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2025年6月11日

最低賃金をただちに全国一律時給1500円に引き上げ、1700円をめざすために、中小企業への直接支援の抜本的強化を求める

日本共産党福岡県委員会は6月9日、政府に対し、最低賃金をただちに全国一律時給1500円に引き上げ、1700円をめざすために、中小企業への直接支援の抜本的強化を求める申し入れを行いました。

申し入れは、山口ゆうと党福岡県最賃1500円推進責任者と真島省三県委員長代理らが福岡労働局を訪れて行いました。

申し入れ文は以下の通りです。

県委員会は福岡県にも申し入れました。


厚生労働大臣 福岡 資麿 様

2025年6月9日 日本共産党福岡県委員会
委員長 内田 裕

最低賃金をただちに全国一律時給1500円に引き上げ、1700円をめざすために、中小企業への直接支援の抜本的強化を求めます

「福岡県の子どもの貧困率は23%と、全国で4番目に高い数字です」「母子家庭の子どもは、半分以上が貧困で苦しんでいます」(特定非営利活動法人フードバンク福岡HPより)福岡県は全国屈指の“低賃金”県で、労働者の40%が非正規雇用で女性は54%が非正規雇用(2017年総務省就業構造基本調査)です。2021年福岡県賃金実態調査によると、時給1000円未満の労働者が約4割、時給1500万円未満の労働者が約75%です。最低賃金の時給1500円以上への引き上げは、福岡県で働く人全体の賃金を押し上げるうえで不可欠の政策です。

福岡県の最低賃金は現在時給992円です。月150時間働いても、年収で約178万5600円にしかならず、「ワーキングプア(働く貧困層)」の水準です。福岡県労働組合総連合は、2018年公表の「最低生計費試算調査」結果を、この間の物価高、コロナ禍以降の生活様式の変化を踏まえて改定しました。この調査では、若者が当たり前にくらすために、25歳女性で時給1833円、男性で1777円必要という結果が出ました(月150時間で計算)。時給1500円は、月150時間で計算して月額約22・5万円です。最低賃金は、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度ですから、最低生計費にもとづき、ただちに時給1500円を実現し、1700円を超える時給を実現しなければなりません。

また、最低賃金に地域間格差をつけて、都市と地方の賃金格差に拍車をかけているのは、世界でも日本だけです。福岡県の最低賃金992円は全国19位で、月150時間働いても月収では15万円にとどかず、最賃最高額の東京都の時給1163円と比べると、年収で30万円余の差があります。全国知事会などの地方団体も求めているように、「全国一律」にすることで都市と地方の賃金格差を是正するとともに、どのまちで働いても若い人たちが働き続けられる賃金水準にならなければ、賃金の安い地域からの若い人の流出もとどめることはできません。

他の先進国では、物価高から国民生活を守る“経済対策の切り札”として、消費税減税ととともに最低賃金の大幅引き上げをちゅうちょなく実行してきました。ドイツ、フランスでは、物価上昇に対応して年に3回も最賃を引き上げました。2024年現在、ドイツで時給約1998円、月額約35万円、フランスで約1913円月額約29万円と日本をはるかに上回っています。先進主要国(OECD)33カ国中28位です。

最低賃金が時給1500円になれば、月150時間働いたとして、福岡県のいまの最低賃金と比べて月額約7万6200円の賃上げ、年額約91万4400円の賃上げになります。労働者の購買力の上昇は、 地域の企業の新たな売り上げアップにつながり、経済の好循環を確実に生み出します。

これは、この間最低賃金を大幅に引き上げてきた他の先進国でも試され済みであり、中小企業の経営者側のなかにも最低賃金の引き上げを望む声が広がっています。

中小企業はこの間、コロナ禍、物価・原材料の高騰、過剰債務という「三重苦」のなかで賃上げは厳しい状況です。ただちに最低賃金時給1500円を実現するカギは、 「それだけ直接支援をしてく1れるのであればできる」と中小企業にも賛同していただけるだけの施策を、政府が最低賃金審議会に先行してしめすことが不可欠です。

自公政権は2013年以来、賃上げした企業の税金を安くする「賃上げ減税」を実施してきましたが、黒字企業しか対象になりません。赤字企業が多い中小企業では、支援を受けた企業の割合は過去10年間の平均で4%程度です。かたや、トヨタ自動車は過去10年間で約1092億円の賃上げをしたうち4割に当たる約440億円の減税を受けています。同社はこの間に約17・9兆円の利益をあげ、株主に約6・5兆円も配当し、内部留保を約10・9兆円も増やしています。政府の支援などなくても賃上げは十分可能だったはずです。

地方ほど中小企業が多くの雇用を支えており、福岡県では雇用のおよそ8割を中小企業が支えています。しかし、現在の国の“賃上げ支援”はほとんど届きません。ですから全国では、中小企業の賃上げへ独自の直接支援にふみきる自治体も増えています。全国の都道府県最低賃金審議会は、政府に対し、中小企業の賃上げへの直接的支援、税・社会保険料の減免、新たな助成金の創設など、直接支援の改善・強化を要求しています。2024年の福岡地方最低賃金審議会の答申に向けた審議では、意見がまとまらず、採決では使用者側は全員反対し、労働者側・公益委員の賛成多数で決定し、付帯決議で中小企業支援策をもとめる内容が採択されました。

世界を見ても、フランスで2000年代初めに最低賃金を大幅に上げた際には、中小企業の社会保険料負担を約2・28兆円軽減しました。アメリカでも2000年代後半に最低賃金を大幅に引き上げたときには、中小企業に約8800億円の減税を実施しています。要は、中小企業の賃上げにつかう直接支援の規模なのです。

最低賃金を全国一律1500円に引き上げたときの賃上げ総額は、中小企業だけでもおよそ10兆円です。また、中小企業にトヨタ並みの賃上げ支援をしたら、5年間で10兆円程度必要です。日本共産党は、中小企業の賃上げ支援の財源として、資本金10億円以上の大企業に対し、2012年以降に増えた内部留保額に毎年2%、5年間で10%の時限的課税を行うことを提案しています。

これにより、毎年2兆円程度、総額で10兆円程度の新たな財源を生み、それを中小企業の賃上げ支援に回します。その際、課税対象額から賃上げ額を控除することで、大企業が賃上げすれば税負担が減る仕組みにして大企業の労働者の賃上げも促進します。また、省エネや再エネをすすめる「グリーン投資」など国内設備投資額も課税対象から控除します。

財務省が5月2日に発表した1~3月期の法人企業統計によると、資本金10億円以上の大企業(金融業と保険業を含む全産業)の内部留保は、約564兆円と過去最大を更新しました。第2次安倍晋三政権発足直前の2012年度1~3月期と比べると約225兆円以上も増加し、1・78倍になりました。同じ期間に、大企業の経常利益は1・87倍に急増する一方、賃金は1・21倍に低迷しています。同時期に消費者物価が20%程度上昇しているため、実質賃金は横ばいです。大企業の労働分配率は、この30年で60%から45%程度まで下がり過去最低です。大企業の内部留保への時限的なわずかな課税で最低賃金の大幅な引き上げを実現すれば、国内に新たな巨大な市場を生み出すことになり、ひいては大企業のビジネスにも大きなプラスになります。

次のことを要請します。

すべての労働者に物価を上回る賃上げを実現するために、最低賃金を全国一律1500円(手取り月20万円程度)に引き上げ、1700円をめざすこと。そのために、中小企業の社会保険料の軽減や賃上げ補助金など、中小企業の賃上げへの直接支援を10兆円規模で行うこと。

みなさんの声をお聞かせください