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2011年10月12日2014年6月14日

九電第三者委員会の「最終報告」が明らかにしたもの

“ウソと癒着” で押しつけられた原発はいらない

真島省三(日本共産党福岡県委員会・県民運動委員会副責任者、前県議)

5)いまこそ、原発からの撤退の政治的決断をし、プルサーマルや老朽原発は即時停止、廃炉に。他の原発も、推進機関から独立した規制機関の確立、それぞれの原発の危険性を明らかにしたうえでの最大限の対策、それへの住民合意なしに再稼動など論外。
① 日本社会と共存できない危険な原発を、国と自治体と電力会社が「ウソと癒着」で押しつけてきた実態が明るみに出たことで、すべての原発の政治的、道義的な正当性は失われている。

日本共産党は、現在の原発技術は未完成で危険なものだとして、その建設には当初からきっぱり反対し、その後も、政府や電力業界のふりまく「安全神話」のウソを追及し、原発のもつ重大な危険性と、それを管理・監督する政府の無責任さを具体的にただしてきました。

いま、福島原発事故をふまえ、政府が、原発からの撤退を政治的に決断すること、原発をゼロにする期限を切ったプログラムを策定することを求めています。

日本共産党は、福島原発事故を通じて国民が目の当たりにしている、原発の危険性を突きつめて明らかにしてきました。
第1は、一度起きたら、人間社会に、他に類のない「異質の危陶をもたらす現在の原発という技術は、社会的に許容できる技術ではないということです。

第2は、莫大な放射能を閉じ込めておく保証がない、その構造に本質的な不安定性をかかえている、放射性廃棄物の処理方法はまったく見通しがないこうした本質的に未完成で危険な技術を、使い続けるわけには行かないということです。

第3に、こうした危険性をもつ原発を、世界有数の地震国であり、世界一、二の津波国である日本に集中立地することは、危険きわまりないということです。

第4に、歴代政権が、電力業界の経営陣とともに、「日本の原発は安全」とする「安全神話」にしがみつき、繰り返しの警告を無視して重大事故への備えをとらなかったことが、どういう深刻な結果をもたらすかも明瞭になりました。
日本共産党は、政府が、これまでの原子力行政への重大な反省にたって、「安全神話」を一掃し、原発事故の危険を最小限のものとするために、考えうるかぎり、可能なかぎりのあらゆる措置をすみやかにとることを、強く求めてきました。
同時に、「安全神話の一掃」とは、過酷事故の起こる可能性を(確率の大小は別として)認めるということであり、「安全な原発などありえない」ことを認めることにほかなりません。

ひとたび重大事故が起きれば、とりかえしのつかない事態を引き起こす原発を、とりわけ地震・津波の危険の大きな国・日本において、日本国民が社会的に許容することはできません。

現在の原発と日本社会は共存できません。

そして、九州電力の「やらせ」メール問題を発端に相次いで明らかになったことは、その危険な原発を、国と自治体と電力会社が「ウソと癒着」で押しつけてきた実態です。
いまや、すべての原発を動かす政治的、道義的な正当性は失われています。

九電の第三者委員会の「最終報告書」は、「その(プルサーマル導入に関する佐賀県討論会における「仕込み質問」と本件賛成投稿要請=「やらせ」メールのこと…真島)のいずれについても、佐賀県側、県知事側と九州電力との不透明な関係が背景になっており、その関係は、討論会の参加者にも市民にも全く知らされていなかった」、「このような質問が、仕込まれたものであったことがわかっていれば、一般参加者、佐賀県民は一体どのように思ったであろうか。これらの「仕込み質問」は露骨であり、市民、県民を欺くものと評価されると思われる」と述べています。

政府、自治体、電力会社は、国民の信頼を失い、危険な原発を動かす資格を失っています。
いまこそ、政府が原発からの撤退を決断することを強く求めます。

② まず、プルサーマルや老朽原発は、すみやかに停止、廃炉を。

九州電力の玄海原発3号機では、危険性が高いプルトニウムが入った燃料を一般の原子炉で燃やすプルサーマル発電が日本で最初に押しつけられました。

また、老朽原発・玄海原発1号機では、原子炉圧力容器が想定を超えて“日本一”脆くなっているにもかかわらず、その原因も解明もしないまま、設計想定年数は30~40年の原発を60年も動かそうとしています。

九州電力が、その最後の拠りどころにしてきたのが、“国のお墨付き”、“地元の了解”を得ているということです。
しかし、住民の多数が納得していなかったのに、国も立地自治体も、電力会社といっしょに「やらせ」行為で住民をだましてきた実態がはっきりしたいま、国や立地自治体がこれまで行なってきたいっさいの評価や判断は信頼をなくし、危険なプルサーマルや老朽原発を動かす正当な根拠も失われています。

停止中の3号機・プルサーマルは、再稼動せず、すみやかに廃炉にすべきです。
老朽原発1号機は、すみやかに、停止、廃炉にすべきです。

③ 福島事故の原因究明も尽くさず、国・自治体と電力会社の「ウソと癒着」の全容解明と反省もなく、規制の体制もないまま、三者の内輪の「テスト」で再稼働するなど、まさに“論外”。

九州電力では、10月4日、玄海原発4号機が、復水器の異常で自動停止する事態となり、同社の原発6基のなかで、運転しているのは日本一危険な1号機のみとなりました。
野田首相は、「世界一安全な原発をめざす」というかけ声で、従来どおり原発をエネルギー政策の中核とする「ベストミックス論」に固執し、原発の輸出も推進する、停止中の原発については、「ストレステスト」をおこない、来年の夏までに再稼動する意向を明らかにしています。

12月初めにはその1号機も定期検査に入り、九電の全原発が停止する見通しです。

そうしたなか、九電は、2、3号機のストレステストを年内に終えて国に報告し、年明けの再稼動をめざすとしています。
しかし、この「テスト」をやるのは、あの大事故を起こし、収束もできない、資格も能力もないことが証明された電力会社と、原子力安全・保安院と、原子力安全委員会であり、最終的な事前了解をするのは、電力会社と癒着した立地自治体の首長です。

そして、この三者が、癒着して「やらせ」行為をくりかえしてきたのです。
福島原発事故の原因究明も尽くさず、行政機関と電力会社の「ウソと癒着」の全容解明と反省もなく、そして、規制の体制も確立しないまま、この三者の内輪の「テスト」だけで再稼働するなど、まさに“論外”です。
福島の事故は、全国の原発の地元住民と自治体に大きな衝撃を与えています。
どの程度の地震、津波を「想定」しているのか、それぞれの原発のもつ潜在的危険性とその対策などを、住民にきちんとした説明をするのは、国と電力会社の最低限かつ緊急の責務です。

また、「安全神話」によって、福島で現実となった20キロメートル圏、30キロメートル圏、さらにその外のホットスポットとなる地域も含めた、避難や屋内退避などを想定した防災計画や訓練がいっさいおこなわれていません。
これらが現実になったとき、住民はどうするのか、避難は可能なのかなども検討し、明らかにされなければなりません。
定期点検や地震・津波で停止中の原発について、地方自治体の首長からは“福島原発事故の原因と教訓をふまえた基準での安全審査・対策強化なしに、再稼働は認められない”という立場が相次いで表明されています。
こうした問題を含めて、地元住民、周辺自治体住民の合意が得られないのであれば、その原発は、停止・廃炉にすべきです。

6)福岡県及び糸島市、福岡市と立地自治体なみの「原子力安全協定」を結ぶこと。事故情報は、遅滞なく細大漏らさず福岡県と県内のすべての市町村に報告せよ。
① 原子力安全協定とは

日本の原子力に関する法令は、原子力事業者が施設を安全に設計、建設、運転、維持管理するために行うことを定めたもので、国の行政庁だけが一元的に監督をすることになっています。

地域住民の安全に責任を持つ地方自治体には、事業所に対し安全面で要求をする法的な権限は与えられていません。
一方、「災害対策基本法」では、原子力災害に対して地方自治体が対応することになっています。
このような状況において、地元の自治体としても住民の立場で原子力施設の安全を確認する必要があるため、県が中心となり、原子力施設のある所在市町村、ならびに隣接市町村を含め原子力事業所と結んだ安全に関する協定を「原子力安全協定」といいます。

主な内容は次のようなものです。
▽周辺環境における放射線の共同監視(通常は事業者、地方自治体、国の3者がそれぞれ測定)
▽異常時等における情報の迅速な連絡・通報義務
▽地方自治体による立ち入り調査・安全措置要求の受け入れ
▽施設の新設または増設、変更に対する地元の事前了解
停止中の原発の再稼動に最終的に「地元の了解」を必要としているのも、この規定によるものですが、全国で結ばれている「安全協定」の一部には、この「事前了解」規定がないものもあります。
原子力災害対策特別措置法は、放射線漏れを伴うような異常事態のさい、「直ちに」国や立地自治体などに通報するよう電力会社に義務付けており・国の「防災基本計画」は・「15分以内をめど」に通報をと規定しています。
しかし、立地県でない福岡県や県内市町村は、法的には、通報の対象外です。
ただし、福岡県や県内市町村が、「安全協定」九電と結んでいれば、原発事故発生時に九電から直接連絡がきます。
現在、九電は、玄海原発で異常事態が起きたとき、まず、国と佐賀県と玄海町に連絡。
その後、プレス発表をおこない、福岡県にはプレス発表の後に、その内容を伝えます。
県内市町村には、福岡県を通じてようやく連絡が来るのですから、自治体首長が「テレビで知った」なんてことになりかねません。

② 立地県・立地市町村を超えて広がる「安全協定」締結を望む動き

「安全協定」は、立地自治体としか結べないという決まりはありません。
福島第1原発事故では、放射能汚染が、国の指針で8~10キロとされる原子力防災対策の重点地域(EPZ)をはるかに超え、半径20キロ圏内が警戒区域、ほぼ30キロ圏内が緊急時避難準備区域、50キロ圏の飯館村は計画的避難区域に指定されました。
放射性物質は、数百キロにわたって拡散し、ホットスポットができるなど、深刻な汚染が広がっています。
原発事故の実態をまのあたりにして、全国でも、九州でも、立地県、立地市町村以外の周辺自治体が、電力会社に「安全協定」の締結をもとめる動きが広がっています。
九州電力との「安全協定」の締結をのぞんでいる自治体は、報道によれば、立地県では、佐賀県の唐津市、鹿児島県のいちき串木野市と日置市、立地県以外では、福岡県と同県糸島市、長崎県と同県松浦市、壱岐市、佐世保市、平戸市の2県8市に広がっています。

このうち、鹿児島県では、日置市がすでに九電に要請しています。
また、立地県以外では、長崎県と松浦市が要請し、九電と事務レベルの協議に入っていますが、同県と同市は、「10キロ圏内」という現行のEPZの範囲内にあり、本来、九電に断る理由はないはずです。
全国でも、立地県、立地自治体以外も電力会社に「安全協定」締結を申し入れる動きが広がっています。
とくに、京都府はすでに、9月20日、原子力安全協定締結について、隣接する福井県高浜町に高浜原発を立地している関西電力と協議を始め、「府民の安心安全を念頭に協定締結に向けた協議を進めること」、「年度内をめどに一定の方向を打ち出すこと」などを確認しています。

京都府は、東日本大震災後、国の見直しを待たずに、府独自にEPZを暫定的に原発から半径20キロ圏内へ拡大し、府地域防災計画を見直し、府内全市町村との連名で関電に協定締結を申し入れていました。
立地自治体と同様に、「停止した原発の再稼働の際に府と事前協議すること」や「異常時には直ちに連絡すること」などが主な内容です。

遅ればせながら、10月7日、福岡県と福岡市、同県糸島市が、九州電力に対し、玄海原発で事故や故障が発生した際の迅速な情報提供を定めた「原子力安全協定」を締結するよう申し入れました。

福岡県と九電は1989年、異常発生時には「速やかに連絡する」などと申し合わせていましたが、実際は報道発表後に連絡するため、10月4日に、玄海原発4号機が自動停止した際は、福岡県に連絡が入ったのは停止から約2時間半後でした。
申し入れ書では、▽原子炉の故障、核燃料物質の漏えいなど緊急時は原発立地県並みの迅速な情報提供をする、▽通常時も発電所の保守運営状況について定期的、または県の求めに応じて情報提供することを協定で定めるよう求めています。

③ 立地県・立地市町村としか「安全協定」を結ばないという九電の姿勢は道理も、説得力もない

九州電力は、立地県と立地市町村とだけしか「安全協定」を結ばないというかたくなな姿勢をとっています。
その理由は、「現在の原発立地自治体との協定を運用すれば、それ以外の自治体の安全も確保できる」という「安全神話」に立った開き直りと、「佐賀県と玄海町の意向を聞かなければわが社だけでは決められない」という逃げ口上です。
しかし、福島原発事故をみて、立地自治体以外の住民も、九電の原発でひとたび重大事故が起きた場合・県境を大きく超えて九州全体の住民が、放射能汚染の被害、その恐怖に長期にわたってさらされることを実感しました。

九電が、立地県・立地市町村以外と「安全協定」を締結したがらない“本音”は何でしょうか。

「原発の再稼動や新増設の事前了解の対象は、“原発マネー”で買収している知事や町長だけにしたい」ということではないでしょうか。

そのことを、端的にしめしたのが、九電と佐賀県知事がグルになった玄海原発2、3号機再稼動をめぐる住民説明会での「やらせ」メール問題でした。

こうした「やらせ」が、プルサーマルの導入のときにも、横行してきたこともわかりました。
九電と立地自治体の特別な癒着関係のもとで、「安全協定」にもとついておこなわれてきた“地元の了解”劇そのものが、とんだ“茶番”だったのです。
九電と癒着した立地県、立地自治体だけに、わが県民、住民の命と安全、地域の将来をゆだねるわけにはいかないという思いが、原発への賛否を超えて広がっています。

この点で、九電の第三者委員会の「最終報告書」が再発防止、信頼回復、九電の反省の証として地元住民だけではなく、以下のように「利用者・消費者との直接対話」を提言していることは重要です。

「問題の本質は『企業活動の不透明性』にあり、責任は経営トップにある。そこで、まず重要なことは、公益事業者として、このような『不透明性』を排除し、透明な企業活動を徹底する経営体制を確立することである。そこで不可欠となるのが、九州電力の経営トップの考え方が、これまでとは根本的に異なるものになったことを示す措置である。そこで、再発防止、信頼回復のために不可欠な措置として、経営トップを中心とする会社幹部が、電気利用者等の消費者、ステークホルダーと直接対話を行う場を設け、今回の賛成投稿要請及び事後対応を真摯に反省した上で今後透明な企業活動を徹底する方針を明確に表明する『企業活動透明化宣言』を行うことを提案する」

「これまで九州電力の原発問題への対応は、原発立地地域での『理解推進活動』が中心で、幅広い消費者に対して、真に不安や要望に十分応えるものになっていなかった。そのような消費者とのコミュニケーションの希薄さが、今回のような事態を招いたとも言えるのであり、そのような姿勢は、原発問題に限らないと思われる。そこで、今後は、消費者や住民の声を率直に聞き、その要請に応えていけるよう、対話や説明の場を拡大し実質化していくことが必要だと考えられる」

福岡県は、九電の電力の4割の消費地であり、玄海原発で重大事故が起きれば大きな被害を受ける可能性があります。
「経営トップを中心とする会社幹部が、利用者・消費者との直接対話を行う場を設ける」、「消費者や住民の声を率直に聞き、その要請に応えていけるよう、対話や説明の場を拡大し実質化していく」ためにも、福岡県及び県内市町村との「安全協定」を結ぶのは当然なことです。

そして、立地県、立地市町村以外の自治体との「安全協定」の締結は、九電と立地自治体の癒着関係の枠内にある現在の原発事業に対して、より多くの自治体の住民の監視と参加に道を開くことになります。

④ 原発への賛否を超えて「安全協定」締結をもとめる運動を

福島原発事故をふまえて、住民の被害を最小限に抑える「安全協定」を締結するために、以下のことが大事だと考えます。

第1に、「協定」を結ぶ自治体の範囲です。

九電は、福島原発事故で避難地域となっている50キロ圏の自治体(福岡県、糸島市、福岡市)とは、すみやかに締結をすべきです。

また、締結を希望する市町村とも協議に応じるべきです。

第2に、「協定」の内容です。

福岡県と糸島市、福岡市が九電に申し入れた「安全協定」の内容は、異常時等における情報の迅速な連絡・通報義務などで、「新増設、変更、再稼動に対する事前了解」は入っていません。

少なくとも、50キロ圏内の自治体と結ぶ「協定」の内容には、京都府がもとめているように、「立地自治体」なみに「新増設、変更、再稼動に対する事前了解」を必ずいれるべきです。

第3に、県が先頭に立ち、市町村といっしょに九電に申し入れ、協議をおこなうことです。

京都府や長崎県の動きをみてもわかるように、都道府県が主導して、市町村といっしょに電力会社に要請したところで、具体的な協議がはじまっています。

そのためにも、県が積極的、能動的に動くよう各市町村から意見書などを集中することです。

第4に、各市町村長に「安全協定」締結のために動くよう要請するとともに、首長が消極的でも、議会で多数派をつくって動かすことです。

多くの議会では、原発への賛否、再稼動の是非についての意見の違いはあっても、住民の命にかかわる「安全協定」締結という要求は、党派を超えて一致できる課題となっています。

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