2025年6月11日
日産自動車とパナソニックHDは雇用と関連企業、地域経済を守る社会的責任を果たせ
日本共産党福岡県委員会は6月9日、政府に対し、日産自動車とパナソニックHDに対して、雇用と関連企業、地域経済を守る社会的責任を果たすよう働きかけることを求める申し入れを行いました。
申し入れは、山口ゆうと党福岡県最賃1500円推進責任者(参院福岡選挙区予定候補)と真島省三県委員長代理らが福岡労働局を訪れて行いました。
申し入れ文は以下の通りです。
県委員会は福岡県にも申し入れ、また、2社に対して要望書を送付しました。
厚生労働大臣 福岡 資麿 様
2025年6月9日 日本共産党福岡県委員会
委員長 内田 裕
日産自動車とパナソニックHDに対して、雇用と関連企業、地域経済を守る社会的責任を果たすよう働きかけることを求めます
日産自動車とパナソニックホールディングス(HD)の大規模なリストラ計画の発表に、工場がある県内の自治体、住民から雇用や下請け企業、地域経済への影響を懸念する声が広がっています。
日産が5月13日に発表した経営再建計画では、2027年度までに国内外の生産工場を17から10の工場に統合するほか、計2万人の人員削減を実施していくとしています。解雇対象には正社員、派遣社員、期間工が含まれると報じられ、下請け部品メーカーもその影響を大きく受けます。
神奈川県内の2工場の閉鎖を含め検討しているとの報道について日産側は、 「日産から発表した情報ではない」 「国内工場で確定していることは何もない」と地元自治体に説明しています。しかし、県内では、日産がこの間、北九州市に予定していた電気自動車(EV)向けの電池生産工場建設計画を業績低迷で撤回したこともあり、苅田町の二つの工場の雇用への影響が危惧されています。
京築地区の住民から次のような声が寄せられています。「苅田工場のリストラの影響は、苅田町、行橋市など京築地区全体におよぶ。すでに45歳以上の“肩たたき”が始まっている。日産出身の市議が『自分もやめなきゃいけない』とぼやいていた。神奈川の2工場の閉鎖で苅田工場に来る労働者がいて、“玉突き”で苅田工場のリストラが加速しています。技術系は残して、事務系をリストラするようだ。日産は人員削減計画の詳細を明らかにしないまま“肩たたき”をすすめている」。
しかも、日産の今回の経営立て直し計画はトランプ関税問題が起きる前に検討していたもので、今後トランプ関税の影響で国内の自動車産業の生産量が大きく減る懸念があり、日産をはじめ自動車大手が、工場の整理、集中化、人員削減と下請け整理をいっそう進める危険があります。
日産の全米販売台数の約45%が関税の対象になります。日産は、トランプ関税の影響額は最大で4500億円と試算し、対策として米国生産車両の優先販売、現地生産の最適化、影響を受ける生産の再配分、サプライヤー、下請け部品メーカーとの現地化推進を積極的にすすめて、第1四半期で約30%の影響額の軽減を見込んでいます。米国向けの車両生産の主力は苅田からアメリカの工場に移る見通しで、苅田町での生産量は減少することになります。その打撃をもっとも受けるのは、非正規雇用の労働者であり、県内に多く進出している下請け部品メーカーです。
具体的な人員削減の人数や対象の雇用形態については詳細が分かっていませんが、正社員の解雇は労働組合との交渉や法律上の制約が多く、固定費もかかるため、 「雇用の調整弁」と言われる短期的な雇用契約の派遣社員や期間工、契約社員を対象に人員削減をする可能性が高いと予測されています。
自動車産業はすそ野が広く、福岡県内で日産と取引のある企業は522社の下請け部品メーカーがあり、2万8388人を雇用しています。1次下請けが28社、2次下請けが319社、3次下請け以降が175社です。さらに何らかの取引がある地場産業も含めると、大規模なリストラは地域経済に大きな影響を与えることが懸念されます。
5月に入り、パナソニックHDが国内外で1万人の人員削減をすすめることを発表しました。2001年の1万3000人に次ぐ大規模なリストラですが、パナソニックの2024年度の当期利益は歴代2位の水準で、黒字下での人員削減になります。
同社は、25年3月期決算で黒字を確保したものの業績は伸び悩み、競合他社と比べると見劣りする収益構造を見直し、高収益企業へと転身を図るための構造改革が必要と危機感を強調しています。楠見雄規社長兼グループ最高経営責任者(CEO)は、 「雇用に手を付けることは、じくじたる思いだ」と会見で語りながら、 「私は松下電器産業(現パナソニックHD)の伝統は『限界利益を率で上げて、固定費を額で抑えること』と教え込まれた。固定費をいかに額で抑えるかを、グループに再度根付かせる。その施策の一つが人員抑制だ」とリストラへの断固とした決意を語っています。
パナソニックは、2025年度から赤字事業の撤退や終息、拠点統廃合をすすめ、早期希望退職などで1万人規模(国内、海外でそれぞれ5000人)の人員削減をすすめる計画です。今回の1万人削減計画は、グローバルの全従業員の約4%に相当し、事業によっては5%以上の人減らしが行われる危険性もあるといわれます。
かつて昭和や平成に繰り返されてきた大規模リストラは赤字企業が大半でしたが、 “令和”に入って「競争力強化」の名のもとに黒字の大手企業のリストラが相次いでいます。パナソニックHDのリストラ計画はその最たるものです。
日産とパナソニックには、雇用と地場産業、地域経済を守る社会的責任があります。また、日産は、「経営再建中」といってもグループ全体で3兆4154億円(3月31日)もの内部留保(利益剰余金)があります。パナソニックは黒字下でのリストラをしようとしており、グループ全体では3834億円余(3月31日)の内部留保(利益剰余金)もあります。
以下のことを要請します。
- 政府として、日産自動車とパナソニックに対し、最大限の雇用継続、関連企業、地域経済への影響回避を強く働きかけること。
とくに日産は、昨年、下請け企業への支払代金約30億円を不当に減額し、公正取引委員会から下請け法違反の勧告を受けており、政府として日産に対し、下請けへの優越的地位の乱用をしないよう働きかけること。 - 政府として対策本部会議を早急に設置し、県内自治体や労働組合等との連携体制を構築し、相談窓口を開設して労働者や関連企業に周知すること。
とくに、次のことを両社とその労働者に急ぎ徹底していただきたい。退職勧奨される従業員は、その理由にかかわらず、本人の合意があって初めて退職となるため、退職勧奨は断ることができること(労働契約法第16条)。派遣社員や期間工、契約社員、アルバイトやパートなど「期間の定めのある雇用契約(有期労働契約)」で働く労働者が、契約期間が満了した際に使用者(雇い主)から契約の更新を拒否されてしまうという「雇い止め」を受けても、労働者に一定の事情が存在する場合、「雇い止め」した使用者側に契約の更新がなされたものとみなして強制的に契約を更新させるためのルールが定められていること(労働契約法第19条)。
以上