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2019年9月10日

福岡民報2019年8月号より

五ケ山ダム治水対策について(予算特別委員会論戦から)

日本共産党福岡県議会議員 高瀬菜穂子

五ケ山ダム、「穴あき」で洪水調節は大丈夫?

県内最大の五ヶ山ダムが現在、試験湛水中です。このダムは1978年(昭和53年) の大渇水の後に計画され、利水容量・治水容量を含め総容量約4000万㎥(トン)の巨大多目的ダムとして那珂川に作られました。上流に背振ダム、下流に南畑ダムがあります。

日本共産党は、五ヶ山ダム建設が進まない中、既に北部九州緊急連絡管(日量5万トン)や海水淡水化施設(日量5万トン)など、新たな水開発がなされたことから、これ以上のダム建設は必要ないと建設に反対してきました。

五ケ山ダムの各種容量について

図1:五ケ山ダムの各種容量について

しかし、建設は急ピッチで進められ昨年竣工し、現在試験湛水中です。渇水容量1660万㎥(トン)、利水容量1510万㎥(トン)、治水容量800万㎥(トン)【図1参照】ですから、基本的に水を貯めておくダムということができます。

ダムを視察して驚いたのは、洪水調節機能が基本的になく、満水位とサーチャージ水位の所に「洪水吐(穴)」があるだけの「穴あきダム」だということです。洪水の際、排水量の調節は基本的にできません。

那珂川は、那珂川市から福岡都市圏へと流れる県管理河川です。ひとたび水害が起きれば甚大な被害となります。五ケ山ダム完成で、最近の豪雨災害に耐えられるのでしょうか。

寺内ダムの教訓

一昨年の九州北部豪雨災害の際に、朝倉市の寺内ダムには、想定を超える毎秒888㎥(トン)流入し、流木や土砂も押し寄せました。ダムは満水状態になりましたが、ぎりぎりで佐田川への放流はしなくてすみました。それは渇水でダムの水量が減っており、治水容量が通常より大きかったからとされています。もし、通常の満水位の水があれば、下流には大きな被害が及んだと考えられます。

昨年の西日本豪雨災害では、愛媛県肘(ひじ)川の野村ダム、鹿野川ダムの放流で、一気に浸水域が広がり、大きな被害となりました。ダムは、容量があれば、洪水を防ぐ大きな効果を発揮しますが限界を超えると一気に水害を引き起こします。

五ケ山ダム完成でも100年に1回の降雨で那珂川はあふれる

五ケ山ダム完成で那珂川は安全になったでしょうか。以下、予算特別委員会での問答を紹介します。

高瀬:五ヶ山ダムの洪水調節容量(治水容量)は800万㎥ですけれども、想定する最大流入量は毎秒何㎥で、どのように洪水調節をするのですか。ご説明をお願いします。想定最大流入量は、どのように決定されたのかもあわせてご説明ください。

田尻河川管理課長:想定している最大流入量ですが、100年に1回の確率で起こり得る降雨を基に毎秒440㎥となっております。流入してくる毎秒440㎥のうち、洪水調節容量である800万㎥までは、毎秒370㎥を貯留し、常時満水位からサーチャージ水位の間にある常用洪水吐という排水口を通して下流に毎秒70㎥を流下させることで洪水の調節を行っております。

高瀬:最大の想定が毎秒440㎥ということですけれども、一昨年の寺内ダムは888㎥なんですね。この想定(440㎥)を超えることは考えられると思いますけれども、いかがですか。

田尻河川管理課長:常用洪水吐から最大で84㎥、サーチャージ水位を超える高さに設置している、非常用洪水吐という排水口から最大で626㎥排水できるため、合わせて最大710㎥の排水が可能となっております。

那珂川の計画流量配分図

図2:那珂川の計画流量配分図

県は100年に1回の洪水が毎秒440㎥(トン)と想定し、それを超える場合も毎秒710㎥(トン)までは排水可能になっていると説明しました。では、那珂川はどうでしょうか。「計画流量配分図」【図2参照】があります。100年に1回の洪水に対し、五ケ山ダムの完成で基準点の南大橋の基本高水流量を毎秒1350㎥から900㎥まで低減、カットできるというものです。そうすれば那珂川は、どこも氾濫せずに下流まで流れるのでしょうか。この質問に対し、富田信雄河川整備課長は、「現在、那珂川の計画流量配分図にあります計画高水流量を目標に河川改修を進めているところでございます」と答えました。つまり、那珂川の河川改修は整備途上であり、100年に1回の洪水で毎秒440㎥が五ヶ山ダムに流入した場合、下流の整備ができていないから「あふれる」ということです。想定最大の710㎥が流れ込んだ場合には、今のままでは那珂川は大きく氾濫するということです。

昨年の九州北部豪雨の際の寺内ダムには毎秒888㎥(トン)、昨年の西日本豪雨の際の愛媛県野村ダムには毎秒1940㎥(トン)も流入しています。五ケ山ダムの最大710㎥(トン)の想定が十分とは到底いえません。

利水から治水に転換を

被災地朝倉で開かれた「防災フォーラム」で、九州大学名誉教授の小松利光氏が、ダムの効用と限界を理解することが重要だと強調されました。その上で、最近の豪雨災害に対しては、これまでの治水容量では対応できない場合がある。豪雨が予測できる場合にお金をかけない有効な方法として、ダムの利水容量と治水容量を見直し、ポケットを増やしてダムの治水調節機能を向上させるということを紹介されました。

例えば、川内川の鶴田ダムは、五ケ山ダムと同じく、穴あきダムですが、その穴(排水口)の位置を上の方から真ん中に作り直して治水容量を増やしたことが紹介されています。また既設ダムのかさ上げをして治水容量を増やした所もあり、さらにダムの上流から放流トンネルを作って下流に流せるようにした所もあるとのことです。

ダムは容量がある間は、下流の安全を守る確かな力ですが、放流を始めその量が河川の流下能力を超えればあふれて水害となります。ダムが満水になって、異常洪水時防災操作、いわゆる緊急放流を始めれば必ず水害を起こすと小松氏は強調しています。

そこで、五ケ山ダムについても利水容量を減らして、治水容量を増やすという用途変更を行うべきだと提案を行いました。これに対する田尻河川管理課長の答弁は、「五ケ山ダムは、利水者も負担金を出して建設されておりますことから、利水容量を減らし、治水容量を拡大するためには、利水者の同意を得ることが必要不可欠であります。しかしながら一方で、ダムで事前に放流するための降雨の予測というのは、ダム流域という非常に狭い範囲が対象となりますため、依然としてその精度が低いという問題がございます。今年の渇水状況、それから過去の渇水状況を踏まえますと、水道用水や灌漑用水といった利水容量を回復することが確実に見込めない状況では、利水者の同意を得ることは大変厳しいと考えております。今後も那珂川の治水安全の向上のために現在実施中の河川改修を進めてまいります」というものでした。

利水者の合意があれば用途変更は可能

県の答弁は、「利水者の同意が得られないから用途変更は困難」とのことですが逆に言えば、利水者の同意によって可能になるということです。また、利水容量・渇水容量の両方に含まれる「不特定用水」(既得用水の安定化や河川環境の保全のための容量)は、国と県で財政負担をしています。用途変更を行っても、財政負担は変わりません。既得権を持つ農業者などと合意ができれば可能ということになります。

那珂川に限らず、県管理河川の整備は極めて遅れています。52水系ある中で、河川整備計画があるのは14 水系のみです。予算がつかないから計画が作れない、計画があっても整備が進まないのが実態です。

五ケ山ダムの不特定容量は合わせて1520万㎥もあり、治水容量の2倍近くです。その一部を治水容量に転換(または弾力的運用)し洪水調節容量(ポケット)を増やすことで那珂川への負担を軽くし、豪雨の際に命を守ることにつながると考えます。

総合的な洪水対策へ

元国交省近畿地方整備局河川部長の宮本博司氏が『前衛』(2019年3月号)に「『想定外』の洪水から人命を守ることを最優先にする治水に転換を」と題して論文を書かれています。

その中で、「想定したことが間違っているということを想定しないといけない」と強調した上で、「ダムの調節機能で河道に閉じ込めるという治水は明治以降のことで、川の縁まで家をぎっしり建てたり、災害の発生しそうな所を開発して住宅地にしてきたのは戦後50〜60年のことだ」「治水の歴史をひもとけば、堤防をわざと低くしたり、堤防をわざと不連続にする霞堤を作っておいて、洪水で水量が増えた時、水を川の外に安全にあふれさせて、下流に一気に水が流れないようにしていた」と述べています。「川の中だけの対策では限界があって危険性が大きいことから森林や農地の保全、雨水を貯めることや、氾濫の危険性の周知方法や避難体制の整備、さらには土地利用、町づくりが必要になってくる。堤防間際に家を建てることの規制、規制された地域での振興策、固定資産税を安くするなどの税制面での整備、総合的な政策で洪水対策をすることが必要となる」と指摘をしており、この視点からの対策が求められます。

 
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