2024年10月10日
福岡県民を戦争に巻き込む戦争のための日米共同演習「キーン・ソード25」に反対する申し入れ
日本共産党福岡県委員会は2024年10月9日、福岡県と防衛省に対し、「福岡県民を戦争に巻き込む戦争のための日米共同演習『キーン・ソード25』に反対する申し入れ」を行いました。申し入れ文は以下の通りです。
福岡県知事 服部 誠太郎 様
福岡県民を戦争に巻き込む戦争のための日米共同演習「キーン・ソード25」に反対する申し入れ
2024年10月9日 日本共産党福岡県委員会
委員長 内田 裕
10月23日(水)~11月1日(金)予定の日米共同統合実働演習「キーン・ソード25」は、自衛隊は約3万3000人、艦艇約30隻、航空機約250機、米軍は約1万2000人、在日米軍のみならずインド太平洋全域の米軍も参加し、艦艇約10隻、航空機約120機が散開するという過去最大規模で実施されます。しかも、かつてない32カ所もの民間空港・港湾が使われます。
防衛省の「地元説明資料」等をみると、県内では次のような訓練が計画されています。
■陸上作戦
〇 築城基地、春日基地、太刀洗通信所、福岡駐屯地、小倉駐屯地、背振山分屯基地
陸上自衛隊の部隊が展開し、基地等警備訓練および通信訓練を実施。夜間訓練、空砲使用含む。
■航空作戦
〇 築城基地
築城基地所属のF-2×8機、米空軍のF-16×10機が展開し、統合防空ミサイル防衛および統合対艦攻撃訓練に参加。期間は10月21日(月)~11月1日(金)。夜間訓練を実施予定。米軍の参加人員は180人程度。
〇 北九州空港、芦屋基地
10月30日の1日のみ、航空自衛隊の基地が使用できない事態を想定し、航空自衛隊の救難部隊のUH-60Jが1機、北九州空港に展開する訓練をする。救難ヘリは、芦屋基地か小松基地所属のUH-60Jを使用。救難のために北九州空港を一時拠点にして、燃料の補給や点検・整備をする。南西諸島から負傷者を運ぶ訓練はしない。また、10月28日の1日のみ、岩国基地所属の対潜哨戒機P3Cの使用を予定。
〇 春日基地、築城基地
日米の管制要員が、春日基地の防空指令所における防空作戦に参加し、演練。参加は、自衛隊約100人、米軍約30人。
〇 背振山分屯基地
「総合防空ミサイル防衛」に、北部航空方面隊第2航空団の高射部隊(千歳基地)から、人員約50人、車両約20台が参加して機動展開訓練を実施。「3~4日間」(調整中)で、実弾の使用はない。
■海上作戦
〇 北九州空港
10月30日(水)、海上自衛隊の航空機が一時的な拠点または中継地点として北九州空港に着陸し、燃料給油等の展開訓練を実施(予備日:31日(木))。参加機は、EP-3、UP-3D、OP-3C」。
■統合後方補給・衛生訓練
〇自衛隊福岡病院、福岡空港
自衛隊那覇病院にて治療を行った負傷者をC-2輸送機で福岡空港に後送し、自衛隊福岡病院に受け入れる訓練。患者として米軍が参加する可能性がある。
以下のことを要望します。
1、憲法の立場で、政府に対して、日米共同統合演習「キーン・ソード25」の中止および「軍事対軍事」の悪循環を断ち切り、平和を築く外交努力をつよめるよう求めること。
今回の日米共同演習の目的と内容は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とした日本国憲法第9条に反し、政府の「専守防衛」の立場ともまったく相容れないものです。そして、過去最大規模の日米共同統合演習実施は、北東アジアの緊張をますます高め、安全保障環境をいっそう悪化させるだけです。県民の命と平和をまもるために、決して看過できません。
今回の日米共同統合演習は17回目ですが、「対中国軍事包囲網」を目的として回を重ねるごとに強化されてきました。
この間自公政権は、集団的自衛権行使容認と安保法制強行、相手国の領土を攻撃する長射程ミサイル配備、GDP比2%への大軍拡、武器輸出解禁、日米の指揮・統制一体化など、憲法9条のもとでは「できない」としてきたことを、タガがはずれたように強行してきました。
なかでも、自衛隊が敵基地攻撃能力を保有する最大の目的は、米軍主導の「先制攻撃」も選択肢とする「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)に、自衛隊全軍が米軍の指揮下で参加することにあります。政府はいま、敵基地攻撃兵器として長射程ミサイルの購入・開発・生産を進めながら、沖縄・南西諸島を中心に九州・福岡にいたる「第一列島線」をミサイル基地化していっています。
県内では、築城基地の「米軍基地化」、核攻撃にも耐えられる「継戦能力」を持つための自衛隊基地の「強靭化」(築城・春日)、長射程ミサイル配備のための弾薬庫の増設(築城・春日)、北九州空港と博多港の「特定利用港湾・空港」への選定、北九州空港へのシーガーディアンの配備、基地周辺の住民監視のための重要土地調査規制法の施行など、「戦争する基地づくり」「戦争するまちづくり」が一気にすすめられています。
米軍が開始した戦争に自衛隊が集団的自衛権を発動して参戦し、米軍の指揮下で長射程ミサイルを相手の国に撃ちこむ。そうすれば、当然、報復攻撃を受け、ミサイルの撃ちあいになります。その結果が国土の焦土化であることは、火を見るよりも明らかです。今回の日米共同統合演習は、福岡県を含む九州・沖縄全体を戦場にすることを想定した訓練であり、「二度と捨て石にさせない」という沖縄の人々の叫びは他人事ではありません。
本県は、戦前、軍都とよばれた小倉、久留米をはじめアジアへの侵略拠点だったこともあり、多くの県民が国内外で犠牲となりました。戦後は、日本国憲法のもとで、アジアの国々や人々とともに成長、発展しています。ところがいま、全国で4番目に多い福岡県内の自衛隊の基地・駐屯地が、米軍指揮下で対中国戦争をたたかう「最前線基地化」「軍事要塞化」されようとしています。
政府は、「日米同盟の抑止力の強化こそ日本を守る力」と繰り返し、際限のない大軍拡をすすめています。今回の演習も「抑止力」を示すためだとしていますが、「恐怖によって相手を思いとどまらせる」ことが「抑止力」です。軍事ブロック強化による「仮想敵」への軍事的包囲網づくりは、「軍事対軍事」の悪循環を起こし、戦争の危険をますます高める最も危険な道です。「抑止力が平和を守る」ことが幻想であることは、先の大戦をはじめとした歴史の教訓です。だからこそ、「われらとわれらの子孫に、…政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないように決意」(憲法前文)し、憲法第9条は「武力による威嚇」を禁じています。
沖縄県の玉城デニー知事は、9月27日の定例会見で、日米の大規模演習が県内で相次ぎ強行されている状況について、「(軍事一辺倒ではなく)信頼醸成などの平和的な外交の努力が車の両輪として強く求められる」「地域の緊張を逆に高めることがあってはならない」と強調し、「関係国等に平和的な外交対話の努力を引き続き行っていただきたいと併せて申し入れている」と語りました。
「国連憲章と国際法を守る」という一点での国際社会の結束をすすめる外交努力の積み重ねこそ、世界と地域の平和を築く唯一の道です。ASEAN(東南アジア諸国連合)は、紛争の平和的解決を定めた条約を土台に、徹底した対話を積み重ね、かつて戦乱に覆われていたこの地域を平和の共同体に変えました。ASEANはさらに平和の流れを域外に広げ、ASEAN10カ国に加え、日本、中国、アメリカを含む18カ国で構成される東アジアサミットを活用・発展させ、東アジアの全体をASEANのような戦争の心配のない平和な地域にしようというAOIP(ASEANインド太平洋構想)を明らかにしています。ASEANと協力してAOIPを進める外交努力こそ、憲法9条をもつ日本がなすべきことです。
2、政府に対して、民間空港である北九州空港をつかった軍事訓練および超党派で米軍板付基地の全面返還を求めている福岡空港をつかった軍事訓練を中止するよう求めること。また、公道をつかった移動についても、当該自治体への詳細な情報提供とともに、住民に対する万全の安全対策を講じるよう求めること。さらに、防衛省の「地元説明資料」をはじめとした政府から得た情報は、県のホームページですみやかに公開すること。
今回の共同訓練で使われる民間空港・港湾の8割が九州・沖縄に集中しています。また、「特定利用港湾・空港」の使用は、北九州空港をふくむ計13カ所です。「特定利用港湾・空港」とは、有事に備えて自衛隊などが平時から民間の空港・港湾を使えるよう施設の機能を強化し、訓練をしやすくする枠組みです。
「安保3文書」の「国家安全保障戦略」では、有事に対応するために民間の空港や港の利用を拡大する方針が示され、7月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、「南西諸島を含む日本全国で日米演習および施設の共同使用」を追及すると明記しています。ですから、今回の日米共同演習での公共インフラの軍事利用はこうした方針の実行であり、今後米軍がつかいやすくするための露払いとしての既成事実づくりと考えられます。
そもそも、なぜ「北九州空港」なのか。政府の「地元説明資料」では、「航空自衛隊基地が攻撃されてつかえない事態を想定」して行う訓練だとのべています。つまり、築城基地がつかえないときに北九州空港をつかうということです。築城基地そのものが、沖縄の米軍普天間基地などが攻撃されてつかえなくなったときに、あらゆる米軍機がいつでも出撃拠点としてつかえるようにする機能が整備されました(滑走路の延長をのぞく)。その築城基地が攻撃でつかえないときに北九州空港をつかうということは、自衛隊と米軍の出撃拠点になるとことです。
北九州空港についていえば、管理運営者は防衛大臣ではなく国土交通大臣です。県も北九州市も苅田町も当然平和的な利用を前提にしていたからこそ、官民あげて利用促進をはかり、アクセスの向上などのために少なからぬ公費も投じてきました。多くの住民のみなさんも、民生利用の空港だからこそそれを理解してきたのです。
しかも、北九州市も苅田町も「非核平和都市宣言」をしています。「北九州市非核平和都市宣言」(2010年2月10日)には、「私たち北九州市民は、長崎に投下された核兵器の第一目標が小倉であったことを重く受け止め、核兵器の恐ろしさ、戦争の悲惨さ、平和の尊さを、次の世代に伝え、核兵器のない、戦争のない、平和な世界を築いていかなければなりません。よって、私たちは、命と平和の大切さを深く認識し、核兵器の廃絶と平和な世界の実現のために歩み続けることを誓い、ここに北九州市を非核平和都市とすることを宣言します」とあります。
「長崎に投下された核兵器の第一目標が小倉であったことを重く受け止め」「核兵器の廃絶と平和な世界の実現のために歩み続けることを誓い」――市民の強い思いを受けて、北九州市立平和資料館「平和のまちミュージアム」が2022年4月に開館しました。なぜ、北九州市が長崎に投下された核兵器の第一目標だったのか――それは、戦前、北九州市が重要な軍都だったからです。軍都の道をふたたび歩んでいいのでしょうか。
今年1月2日、羽田空港に着陸した日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突して炎上した事故をふまえ、福岡空港でも「安全対策」がとられることになっています。しかし、滑走路が一本増えても「日本一の過密空港」の福岡空港に、米軍板付基地と航空自衛隊の基地があり、民間空港最多の米軍機が離発着していること自体が危険で異常なことです。ですから地元では、超党派で米軍板付基地の完全返還を求め続けているのです。にもかかわらず、今回の日米共同統合演習では、南西諸島での戦闘による米兵を含む「負傷者」を移送する経由地としてつかおうとしています。大規模な戦争を想定した演習において、国際法上も「軍事行動の一部」とされる兵站活動に福岡空港をつかうことなど許されません。
鹿児島県は9月26日、「2023年11月にオスプレイの事故が発生し、県民の間にまだ不安の声がある」とした上で、統合幕僚長と九州防衛局長宛てに住民の安心、安全の確保に万全の対策を講じることなどを文書で要請しました。九州では鹿児島県だけが、防衛省の「地元説明資料」をHPで公開しています。また、沖縄県の玉城デニー知事は、9月27日の定例会見で、「キーン・ソード」でオスプレイなどによる民間空港の使用を計画していることについて、自粛を求めたと明らかにしました。住民の安全・安心を守る責務がある地方自治体として、当たり前の姿勢ではないでしょうか。
「安保・防衛政策は国の専管事項」などと法的根拠もないことを繰り返し、政府にまともに説明も求めず、政府から得た情報を県民に公開さえしないとすれば、地方自治を放棄した無責任極まる姿勢だと言わねばなりません。
本県においても、防衛省の「地元説明資料」に書いていないことで、政府に説明を求めるべきことが山ほどあります。
「北九州空港の使用は、特定利用空港への選定とどういう関係があるのか」「民間航空機の飛行に支障が出ないよう訓練するというが、訓練の詳細な内容と訓練時間帯は」「今回は南西諸島からの負傷者は運ばないというが、これは、南西諸島で武力衝突が発生することを想定した訓練ということか」「海上自衛隊の航空機の一時的な拠点または中継地点として北九州空港に着陸するとあるが、有事の際に海上自衛隊がつかうということか」
「基地等警備訓練のイメージ写真で、武装した隊員が写っているが、どのような事態を想定した訓練か。『夜間訓練、空砲使用を含む』とあるが、基地などの施設内だけで行う訓練なのか」
「築城基地で行う統合防空ミサイル防衛訓練と統合防空ミサイル防衛(IAMD)との関係は。夜間訓練は、いつ、どのような内容で予定しているのか。180人の米兵の休日、深夜の行動規制はもうけるのか」
「日米の管制要員が、春日基地の防空指令所で演練する『防空作戦』とは何か。参加する米軍約30人はどこに泊まるのか」
「背振山分屯基地で展開訓練する航空自衛隊千歳基地の高射部隊の車両約20台の種類と台数、いつ、どういうルートで移動するのか」
以上のように、訓練が実施される自衛隊基地・駐屯地などがある自治体に、訓練の内容やスケジュールなどの情報の提供が求められるだけでなく、訓練のなかで日米の軍用車両などが通行する公道周辺の自治体にも、事前に通行日時などの情報の提供が求められるのは当然です。
以上
防衛大臣 中谷 元 様
福岡県民を戦争に巻き込む戦争のための日米共同演習「キーン・ソード25」に反対する申し入れ
2024年10月9日 日本共産党福岡県委員会
委員長 内田 裕
10月23日(水)~11月1日(金)予定の日米共同統合実働演習「キーン・ソード25」は、自衛隊は約3万3000人、艦艇約30隻、航空機約250機、米軍は約1万2000人、在日米軍のみならずインド太平洋全域の米軍も参加し、艦艇約10隻、航空機約120機が散開するという過去最大規模で実施されます。しかも、かつてない32カ所もの民間空港・港湾が使われます。
本県においても、北九州空港や福岡空港などの公共インフラをはじめ、米軍板付基地と県内の自衛隊基地・駐屯地などの施設をつかってかつてない規模で展開する訓練が、米軍も参加して行われる予定です。民間空港である北九州空港の初の軍事利用をはじめ、築城基地での米空軍のF-16×10機が展開し、米軍人約180人が参加する訓練、春日基地の防空指令所における日米の管制要員(米軍約30人)による防空作戦の訓練、千歳基地の高射部隊の車両約20台が背振山分屯基地で機動展開訓練、福岡空港を経由して南西諸島の戦闘で負傷した日米の軍人を後方に移送する訓練など、陸上作戦、航空作戦、海上作戦、統合後方補給・衛生訓練などの訓練が行われるとされています。
以下のことを要望します。
1、憲法に反する日米共同統合演習「キーン・ソード25」を中止し、「軍事対軍事」の悪循環を断ち切り、平和を築く外交努力をつよめること。
今回の日米共同演習の目的と内容は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とした日本国憲法第9条に反し、政府の「専守防衛」の立場ともまったく相容れないものです。そして、過去最大規模の日米共同統合演習実施は、北東アジアの緊張をますます高め、安全保障環境をいっそう悪化させるだけです。県民の命と平和をまもるために、決して看過できません。
米軍が開始した戦争に自衛隊が集団的自衛権を発動して参戦し、米軍の指揮下で長射程ミサイルを相手の国に撃ちこむ。そうすれば、当然、報復攻撃を受け、ミサイルの撃ちあいになります。その結果が国土の焦土化であることは、火を見るよりも明らかです。今回の日米共同統合演習は、福岡県を含む九州・沖縄全体を戦場にすることを想定した訓練であり、「二度と捨て石にさせない」という沖縄の人々の叫びは他人事ではありません。
この間県内では、築城基地の「米軍基地化」、核攻撃にも耐えられる「継戦能力」を持つための自衛隊基地の「強靭化」(築城・春日)、長射程ミサイル配備のための弾薬庫の増設(築城・春日)、北九州空港と博多港の「特定利用港湾・空港」への選定、北九州空港へのシーガーディアンの配備、基地周辺の住民監視のための重要土地調査規制法の施行など、「戦争する基地づくり」「戦争するまちづくり」が一気にすすめられています。
本県は、戦前、軍都とよばれた小倉、久留米をはじめアジアへの侵略拠点だったこともあり、多くの県民が国内外で犠牲となりました。戦後は、日本国憲法のもとで、アジアの国々や人々とともに成長、発展しています。ところがいま、全国で4番目に多い福岡県内の自衛隊の基地・駐屯地が、米軍指揮下で対中国戦争をたたかう「最前線基地化」「軍事要塞化」されようとしています。
「抑止力が平和を守る」ことが幻想であることは、先の大戦をはじめとした歴史の教訓です。だからこそ、「われらとわれらの子孫に、…政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないように決意」(憲法前文)し、憲法第9条は「武力による威嚇」を禁じています。
「国連憲章と国際法を守る」という一点での国際社会の結束をすすめる外交努力の積み重ねこそ、世界と地域の平和を築く唯一の道です。ASEANと協力して、戦争の心配のない平和な東アジアにしようというAOIP(ASEANインド太平洋構想)を進める外交努力こそ、憲法9条をもつ日本政府がなすべきことです。
2、民間空港である北九州空港をつかった軍事訓練および超党派で米軍板付基地の全面返還を求めている福岡空港をつかった軍事訓練を中止すること。また、公道をつかった移動についても、当該自治体への詳細な情報提供とともに、住民に対する万全の安全対策を講じるよう求めること。
今回の共同訓練での「特定利用港湾・空港」の使用は、北九州空港をふくむ計13カ所です。「特定利用港湾・空港」とは、有事に備えて自衛隊などが平時から民間の空港・港湾を使えるよう施設の機能を強化し、訓練をしやすくする枠組みです。
「安保3文書」の「国家安全保障戦略」では、有事に対応するために民間の空港や港の利用を拡大する方針が示され、7月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、「南西諸島を含む日本全国で日米演習および施設の共同使用」を追及すると明記しています。ですから、今回の日米共同演習での公共インフラの軍事利用はこうした方針の実行であり、今後米軍がつかいやすくするための露払いとしての既成事実づくりと考えられます。
そもそも、なぜ「北九州空港」なのか。政府の「地元説明資料」では、「航空自衛隊基地が攻撃されてつかえない事態を想定」して行う訓練だとのべています。つまり、築城基地がつかえないときに北九州空港をつかうということです。築城基地そのものが、沖縄の米軍普天間基地などが攻撃されてつかえなくなったときに、あらゆる米軍機がいつでも出撃拠点としてつかえるようにする機能が整備されました(滑走路の延長をのぞく)。その築城基地が攻撃でつかえないときに北九州空港をつかうということは、自衛隊と米軍の出撃拠点になるとことです。
北九州空港についていえば、管理運営者は防衛大臣ではなく国土交通大臣です。県も北九州市も苅田町も当然平和的な利用を前提にしていたからこそ、官民あげて利用促進をはかり、アクセスの向上などのために少なからぬ公費も投じてきました。多くの住民のみなさんも、民生利用の空港だからこそそれを理解してきたのです。
しかも、北九州市も苅田町も「非核平和都市宣言」をしています。「北九州市非核平和都市宣言」(2010年2月10日)には、「私たち北九州市民は、長崎に投下された核兵器の第一目標が小倉であったことを重く受け止め、核兵器の恐ろしさ、戦争の悲惨さ、平和の尊さを、次の世代に伝え、核兵器のない、戦争のない、平和な世界を築いていかなければなりません。よって、私たちは、命と平和の大切さを深く認識し、核兵器の廃絶と平和な世界の実現のために歩み続けることを誓い、ここに北九州市を非核平和都市とすることを宣言します」とあります。
「長崎に投下された核兵器の第一目標が小倉であったことを重く受け止め」「核兵器の廃絶と平和な世界の実現のために歩み続けることを誓い」――市民の強い思いを受けて、北九州市立平和資料館「平和のまちミュージアム」が2022年4月に開館しました。なぜ、北九州市が長崎に投下された核兵器の第一目標だったのか――それは、戦前、北九州市が重要な軍都だったからです。軍都の道をふたたび歩むことを市民は絶対に許しません。
今年1月2日、羽田空港に着陸した日本航空の旅客機と海上保安庁の航空機が衝突して炎上した事故をふまえ、福岡空港でも「安全対策」がとられることになっています。しかし、滑走路が一本増えても「日本一の過密空港」の福岡空港に、米軍板付基地と航空自衛隊の基地があり、民間空港最多の米軍機が離発着していること自体が危険で異常なことです。ですから地元では、超党派で米軍板付基地の完全返還を求め続けているのです。にもかかわらず、今回の日米共同統合演習では、南西諸島での戦闘による米兵を含む「負傷者」を移送する経由地としてつかおうとしています。大規模な戦争を想定した演習において、国際法上も「軍事行動の一部」とされる兵站活動に福岡空港をつかうことなど許されません。
訓練が実施される自衛隊基地・駐屯地などがある自治体に、訓練の内容やスケジュールなどの詳細な情報を提供することは当然ですが、訓練のなかで日米の軍用車両などが通行する公道周辺の自治体にも、事前に通行日時などの情報の提供が求められるのは当然です。
以上