2025年2月12日
航空自衛隊芦屋基地および周辺でのPFAS汚染についての要望
環境大臣 浅尾 慶一郎 様
防衛大臣 中谷 元 様
航空自衛隊芦屋基地および周辺でのPFAS汚染についての要望
2025年2月12日 日本共産党福岡県委員会
委員長 内田 裕
芦屋町議 川上 誠一
岡垣町議 平山 正法
遠賀町議 田代 順二
2024年12月24日、政府は、航空自衛隊芦屋基地内の専用水道などの検査で、PFOSとPFOAの合計で国の暫定目標値である1リットル当たり50ナノグラムに対して、専用水道ではその30倍の1500ナノグラム、水源となる井戸では56倍の2800ナノグラムに達しているという調査結果を公表しました。国の専用水道の調査(20年度~24年度)で値がもっとも高かったのが芦屋基地でした。
国の発表をうけて、芦屋町と県は、基地の半径500メートル内で井戸を使用する16戸に飲用をひかえるよう指導し、芦屋町はHP上でも安全が確認されていない井戸水を飲まないようによびかけました。県は、このうち7か所の井戸で地下水調査を行っており、2月下旬に判明する予定の結果を踏まえて対応を検討することにしています。
県は、国の調査結果をうけて、PFASのうちPFOSとPFOAの2物質について、24年12月と今年1月、近くの遠賀川や西川、浜口川などの基地周辺の河川と水路、芦屋海岸周辺海域で水質調査を行いました。県は、1月30日、芦屋基地北側の土壌から湧き出て海に流れる300メートルほどの水路で、国の暫定目標値を超え、12月の調査では目標値の4・2倍にあたる210ナノグラム、1月は2・4倍にあたる120ナノグラムが検出されたと発表。県環境保全課は、その水路が流れ込む海岸から沖合約5メートルの5地点で採水したところ、5ナノグラム未満~5ナノグラムといずれも目標値を下回ったため、「海には特段の影響はない」としています。
岡垣町の上水道は、85%が地下水で、町内6水源の井戸14本から取水していますが、町が独自に行った2020年11月の水質調査で、基地周辺の井戸から国の暫定基準値の7倍以上のPFASを検出しました。岡垣町は、6水源の地下水を上水道に集めて給水していますが、水道水は目標値を下回っているといいます。
永遠の化学物質と言われるPFASは体内などへの残留性が高く、国際的にも発がん性などの健康影響が指摘され、欧米等では厳しい規制が行われています。一方、日本の飲み水の暫定目標値PFOSとPFOAの合計で50ナノグラムは、米環境保護局(EPA)の基準の6・25倍、国の食品安全委員会で評価が進めてきた食品からのPFAS許容摂取量の指標値も、欧州食品安全機関(EFSA)の60倍を超える緩い値です。しかも、日本国内の規制は、1万種類以上あると言われるPFASのうち、ストックホルム条約(POPS条約)で製造・使用が禁止されているPFOSとPFOAなど3種類のみです。これでは、高濃度な汚染も「安全」と認定され、健康調査も、汚染源の特定も、土壌調査や除染も、実施しなくてもよいことになってしまいます。
実際、こうした深刻な汚染が明らかになっても、政府は、健康影響は科学的見地が明らかでないとして、血液検査は不要とし、調査や対応にも後ろ向きです。芦屋基地では、1000人以上が働いていますが、基地で利用する水の全量を井戸水でまかない、2800ナノグラムが検出された井戸を含め、隊員の飲用や炊事などにもつかっていました。ところが、国は「科学的見地が確立していない」として血液検査は見送り、発生源も「不明」としています。
芦屋基地周辺の自治体では、住民の健康への不安とともに、こうした国の姿勢への批判の声が広がっています。
以下のことをつよく要望します。
- 芦屋基地内の地下水の流動調査などを行い、PFAS汚染の原因を究明し、周辺の自治体に報告を行うこと。特に、岡垣町の糠塚水源に関連すると思われる区域については、早急な原因究明を行うこと。
- PFAS汚染の除去費用、新たな水源井戸の確保などの対策に必要となる事業費については、全額国が負担すること。
- 県や市町村が実施する健康調査や土壌調査などPFAS対策に要する費用は、全額を国が負担すること。
- 国の責任で、水道水や農産物、海産物、地下水、土壌等の各地の汚染状況と、汚染源についての調査を行い、除染などの対策を行うこと。
- 国の責任で、芦屋基地の自衛隊員の血液検査を含め、希望した住民のPFAS汚染の健康調査をすすめること。
- PFASは、泡消火剤をつかっていた沖縄県や東京都の米軍基地周辺で、深刻な地下水や河川の汚染が明らかになり、福岡県の航空自衛隊築城基地などの井戸からも検出されてきました。にもかかわらず、芦屋基地による検査は今回が初めてなうえ、公表が結果判明から2カ月近くもたってからでした。24年12月25日の西日本新聞によると、防衛関係者は「芦屋基地はもっと早く検査するべきだった。隊員や市民の健康を最優先したとはいえない」と対応を批判し、11月下旬に連絡を受けた自治体の担当者は「(基地や九州防衛局に)公表を再三求めたのに明確な回答はなかった」と住民への周知の遅れを批判しています。なぜ検査がいまごろになったのか。また、住民への公表が、検査結果の判明から2カ月近くもたってからになったのはなぜか。回答をもとめます。
- 政府が、2024年12月24日に検査結果の具体的数値を示したのは、一部の国施設だけで、民間施設の詳細や値は示されていません。すべての検査結果を公表すること。
- PFAS等に対し国際的水準の基準値を早急に定め、健康影響の研究を進めるとともに、予防原則に則り、国際的水準に見合ったPFAS規制をすすめること。