞くと「やらないと塾の先生に殴られる」というのです。中学生になると授業が早すぎてついていけないという話をよく聞きますが、学校だけでなく塾でも学校の延長のような時間が続くのは心身ともに疲れる事だと思います。

勉強の合間に学校生活や家庭での話を子どもから聞くことがあります。学年が上がるにつれて、話の中身も少し変化してきます。小学生はその日学校であったことの報告が多いです。中高生になると、勉強の悩み、人間関係のストレス、親への反発、進路などの悩みを話してくれることがあります。私はこういう時間も大事だと思っています。

先ほども述べましたが、子どもたちと接する中で見えてくることがあります。労働環境が悪くなる中で、どの家庭でも親子で過ごす時間が少なくなっていることや、インターネットや携帯電話の普及によって、緊張した人間関係に常にさらされていることも分かりました。

学校の現場でも、教師が生徒の話を聞いたり、丁寧に授業する余裕がなくなっているようです。

子どもたち自身に無料塾の魅力を聞いてみると「ごはんが食べられるとこがいい」「家だと集中できないけど、ここでなら勉強できる」「気軽に分からないところを聞ける」などおおむね好評です。

保護者からは「子どもたちが自分たちで学び合う場所を提供してもらって感謝してます」「子どもが思春期で近寄りがたくなっていた。年齢が近いお兄さんに見てもらえて本人もうれしいようです。私もホッとしてます。」などの声が寄せられます。

無料塾のように学校でも家でもない場所で、学校も年齢もバラバラ、スタッフも大学生から年配者まで幅広くいる、こういう場所がもっとあったらなと思います。

課題と今後の展望

無料塾は継続して開催することが何よりも大切だと感じています。子どもたちからは「毎日やってほしい」といううれしい要望もありますが、毎週1回(もしくは隔週)定例開催することにも苦労があります。選挙など大人の都合で中断することはできないので当番を決めてカギの開け閉めをするなど工夫してとりくんでいます。

またどの無料塾にも共通する課題が、スタッフの確保です。勉強したい、分かるようになりたいという思いでやってくる子どもたちにこたえるためには複数のスタッフが必要です。

松島無料塾では、地域の民青同盟員や地元居住支部、教員、医師、生徒の保護者がスタッフとなって学習の援助をすすめています。

どの無料塾でもこうしたスタッフが交代で勉強をみていますが、もっとスタッフがいればというのはよく出される悩みです。もっと多くの人に無料塾に関わってもらえれば、特に学生の力を借りたいと考えています。難しい問題にぶつかると、子どもと一緒に頭を抱えることもありますが、子どもたちの成長を感じることができるし、やりがいがあります。

無料塾のよさは、小規模、地域密着型だと思います。対象にしているのは中高生が中心ですから彼らが通える場所で開催します。すると、友だちを連れてきたり、兄弟姉妹を連れてきたりと参加者が参加者を連れてくるのです。

これはどの無料塾でも見られました。また、松島無料塾は保護者も積極的に関わっており保護者どうしのつながりも生まれているようです。南無料塾では党の生活相談員もスタッフとして関わっており、保護者の子育ての悩み相談や保護者どうしがつながる橋わたしができないか模索中です。

無料塾は勉強がもっと分かるようになりたいという子どもたちの要求実現であると同時に、子どもを塾には行かせる余裕がない保護者の願いにもこたえるものです。さらにスタッフとして関わることで、子どもたちに頼りにされ自分も成長することができ、特に学生にとっては自信になるのではないでしょうか。定例開催の困難さがあっても、それ以上にやりがいがあります。ぜひ皆さんの地域でも取り組んでください。

みなさんの声をお聞かせください