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2015年10月24日2016年8月8日

議会と自治体2015年10月号

保険料引き下げ、多子減免制度など国保改善のとりくみ

党北九州市議 石田康高

今年度の国保料を4,984円引き下げ

2018年度から国保の都道府県化をすすめる法改正が今国会で可決され、さまざまな不安や矛盾が噴き出しています。自公政権は、そうした事態への対応として、保険者への財政支援=「公費拡充等による財政基盤の強化」として、2015年度から低所得者対策の保険者支援制度の「拡充」をおこないました。本稿では、その制度を活用した保険料引き下げについてのべます。

保険料の軽減世帯数に応じて財政支援をおこなう保険者支援制度が拡充され、北九州市は、前年度比18億2,784万円増の27億9,694万円となりました。
この増額分を活用し、新年度の一人当たり保険料は、医療分、支援分、介護分の合計で4,984円引き下げとなりました。

具体的な保険料は、医療・支援・介護分の合計で、均等割は1,730円、平等割は1,640円、所得割は0.4ポイントの引き下げ、となっています。

北九州市では、一人当たり保険給付費の伸び率を一人当たり保険料の伸び率とする方式をとっていてその方式によって、今回は4,980円の引き下げとなっています。しかし、この引き下げは不十分です。

党市議団は、負担能力を超えた保険料を引き下げるため、従来の方式を改め、さらなる保険料引き下げに努力すべきと提起し、引き続き追及しています。

北九市の国保制度の現状

北九州市の国保加入世帯当たりの基準所得は74万3,000円、政令市では最低です。一人当たり保険料は7万8,043円、基準所得に占める保険料負担率は10.5%で最悪となっています(2014年度決算)。また、所得が少ないことによる法定軽減適用世帯は63.7%に達し、負担能力を超えた保険料を滞納している世帯は2万1,292世帯(12.1%)になっています。

憲法第25条が規定する「国民の生きる権利・生存権」を医療の分野で具体化した国保制度ですが、高すぎる保険料が最大の要因となり、滞納を余儀なくされたために正規の保険証がもらえず、死亡事例を含め、悲劇を生んでいます。こうした現状のなかで、「社会保障制度である国保が、命を脅かしていいのか」と、北九州市での国保料引き下げなどを求める運動がとりくまれてきました。民商、生活と健康を守る会、社保協などを中心に、議会請願や陳情などがとりくまれてきましたが、市当局の厚い壁を突破できずにいました。

そうしたなかで、「厚い壁を突破しよう」と、党市議団は国保制度の改善を願う市民と北九州の全民主勢力と共に、これまで2回にわたる(1991年、2010年)、地方自治法にもとづく条例改正直接請求署名運動にとりくんできました。

2回の直接請求署名運動

1991年11月の直接請求署名運動では、署名収集受任者7,348人、署名数18万2,272筆(有効署名14万3,931筆)、有権者比23.72%を集め、一般会計から国保会計への繰り入れを9億8,600万円増額させました。

当時、所得割額(市民県民税×3.7)を(市民県民税×3.4)に引き下げさせました。市民県民税5万円の世帯の場合、1万5,000円引き下げとなりました。
この結果所得割賦課世帯の8割の保険料引き下げを実現しました。

2010年4月にとりくんだ「国保料1世帯平均3万円引き下げる」国保条例改正の直接請求署名運動では、署名収集受任者7,300人、署名数11万6,699筆(有効署名は10万1,028筆)、有権者比15%を集めました。直接的な成果はなかったものの、本会議において、「今後とも保険料引き下げに努力する」との市長答弁を引き出しました。

こうした運動は、国保制度の改善を勝ちとるとともに、どんなに厚い壁があっても住民運動で打ち破れることを参加者が体験し、その後の要求運動をとりくむ確信になったことも大きな成果だと言えます。

多子減免制度実現の経過と内容

北九州市は、2006年度に保険料賦課方式を見直し、所得割の計算方法を市県民税方式から所得比例方式に変更しました。
市県民税方式ならば扶養控除がなされますが、所得比例方式では基礎控除のみなので、扶養家族が多ければ多いほど、所得割額が増えます。
行政の都合で賦課方式を変更し、所得は変わらないのに所得割保険料が増えることは矛盾であり、その対策として、党市議団は多子減免制度の創設を提案しました。

その提案が実り、2008年度から実施されているのが、多子減免制度です。

◆多子減免制度の対象となる世帯(次の①~③をすべて満たす世帯)

①国保の同一世帯に18歳未満の子ども等を2人以上扶養する世帯。
②世帯の前年の総所得金額等が300万円以下の世帯。
③所得割額が賦課されている世帯。

◆減免額

「子ども2人目から、一人当たり最高33万円に所得割料率を乗じて得た金額」を所得割額から減免します。

〈モデルケース〉
夫婦と18歳未満の子ども2人の4人世帯の場合
世帯主:前年所得額230万円
配偶者:前年所得額所得なし
子ども:2人

〈減免の計算方法〉
「33万円×(18歳未満の子の人数-1)×所得割料率」の額を所得割額から減免。所得割額よりも減免額が大きい場合は、所得割額の全額を減額。減免は医療分・支援分・介護分すべてが対象です。

減免前保険料の計算例(医療分)

均等割① 2万140円×4人=8万560円
平等割② 2万6,150円
所得割③ (230万円-33万円)×7.50=14万7,750円

保険料年額 25万4,460円(①+②+③)

減免後保険料計算例(医療分)

多子減免額④ 33万円×(2人-1人)×7.50%=2万4,750円

減免後の保険料 22万9,710円〔①+②+(③-④)〕

◆減免実績

2010年度(4,785世帯) 1億5,486万1千円
2011年度(4,729世帯) 1億5,767万2千円
2012年度(5,717世帯) 1億8,547万5千円
2013年度(4,943世帯) 1億8,361万2千円
2014年度(4,634世帯) 1億7,649万5千円

多子減免の内容、実績は以上です。

さらに子どもが多い世帯には均等割減免が必要であり、その実現が求められます。
国保料の引き下げ、国保制度の改善は、市民の健康と命を守る重要な課題です。市民、市民団体との共同をさらに広げ、引き続き実現へのとりくみをすすめます。

同時に、来年夏の参議院選挙、引きつづく市議会議員選挙での勝利をめざし、奮闘する決意です。

みなさんの声をお聞かせください