2015年8月24日2016年8月8日
議会と自治体2015年8月
「保守の牙城」にひろがる“戦争反対”の共同
党福岡県委員会自治体部長・政策論戦宣伝部長 吉武秀郷
昨年12月の衆院選で、県内11小選挙区のすべてを自民党が制した福岡県。しばしば「保守の牙城」と呼ばれる当地でも、「戦争法案反対」の共同は、支持政党の違いを超えて急速なうねりとひろがりを見せています。
3市8町議会が「撤回」求める意見書を可決
福岡県では戦争法案(安保法制)の「撤回」、「慎重審議」を求める意見書を、6月議会で次つぎと可決しています。6月12日に福岡市に隣接する粕屋町議会が「国民的合意のないままに安全保障法制の見直しを行わないよう求める意見書」を全会一致で採択したのを皮切りに、大刀洗町議会、うきは市議会、宇美町議会、みやこ町議会、苅田町議会、志免町議会、吉富町議会、中間市議会、筑前町議会、嘉麻市議会の3市8町で可決・採択されました。3月定例会で「集団的自衛権の行使容認に反対する意見書」を可決した久山町を加えると、県内60市町村の2割にあたる地方議会が、「戦争法案」に反対もしくは懸念の意思をしめしたことになります(7月1日現在)。
これらの議会では、日本共産党議員のよびかけにこたえ、党派を超えた共同が成立し、その共同が多数派を形成したというのが、従来にはなかった大きな変化です。
■ 保守議員も「廃案にさせるまでデモや集会を」
苅田町の保守系町議M氏は、「しんぶん赤旗」(7月3日付、西日本のページ)に実名、顔写真入りで登場し、「私は基本的に自民党を支持していますが、住民の命と財産、くらしを守る責任から、国民の理解を得られていない中での強行は認めるわけにはいきません」、「この間、国民の中で大きく反対運動が盛り上がり、政権の支持率も下がり始めています。自民党の中でも良識ある人たちが声を上げざるを得ないように、一度、廃案にさせるまでデモや集会がもつと広がってほしい」と声をあげました。
また、同じく実名・顔写真入りで登場した、うきは市議会副議長のT氏は、「自衛隊の戦地派遣がやがて徴兵制につながり、戦前の軍国主義と似たようなところまで追い込まれるとの危惧もあって当然です」と、議会で意見書の賛成討論に立った心中を吐露しました。
安倍政権による立憲主義の否定が、この国の平和と民主主義を根底から覆そうとしているそんな「危機感」が、従来なかった共同を急速にひろげています。
肌で感じる「戦時態勢」の恐怖
戦争法案の審議と軌を一にして、福岡県では、「戦時態勢」の恐怖を実感させる二つの「事件」が発生しました。
ひとつは、陸上自衛隊が新型輸送機オスプレイの配備をねらっている佐賀空港周辺(福岡県柳川市を含む)で、4月24日、防衛省が自衛隊ヘリによる騒音測定試験飛行をおこなったことです。もうひとつは、福岡県が国民保護法にもとづいて、県内すべての私学にたいして6月上旬に発送した「ミサイル攻撃避難施設の設置に関する照会」です。いずれも、「戦争準備」としか理解しようのない暴挙が相次ぎました。
■ オスプレイ配備計画への怒り
前者のオスプレイ配備計画は、陸上自衛隊が米国から十七機を購入・常駐させるだけにとどまらず、政府・防衛省が佐賀空港を米軍オスプレイの本土の訓練拠点にしたいとの意向を持っていることが、佐賀空港に隣接する福岡県でも大問題になっています。
党福岡県議団は、7月1日の県議会一般質問で、山口律子県議がこの問題を取り上げました。戦争法案については「(国会の)動向を注意深く見守ってまいりたい」としか答えない小川洋知事も、オスプレイ配備問題にかんしては「①県内での飛行頻度と飛行時間、②県内の飛行経路における高度と騒音の程度、③県内のノリ養殖にたいする影響、などについてさらに具体的にしめすよう、再三申し入れをおこっている」とのべざるを得ない状況です。
ちなみに、オスプレイが配備された場合の飛行ルートにあたる柳川市は、自民党の元副総裁・山崎拓氏らとともに「戦争法案反対」の声をあげている古賀誠・自民党元幹事長の現役時代の選挙区です。
■ 幼稚園も「ミサイルに備えよ!?」
後者の「国民保護計画」にもとづく福岡県私学振興局による県内全私学への「照会」(アンケート)も、県民に衝撃を与えました。
「有事」のさいには「ミサイル攻撃や航空攻撃の際に、爆風等からの直接の被害を軽減するための一時的な避難(退避)を行う場所」が必要だから、私立幼稚園・小中高校の施設を提供することが可能かどうか答えてほしい、と県が求めたのです。
「なぜ、この時期に」という県議会での党県議団の追及にたいし、小川知事の答弁は、「他県の状況をふまえ、今回、私立学校についても調査をおこなった」(7月1日)と、はぐらかすばかりでした。高瀬菜穂子県議は、「なんらかの力がはたらいているのではと、教育現場が戸惑うのは当然。戦争法案の危険性が改めて浮き彫りになった」と、メディアのインタビューで強調しました。
福岡県内には、米軍板付基地をはじめ、日米共同訓練にも使用されている航空自衛隊築城基地、同・芦屋訓練基地、空自・陸自春日基地、陸自久留米駐屯地(幹部候補生学校併設)など、軍事拠点が多数存在します。「もし避難施設に手を挙げたら、ここが攻撃目標にされる」(私立幼稚園園長)という不安は大きく、県に「協力する」と答えた施設は「ゼロ」でした。
県段階でも垣根を超えた多彩な共闘
党福岡県委員会は、岡野隆県委員長を先頭に、志位和夫委員長の論戦パンフレット『戦争法案の核心をつく』と、国会論戦ダイジエストDVD、新しい「しんぶん赤旗」号外ビラを持参し、各種団体に訪問・申し入れ行動を展開しています。
連合加盟労組や県弁護士会など多くの訪問先で歓迎を受けながら、懇談をすすめ、共同を探求しています。「集会とパレードが成功。今後も共同を」(弁護士会)、「私も東京の『総がかり行動』に参加した。めざすところはいっしょです」(教職員組合)、「『この法案はダメだ』と大会に向けて全職場を回っている。正念場だから気合を入れている」(自治体関係労組)など、従来の垣根を超えて戦争法案の廃案へ力を合わせようという機運が、かつてなく強まっています。
女性、若者、医療関係者、商工業者、弁護士、研究者など、分野ごとのデモや集会などの共同行動も、めまぐるしく開催されています。
これからが正念場
国会では、政府・与党が強行採決の構えを見せるなど、たたかいは緊迫の度を増しています。福岡県でも戦争法案を許さない圧倒的世論を形成し、廃案に追い込むために、党の存在意義をかけ、草の根から知恵と力の限りをつくす―まさに、これからが正念場です。