福岡県政

県政・政策

トップ > 県政・政策 > 福岡県政 > 2014年度福岡県予算の概要と特徴

2014年4月15日2014年7月12日

福岡民報 2014年4月号

2014年度福岡県予算の概要と特徴

日本共産党福岡県委員会 県政対策委員 三浦紀彦

2014年度予算は来春に改選を迎える小川県政にとって1期目最後となる予算です。知事の予算説明の記者会見(2014年2月19日)で「4月から消費税が8%になるこの時期にこそ景気、経済、雇用に全力をあげたい」と述べていますが、その内実はどうでしょうか。

麻生前県政を継承する大型開発と「成長戦略」に力点をおいた大企業応援型に加えて、安倍自公政権のアベノミクスにそった施策が随所に盛り込まれている2014年度の福岡県予算の概要と特徴を述べます。

過去最大規模の予算と一般会計予算の倍以上になる借金

一般会計当初予算案の総額は9年連続増の1兆6,718億円余、特別会計の総額で6,177億円余となっています。

一般会計について予算規模は前年度当初予算比で2.5%増となっています。公債費(借金の返済)と市町村交付金等を除く一般歳出では0.7%増の1兆2,657億余円となっています。

歳出予算で対前年比で増えているのは社会保障費が3.6%増の2,952億円、公債費が3.5%増の2,133億円、公共事業費が1.2%増の2,072億円などで大半は減となっています。

この結果、県債残高は、過去最高の3兆4,097億円に膨らむ見込みで県民1人あたりの借金は68万円になります。

一方歳入を補う財政調整用3基金からは46億円取り崩し基金残高(14年度末)は410億円になります。

安倍内閣の誕生で不要不急の大型開発事業が復活

(1) ダム関連予算に245億円

ダム関係の総額は2014年度だけで過去最大で、日本共産党の議員がいた時代の2倍以上の245億円にものぼります。

渇水用ダムとして計画された五ヶ山ダム(那珂川町に建設、総事業費1,050億円)は「海水淡水化施設」や大山ダムの整備により福岡都市圏は十分すぎるくらい水資源は充足しています。その上、福岡市と北九州市を結ぶ「北部福岡緊急連絡管」が供給開始となり自然災害や異常渇水時には日量5万トンの水が供給されます。

伊良原ダム(みやこ町に建設、総事業費678億円)も現在田川水道企業団が水利権を持つ北九州市から水を供給されており、京築地区も含めて水資源を広域的に活用すれば両ダムともまったく必要ありません。

ダム関係の予算はその他にも水資源地域振興費や国直轄の水資源機構のダム(小石原川ダム)事業負担金等に81億円も支出しており、これは水を受給する自治体が分担して負担します。

(2) 苅田港新松山地区の工業団地等造成事業に約33億円予算措置

一昨年から再開した新松山地区工業団地等造成事業に3ヶ年で110億円をこえる予算措置をしています。県内でも北九州地区には造成済み工業団地が集中していますが、県は中止していた新松山地区の工業団地造成に巨額の県費をつぎ込んでいます。この地域での、日産やトヨタに関連する自動車産業の集積をねらっています。

(3) 福岡空港滑走路増設事業(総事業費2,000億円)を推進

小川知事は2月議会で自民党の代表質問に答えて「アジアの拠点空港を騒指す福岡空港の溜走路増設を推進します」と強調し、福岡空港対策費として1,319万円を計上しています。福岡空港の旅客数は2000年のピーク隔に比べると年々減っていますが過大な需要予測に基づき滑走路の増設を国に強く要求しています。

(4) 関門海峡道路の調査を継続

安倍内閣が誕生し、九州、山ロ経済界は「関門海峡道路」(下関北九州道路)の建設を国に強く要望、福岡、山口両県で調査費を計上しています。福岡県は2013年度に予舞で100万円、新年度予算で567万円の予算を計上しています。

「関門海峡道路」構想は、全国6大海峡横断道路の一つとして国と福岡、山口県、北九州市、下関市の五者で長年にわたり調査費を付けてきましたが、国は共産党の追及で2008年度に調査を中止したものです。

これが安倍政権の発足とともに、早速再開、福岡、山口両県でも、松尾新吾九経連元会長を「期成会」の会長として、その元に小川知事や北九州市の北橋市長も参加。「国に強く働きかける」と意気込みを語っています。

(5) 過大な筑後広域公園の整備事業

総面積196ヘクタール(大濠公園の5倍)の県立公園・筑後広域公園内に新幹線船小屋駅がありますが、県と筑後市は「新幹線駅の設置」を理由に、駅周辺の「開発」と「公園整備」に多額の予算を使っています。

2010年度までの駅を含めた総事業費は255億円で、うち県は190、6億円を支出しましましたが、2010年度以降も毎年18億円余の予算を計上、現在50mプール等を建設していますが、終わりが見えていません。

筑後市も2010年度までに26.5億円支出してきましたが、公園に隣接するタマホームの敷地にソフトバンクの2・3軍ファーム地を誘致。誘致にあたって市は、タマホームの土地5ヘクタールを8億円で買上げ、更に隣接する民有地を1.8億円で買い上げて、20年間無償で貸し付けることで最終的に筑後市に決定しました。

有力県議の後押しで筑後広域公園は、ソフトバンクのファーム誘致とあいまって新たな事業が次々と展開されることが懸念されます。

引き続く大企業応援の産業政策

小川知事は今年の主要施策の第一に中小企業支援をあげ、「中小企業振興資金融資費として1,078億円余(予算の89%)を措置した」と強調しますが、「中小企業対策」は依然として融資が中心で、中小企業を直接支援する措置はほぼ皆無です。

地域商品券による地域経済活性化支援費として前年度の1.5倍、6.8億円を計上、消費税増税にたいする景気の腰折れ対策のため、4月から発行できるよう前倒しで予算措置し、商品券の発行規模を120億円見込んでいますが、県全体の総消費額からすればあまりにもわずかです。

小川県政が力を入れているのは、自動車産業や半導体、ロボット産業、水素エネルギーなどの大企業や先端産業の応援で、この分野に今年度も約32億円の振興予算を組んでいます。

県は両政令市と共同で「グリーンアジア国際戦略特区」の指定を受けていますが、この特区関係の企業立地交付金として25年度に9億円、新年度も約8億円の予算措置を行っています。また新たに北九州空港を拠点に三菱重工業(株)は国内初のジェット旅客機の開発を行っていますが、航空関連事業の誘致活動等に新規事業として3,900万円計上しており、「中小企業の支援が第一」とはとても言えません。

アベノミクスに呼応し艶県政施策の展開

(1) 大規模農家へ農地集積60%をめざす

TPP対策として安倍内閣は農地を大規模農家に集中する農地中間管理機構を県が設置します。農地の出し手にたいする協力金の交付は、国が「10年以上の貸付」を要件とするものですが、今回、県独自の制度として「3年以上の貸付」を対象とするもので、事業費として7億8千万円、基金の積立金として約6億円を措置しています。県はこの制度を活用して県が目標としている28年度の農地集積目標60%を達成しようとしています。

(2)「新システム」を先取り、「小規模保育施設を整備」

安倍内閣の成長戦略「女性労働力の活用」に呼応、「待機児童の解消」「新システムを前倒」して小規模保育施設などを整備する」とされていますが、「小規模保育施設」の中身が問われます。

(3) 耐震改修事業、事前防災、減災対策の推進

安倍内閣の進める防災・減災対策(景気対策と連動)の具体策として、県は県立学校(23校が対象)の震災対策として72億円余、遅れている私立学校の耐震改修費助成に2億4000万円余、災害拠点病院等の耐震化助成に9億2000万円余などを計上しています。また、災害関連緊急事業として河川事業に95億円余、砂防関連事業に10億円余、土木関連事業に9億円余、治山関係事業に4億円余の予算を付けています。

(4) 社会保障費増は自然増と新たな難病指定分

自然増として国民健康保険助成費の24億円、介護保険給付金の負担金30億円、特定疾患対策費の20億円、新たな難病指定への対応などが主な要因となっています。

(5) 国の措置による新たな高等学校等奨学給付金新設

安倍内閣は新年度から高等学校の授業料免除制度に所得要件を導入することと併せて新たに給付制の奨学金制度を新設しました。

この措置を受けて県の新年度予算に奨学給付金事業費として6億1000万円の予算が措置されています。公立高校5,000人、私学3,280人を予定、給付金額は公立高校が年最高で129,700円、私学が1,388,000円となっています。

また、中高一貫教育校整備費として8,100万円を計上し、新たに中高一貫校の創設をめざしています。

新年度も小学6年、中学3年生を対象に全校で学力テストを実施し、学力アップの新規事業として外部人材を活用した土曜授業に5,500万円の予算が措置されています。

2013年度の特別給与減額措置に引き続き、55歳以上の原則昇給停止をうちだす

2013年度、国家公務員給与の臨時特別措置(7・8%の減額)に準じて2013年度7月から県職員をはじめ県下の多くの自治体職員の給与は国に準じて減額されました。
この減額は2013年度に限るものですが、2014年度には国に準じて福岡県も2014年度から55歳以上の原則昇給停止に関する給与条例改正案が3月議会に提案されています。

教員、警察官を含む50,000人近い職員が対象ですが、県内市町村の自治体職員に波及することは必死です。

景気回復のカギは労働者の賃上げにあると安倍首相も強調していますが、労働法制のあい次ぐ改悪と併せて公務員給与の実質賃下げは、「労働者の賃上げ」要求や「経済の好循環」と真っ向から矛盾するものです。

県民の切実な要望に後ろ向きの小川県政

県民は、地方政治に対して「高すぎる国民健康保険料(税)、介護保険料、後期高齢者医療への助成と負担の軽減を」「医療費の窓口負担の軽減を」「保育所に入れない待機児童や特養に入れない高齢者を早急になくして」「少入数学級の早期実現を」「憲法の規定通りに教育を本当に無償にして」「住宅リフォーム事業への助成の実施を」「公契約条例を制定して、低賃金労働者をなくして」「再生可能エネルギーを普及させ、原発ゼロの実現を」など、強い要求をもっていますが、それらの要望にこたえる前向きの施策は今回も見当たりません。

今後とも、粘り強く県民が声をあげ、国とともに、県政、市町村政に要求していくことが求められます。

みなさんの声をお聞かせください