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2019年9月10日

福岡民報2019年8月号より

福岡市の介護認定の大幅な遅れについて

日本共産党福岡市議会議員 綿貫英彦

福岡医療団関連の介護事業所での懇談会福岡市議会議員選挙では、「介護保険料が高すぎる」「ヘルパーさんなど介護労働者の処遇がわるく介護労働者がいない」「特別養護老人ホームがたりない」など安倍政権やそれに追随する髙島市政のもとで、必要な介護が受けられないという問題も大きな争点となりました。選挙後に早速、東区内のケアマネージャーさんなどから介護認定事務に関わる相談を受けました。

介護認定は、申請者である高齢者が安心して生活していくために、どのようなサービスがどれだけ必要なのかを決定します。この介護認定によって利用者の生活の質が決まってくるため非常に大事であり、だからこそ認定事務はこの間、各区役所の介護認定係が責任を持って行ってきました。

ところが、髙島市長は認定事務の迅速化を目的に、今年1月から、全市で1本の「福岡市介護認定事務センター」に集約しました。さらに4月1日から、そのセンターの業務を民間に委託したのです。

ケアマネージャーの方などからの相談は、このことにより「介護認定事務が大幅に遅れて、介護現場が大混乱に陥っている」とのことでした。

日本共産党市議団では、早速、団会議で論議し、ケアマネージャー、ヘルパーなど介護関係者との懇談会をもち、調査することにしました。

博多区の社団法人福岡医療団関連の介護事業所の懇談会では、介護現場に大きな混乱が発生し、利用者や介護労働者に大きな負担がもたらされている事例が次々に語られました。

事例①:67歳の男性
糖尿病の悪化に伴う歩行障害で介護サービスを受けていました。更新日が今年4月末なので、3月1日に更新申請したけれども認定調査日の決定がなんと1ヶ月以上先の4月14日。ケアマネージャーは4月中に認定結果がおりないことを想定し、暫定プランでのサービスを提案したそうです。しかしながら、この男性は要介護1であり、介護認定が下がって、非該当になれば、全額自己負担になることを懸念し、結局、苦渋の決断で認定結果が出るまでサービスを自ら停止されました。
事例②:終末期の患者さん
人生の最後の時期に痛みに苦しむだけの寝たきりの生活。そんなことがないように尊厳を保つクオリティ・オブ・ライフ、生活の質を支え、快適に過ごすために、痛い所をさすってやる。行きたい所があれば一緒に出かけるなど、看取りのためのケアが必要です。ところが、認定が遅れに遅れ、そのサービスが受けられない。

ここに挙げた事例以外にも、「介護認定の申請をしたけれども、認定をするための調査をいつするのか、全く連絡がない」「認定調査表や主治医の意見書など必要な書類が揃っているが、認定審査会の日程がきまらない」「認定調査表を送付したが、認定事務本部に問い合わせると、書類がどこにあるのかわからない」などの実態が次から次に出されました。

懇談の結果、明らかになったのは、介護認定が少し遅れているという事態ではなく、利用者は必要なサービスを受けられない。新たな利用料負担に悩まされる。そのために生活の質が大きく低下するという事態であり、介護関係者も、求められているサービスを提供することができず、くやしい思いをしているということでした。

私は6月議会の一般質問で、この問題を取り上げました。この質問の中で、介護保険事務を集約化し民間委託してから、本来、介護保険法では申請から認定通知まで30日以内と決められているにもかかわらず平均で45日もかかっていることや、長いものでは70日以上もかかっていることが明らかになりました。

私は介護現場から聞き取りをした、認定結果がおりないので暫定プランを組もうとしても、もし実際の認定が暫定プランでの認定よりも軽くなった場合、オーバーした分の利用料が自己負担になるため、サービスをやめてしまうケースが後を絶たず、認定の遅れが利用者の尊厳を侵していると厳しく批判しました。

認定の遅れ ― 市の責任明らかに

保健福祉局長は「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と謝罪し、人員を配置して解消に努めていると言い訳しました。しかしながら、いまだに解消されていない現場からの聞き取り結果を示すと、局長は「委託前の所要日数には達していない」と実態を認めざるを得なくなりました。

さらに、なぜこのような事態が発生しているのかについて追求しました。そもそも介護認定事務を民間委託した理由について、市は「介護認定事務の迅速化」だとしていますが、その実態は必要な人員をそろえず安上がり目的で民間に委託したことが原因だということも明らかになりました。

介護認定事務を委託したのは、大手の人材派遣会社です。市は、委託するにあたって、委託先に対して、「委託業務を適切かつ効率的に遂行できるスキル、経験、資格を有した本部業務従事者を必要数確保すること」を委託の条件にし
ていました。ところが、この人材派遣会社は、介護認定事務の開始にあたって職員募集をしていますが、「事務経験があれば誰もができる簡単な仕事」だとし、ほとんどの職員が専門的な知識もないパートなどの職員を募集していたのです。市もその事を承知した上で、民間委託をスタートさせていたのです。

市は言い訳をしていますが、私が求めた資料には、「事務センター職員の習熟度の不足」としており、業務を効率的に遂行できるスキルも経験も資格も有していない業者に、認定事務を丸投げしており、今回の認定事務の大幅な遅れは市の責任であることが明らかになりました。

私は、この質問の最後に、髙島市長に対して、今回の要介護認定事務の集約化、委託化は介護認定事務の迅速化を看板にしているが、実際には、経費を削減し、民間企業に儲け口を与えるためであることは明らかです。介護認定は、高齢者が安心して老後を暮らしてくために、どのような介護がどれくらい必要かを決める、極めて重要なことであり、行政が責任を持って行うべきではないかと、質問しました。しかし、髙島市長は、職員が作成した答弁書を棒読みするだけにとどまりました。

質問後、ケアマネージャーの方などから議会で取り上げたことで、「介護現場の実態を取り上げてくれて、ありがたい」「終末期の方など、認定を急ぐ方々については、各区役所でも対応するなどの改善がされた」など、日本共産党市議団が議会で取り上げてくれたことに対して、感謝の言葉をいただきました。

これから福岡市でも高齢化がますます進展してきます。介護保険制度を充実させることは待ったなしの課題です。これからも介護利用者や現場の介護関係者などとの懇談をしながら、誰もが安心して老後が過ごしていける福岡市を築いていくためにがんばっていきたいと思います。

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