2011年10月12日2014年6月14日
九電第三者委員会の「最終報告」が明らかにしたもの
“ウソと癒着” で押しつけられた原発はいらない
真島省三(日本共産党福岡県委員会・県民運動委員会副責任者、前県議)
2)プルサーマル導入や再稼動などの重要な局面で、原発推進のためなら国民、住民をだましてもはばからない九電の企業体質と、そうした不正行為を緊密に連携してすすめてきた立地自治体との構造的癒着関係(「原発利益共同体」)の実態が浮き彫りに。
①「プルサーマル討論会」での動員、企画・運営への関与、「仕込み質問」
「報告書」は、「プルサーマル佐賀県討論会」(05年12月)で、県と九電の「緊密に連携協力の下に」、動員、企画・運営への関与、「仕込み質問」がおこなわれていたことを、次のように解明しています。
「九州電力が、同社社員、協力会社、地元関係団体等に対する参加呼びかけを行った結果、一般参加者の応募者1千名のうち、約655名が『九州電力関係者』。入場者数717名中相当な割合が『九州電力関係者』であった」
「九州電力が、企画、進行に深く関与し、自社や協力企業、取引先の社員等を大量に動員し、九州電力社員による『仕込み質問』を多数用意したことにより、賛成の立場からの質問者のほとんどを『仕込み質問者』が占めることになった」
「同討論会は、佐賀県側と九州電力側との緊密な連携協力の下に行われ、主催者である佐賀県側が認識し、容認した上で『仕込み質問』が行われていた」
「パネリスト6人の応募状況は、推進派3名、慎重派14名、中立3名だった。当初、推進派、慎重者各3名選出とされていたが、最終的に推進派、慎重派、中立派から各2名とされ、しかも、推進派、中立派は九州電力が依頼したもので、中立派2名も実質的には推進派に近い立場であった。九州電力が、参加者にも、地域住民、佐賀県民にも知らせることなく、パネリスト応募者は慎重派が圧倒的に多数であるのに、逆に推進派が多数になるように選定した」
「しかも、コーディネーターを務めたジャーナリストは、当時、内閣府原子力委員会の委員として、国の原子力発電政策の推進に関わっている立場であり、中立性に疑問があった」
「九州電力によって『作られたイベント世論』だったと言わざるを得ない」
「報告書」は、質問者の多くは、手帳や紙を見ながら、九州電力が用意した質問原稿のとおりに発言し、いずれも露骨な内容の賛成質問であったと、いくつか例示しています。
「たとえば、最初の質問を行った九州電力の社員は、『危ない、危ないと言われて、玄海1号機が運転を開始して30年近くになるが、私の家の方で作っている米とか野菜が放射能の影響売れなくなったという話は聞かないし、私の友達が原発で働いているが、放射能の影響で具合が悪くなったという話も聞かない。というのは、国とか県とか、実際に運転している九電が放射線を管理しているからだと思う』と、農業従事者という一般市民からの質問であるともとり得る発言をし、その中で、九州電力の放射線管理が信頼できると述べているのである」
「特に、最後から2番目の質問者は、『本日の討論会を聞いてイメージより安全ではないかと感じた』、『もし事故を起こした時に国や九州電力は責任をとります、その体制も築いています、と言われた』、『原子力の専門家が自分のプライドにかけて安全と言えないものに賛成はされない』などと『締めくくり』的な内容の質問をし、その中で、市民の側からの九州電カへの信頼、信任を表明するような発言をしている」
「報告書」は、「仕込み質問」は県側に事前に報告されており、「知事が気づかなかったとは考えにくい」と指摘しています。
「九州電力が作成して佐賀県に提供していたシナリオには、質問が慎重・推進に偏らないようするための工夫や、最後の質問は『推進の質問』で終わるようにするなどの記載が見られること、九州電力が、佐賀県との打合せ内容をまとめた議事録に、質間者の席の配置が決まってから、質問者の席を確認する方法を検討する旨の記載があることなどから、『仕込み質問』が佐賀県側に事前に報告された上で行われたことは疑いのないところである」
「古川知事が、賛成質問が相次ぎ、『プルサーマルは安全』という質問で締めくくられたのを見て、『仕込み質問』に全く気づかなかったとは考えにくい」
「報告書」は、古川知事が、シナリオ通り、討論会における九州電力の「仕込み質問」を、「説得力ある賛成意見」と評価することで、最終的にプルサーマル計画に事前了解を出したとしています。
「同知事は、…推進派、慎重派双方から意見・質問が出され、推進派の意見には科学的知見があり、説得力があったと自ら評価したのである。…そして、同年3月26日、…事前了解を出し、日本で初めてのプルサーマル計画が実現するに至った。しかし、実際には、この『説得力ある賛成の立場からの意見』というのは、九州電力が事前に用意した質問原稿に基づくものであり、プルサーマルを導入しようとする当事者の企業として作られたものであった。…賛成の立場からの質問者は、8名中7名が仕込み質問者であり、…」
② 再稼動をめぐる「やらせ」メール問題では、知事の発言が決定的な影響を与えた
「報告書」は、玄海2、3号機の再稼動をめぐる「やらせ」メール問題では、「知事の発言が決定的な影響を与えた」と断じています。
「この点(九電との面談の際の知事発言が『やらせ』の発端になったこと…真島)に関して、…同知事及び九州電力側から、佐賀支店長メモの記載が不正確であり、同面談における古川知事の発言は同メモとは異なっていたかのような説明が繰り返しなされている…」
「その経緯からも、同知事が、同メモの内容と実際の発言が異なると主張できるほどに具体的な記憶を有していないことは明らかであり、知事発言に関する唯一の具体的根拠は佐賀支店長メモなのであるから、同知事の発言が同メモの記載と同様であることは疑う余地がない」
「同面談での知事発言の全体の流れからすると、同知事は、玄海原発再稼働に向けてのシナリオの中で、『県民向け説明会』を重要なステップと位置付け、同説明会の番組への投稿の中で『発電再開容認の意見』の割合が増えることを期待し、それを九州電力側に伝えていた」
「このような両者の協力関係を前提にすれば、…玄海原発に関連する業務に従事していた社員にとって、知事が求めている『賛成投稿』を行うことが玄海原発再稼働につながるとの期待から、何らかの方法でそれに応じようとしたものと考えられる。まさに、同知事の発言は、本件賛成投稿要請行為に決定的な影響を与えたものと言える」
3)「やらせ」が発覚し、第三者委員会の調査がおこなわれ、その実態と知事との癒着が認定されるなかで、自ら事実を解明する意思がないどころか、逆に事実を隠蔽し、第三者委員会に対する異常な「反論」までおこなうなど、九電の経営トップの異常さ、無責任さ、反省の無さが断罪された。
「報告書」は、「やらせ」メール問題発覚後の九電の事実を隠蔽しようという執拗な対応、すなわち、「しんぶん赤旗」のスクープにシラを切り通そうとしたが、笠井質問にあわてて事実を認め、その後も、「悪質かつ露骨な」組織的証拠隠滅行為をし、知事をかばって第三者委員会に反論したことが、「社会から厳しい目が注がれたことが、一層深刻な信頼失墜を招く原因になった」と批判しています。
① 事件発覚後も、シラを切りとおそうとしたことが、一層深刻な信頼失墜を招いた。
「本件賛成投稿要請(「やらせ」メールのこと…真島)については、…7月4日には鹿児島県議会で質問を受けたが、十分な事実確認を行わないままその事実を否定する答弁を行った。…7月6日に、国会質問で取り上げられ、社長が記者会見を行ったが、その際の社長の発言や対応が、新聞、テレビ等で大きくクローズァップされ、『やらせメール』問題として大きく報じられたことで、本件は社会的注目を集めることとなった」
「そして、…当委員会の活動開始後も、原子力発電本部の副本部長の指示により調査に関する資料廃棄行為が行われたほか、当委員会の中間報告に対して、会社側から『独自の見解』が公表されるなど、本件をめぐって同社が異例とも言える対応をとり続け、同社の対応に社会から厳しい目が注がれたことが、一層深刻な信頼失墜を招く原因になったと考えられる」
② 証拠隠滅行為とともに、第三者委員会への異常な「反論」で、自社の社員の行為を殊更に非難してまで、佐賀県知事を擁護しようとする姿勢によって、九州電力と佐賀県知事との関係に一層強い疑念を生じさせたことは否定し難い。
「社外の第三者委員会の調査開始後に、その資料として活用されないようにするために資料廃棄が指示され、…これらの資料廃棄指示及び廃棄行為は、今回の問題に対して、そして、当委員会の調査に対する九州電力の対応を象徴するものである。…廃棄の対象とされ、破られるなどして回収ボックスに投棄された後に発見された資料の中には、6月21日の知事公舎での面談メモや佐賀県討論会での『仕込み質問』に関する資料のように、本件調査対象事実そのものに関する資料も含まれており、しかも、廃棄対象とされた資料の中には破られたものとそのままの状態で回収ボックスに入れられたものとがある中で、それら調査対象事実に関する資料の多くが破られるなど、廃棄の意図が表れている。これらの事実に照らせば、本件資料廃棄の動機は、…まさに、調査を妨害し、重要な事実が明らかにならないようにする意図で行われたものと判断せざるを得ない」
「本件に関する資料廃棄指示及び廃棄行為は、九州電力の原子力発電本部によって組織的に行われたもので、本件の核心部分に関する事実解明を著しく困難にする悪質かつ露骨なコンプライアンス違反行為である。同行為は、過去の問題行為の指摘に真摯に向き合い、事実を明らかにする基本的な姿勢が、九州電力という会社、とりわけ、その中の原子力事業本部という部門に欠けていたことを端的に示しているものと言えよう」
「第三者委員会は、企業不祥事により信頼を失墜した組織の委託により、第三者の有識者等による中立的、客観的な立場からの調査を行うことを目的として設置されるものであり、その調査結果に対して、委託者である会社側が反論を公表するなどということは、調査結果に明白な瑕疵があるという場合でない限り、通常はあり得ない。ところが、九州電力は、当委員会の調査結果に関して『当社の見解』の公表を行うなどして反論を行った」
「佐賀支店長メモが、知事公舎での面談における古川知事の発言を基本的に正確に記載したものであることは、…十分に論証されており、当委員会の中間報告においても確信をもって同様の認定を行ったものであるが、九州電力は、その調査結果を否定し、ことさらに面談メモが知事の真意と異なっていることを主張したり、…佐賀支店長による面談メモ作成行為があたかも重大なコンプライアンス違反であるかのような見解を公表したものである」
「このような九州電力の対応は、…第三者委員会の弁護士調査チームによって客観的な見地から適正に行われた調査結果に異を唱え、しかも、佐賀支店長等自社の社員の行為を殊更に非難してまで、佐賀県知事を擁護しようとする姿勢によって、九州電力と佐賀県知事との関係に一層強い疑念を生じさせたことは否定し難い」
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