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2015年11月3日(火)

福岡民報2015年11月

「平和のための戦争展」の後援を拒否した福岡市安倍政権にシッポをふる高島市長の異常さ

日本共産党福岡市議団事務局長 中条正実

「福岡市は極右化しているのか?」「福岡市って、とんでもない自治体」「市長の露骨なアベ政権へのご機嫌取り」「福岡市よ お前もか(怒)」「これは酷い」「これはダブスタ(ダブルスタンダード)どころでは済まない。福岡市はネトウヨの味方か?」「福岡市が反戦運動を望ましくないと考えているということ」「こんな状況が戦前と同じ」(以上ツイッターの書き込みより引用)…。

福岡市の「平和のための戦争展」後援拒否問題について、9月議会の一般質問で中山いくみ市議団幹事長が追及したのですが、複数の報道機関が「百田氏…○ 戦争展…× 催し後援 福岡市の判断に差」(朝日新聞)、「福岡市 反戦展拒否したのに…百田氏講演会は後援」(西日本新聞)などインターネット配信し、それがどんどん拡散されました。有名なジャーナリストや研究者もツイッターで福岡市の対応を批判し、話題になったのです。

突然の後援拒否

平和のための戦争展

大盛況だった「平和のための戦争展ふくおか2015」
=8月22日、アクロス福岡

「平和のための戦争展」は、1995年から毎年開かれ、小中学生が夏休みの平和学習の参考に訪れるなど、市民が戦争と平和を考える貴重な機会となっています。主催は、福岡市原水協や新日本婦人の会県本部、福岡医療団など15団体で構成する「成功させる会」。戦後・被爆70年の今年は「語り継ごう戦争と平和、そして憲法」をテーマに、8月18~23日、アクロス福岡で開かれました。

まさに市民権を得てきた「平和のための戦争展」ですが、福岡市は後援を拒否したのです。昨年まで3年連続で後援してきたわけですから、「今年は何があったのか」と誰もが疑問に感じたでしょう。そして「これは戦争展だけの問題ではない」という不安が広がったのです。

理由は「原発など特定の主義・主張が含まれるから」

調べてみると、担当した総務企画局総務課は、後援の審査基準を持っていないものの、「承諾チェックシート」に基づいて審査し、「事業について/特定の政治的立場(特定の主義・主張)に立脚してないか」の項目で「NO」が付き、「不承諾」としたことが分かりました。さらに、NOにした理由について、市は「(1)当該戦争展のうち西山進漫画展が予定されているが、提出された同氏の漫画には『原発はいらない』『消費税増税やめろ』『原発再稼働反対』など、特定の政治的立場に立脚した部分がある。(2)ジョイント企画として、反核医師の会福岡の総会記念の講演会が行われる予定であるが、講師の吉岡斉氏の基本的立場として、『脱原発をしなければいけない』という発言があることや、反核医師の会のHPには『安倍首相が用いている『積極的平和主義』というスローガンは戦争行使のためのもの…』という記載があるなど、特定の政治的立場に立脚していると考えられる」と説明しました。

このうち「反核医師の会HP」の件については、「戦争展」運営委員会に参加している福岡県の反核医師の会とは別のものだということが発覚し、報道で知った東京にある「反核医師の会」が市に抗議し、市は謝罪・撤回しました。したがって、西山氏の漫画の表現内容と吉岡氏(九大大学院教授)の主張が、市の後援としてふさわしくないということです。

さらに、「国政レベルで国民的議論が存するテーマである原子力発電や消費税等に関して一方の主義主張が含まれる催事を後援すると、その主義主張を市が支援していると誤解され、行政としての中立性を保てなくなる恐れがある」(9月議会の総務企画局長答弁)とも説明しています。

この問題について日本共産党市議団は8月4日に高島宗一郎市長に抗議と謝罪、後援を行うよう申し入れ、また、9月議会で中山いくみ幹事長が一般質問で追及しました。

まさに「検閲」 表現の自由を侵す

そもそも、「平和のための戦争展」は「かつての戦争がもたらした加害と被害の実態を一人でも多くの人々に提示し、ともに考え、行動の素材になることを期待して活動を続けてきた」(石村運営委員長のごあいさつ)もの。戦争の悲惨さを後世に引き継ぎ、憲法で誓った恒久平和と戦争放棄を確かなものにしようという、まさに政治的立場を超え、誰もが共感するものです。市の平和事業として開催してもよい内容だとさえ思います。私も今年の戦争展を見に行きましたが、西山氏の漫画展の他にも戦前の教科書の実物、福岡大空襲の写真パネルなどなかなか目にすることができない貴重な資料が満載でした。この「戦争展」こそ今求められています。

しかも、市が後援の是非を審査するのに、西山氏の漫画も吉岡教授の主張も、以前のものを問題にしたとは変です。吉岡教授の発言については、市の担当者がインターネットで検索して過去の講演録を発見したというのですから、まさに「検閲」をしたのです。こんなことは許されないことです。

市が理由にする「中立性」も取ってつけたものです。「国民的議論が存するテーマ」と言っても、原発再稼働も消費税増税も、安倍政権が国民を無視して強行しているから国民的議論になっているのです。「中立」どころか、市が安倍政権の立場に立っていると言われても仕方ありません。小森陽一東大教授は、「論点が分かれている」として市民の議論を封じることは、地方公務員法第36条2項で禁じられた「特定の内閣の支持」を市職員に強要することになるとともに、「思想・良心の自由」「表現の自由」など憲法違反につながると指摘しています(「季刊自治と分権2015年4月号」より)。

こんなことを認めれば、市の後援を受けようと思えば、行事の内容について「国民的議論が存するテーマ」がないようにしなければならないという制約を受けることになります。後援を受けることができたとしても、実際の内容を見て市が後援を取り消すことも考えられます。実際に神奈川県大和市で今年6月に起きました。これは相当の圧力です。党市議団にコメントを寄せていただいた弁護士が「表現の自由を直接規制はしないが、後援を拒否されることで表現が委縮するから間接的な規制にあたるので、運用はきわめて慎重でなければならない」と述べているとおりです。

あの百田尚樹氏の講演会は後援OK

9月議会での中山議員の質問では、民間団体が主催した作家・百田尚樹氏の文化講演会を市が後援したことと対比して、不平等な扱いを批判しました。
百田氏といえば侵略戦争や南京大虐殺を否定する靖国派で、NHK経営委員としても問題視されているのに、市が後援している」との情報提供を受けて調査していたのです。

この点について、今回中山議員が質問したところ、「(百田氏の講演会は)市民文化の振興に資するもの。申請書に基づいて判断したのであって、そういう内容(講演者の思想や基本的立場の調査)については判断していない」と答弁しました(経済観光文化局長)。「政治的な中立性」をいうなら、今回の「戦争展」についても思想調査などすべきではなかったのです。

「戦争展」での西山氏の漫画も、もちろん文化です。文化芸術振興基本法は「文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない」としています。つまり、行政が文化で表現している内容について介入したり、是非を判断したりしてはならないのです。

高島市長の関与は本当にないのか

今回の問題を調べていていまだに不可解なのは、担当課長が「自分が判断したこと」と言っていることです。政治問題になり得るこんな重大な行政判断の変更を課長レベルでできるはずがありません。それは自治体問題に詳しい方々がみなさん指摘しています。当然、高島市長が関与していると思い、議員が調査しましたが、「市長は新聞記事で知った」という回答が来たのですからびっくりです。市長は議会でも「適切に対応した」と平然と答弁しました。
高島市長と言えば、安倍政権べったり。昨年5月には安倍首相の訪英に同行し、ロンドンでの対日投資セミナーで一緒にプレゼンしました。アベノミクス大賛成で大企業応援の「国家戦略特区」を推進する一方、立憲主義を壊す暴走に何一つモノを言わない態度です。市長選出馬時から麻生太郎・現副総理の全面応援を受けています。

戦争法案批判の世論が高まっているさなか、安倍政権に批判的な勢力の運動を妨害したかった ― もしこんな考えで市長が後援拒否を市職員に指示あるいは示唆したなら大問題です。職員が高島市長の顔色をうかがってしたとしても重大です。

今回の後援拒否が他の自治体に与える影響も考えれば、誤りであったことを認めさせ、二度と同じようなことがないよう徹底した追及が必要です。そして、憲法で保障された思想・信条の自由、表現の自由を守り、生かす自治体づくりをすすめるためにがんばらなければならないと思います。

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