
日本は、子どもと親に「冷たい国」です。
政府の国際調査で、日本は国民の過半数が「自分の国は子どもを産み、育てやすい国だと思わない」と答えた唯一の国です。その理由は、教育費が高すぎること、雇用が不安定なこと、子どもを産み育てることに対する社会の理解がないことなどです。教育費が完全無償で、親の働き方が安定しているスウェーデンでは、97%が「自分の国は子どもを産み、育てやすい国だと思う」と回答しているのと対照的です。
ユニセフの調査(2020年)では、日本のこどもの精神的幸福度は、先進国38カ国の中で下から2番目でした。「今の生活に満足している」と答えた15歳の割合が62%と低く、15~19歳の自殺率も、平均を上回っています。
日本が子育て・子どもに「冷たい国」になっている最大の責任は、政治にあります。
第一に、子ども・子育ての予算を低水準のまま放置してきたことです。
日本は、家庭予算も教育予算も、GDP(国内総生産)比でOECD加盟国の平均以下で、高学費、多人数学級、劣悪な保育条件、子どもの貧困などが改善されないままになっています。
日本における「子どもの貧困率」(国の平均的所得の半分以下の所得しかない家庭で育つ18歳未満の子どもの割合)は、2018年時点で13・5%。約7人に1人の子どもが貧困状態です。なかでもひとり親世帯の貧困率は48・1%と、半数の子どもが貧困状態です。いずれもOECD加盟国で最悪レベルです。
親の経済的な格差が子どもの教育格差につながる「貧困の連鎖」が以前から問題になってきましたが、実質賃金の低下、世界一高い教育費、消費税増税、社会保険料引き上げ、コロナ禍、諸物価高騰などでますます深刻になっています。
20~39歳の男女に尋ねた内閣府の調査では、子育てで不安に思うことのトップは「経済的にやっていけるか」で63・9%。夫婦の年収400万円未満だと78・2%。同調査の「子どもがほしくない理由」の上位3つは教育費、育児費など経済的な理由でした。
子どもの貧困が拡大し、日本が「子ども生み、育てることが大変な国」になってしまったのは、もともと子育ての負担は重いものなのに、政権与党が、「育児は基本的に家庭の責任である」として、政治の責任を果たしてこなかったからです。
日本の教育予算の水準=公財政教育支出の対GDP比は2・8%で、OECD諸国のなかで最低で、加盟国平均の7割しかありません(OECD データは2018年)。平均まで引き上げれば、教育費の負担を半減できます。
第二に、子どもの権利の保障をおこたってきたことです。
日本政府は、国連子どもの権利委員会から、子どもの権利の保障が不十分だという勧告を繰り返し受けています。「教育制度の過度に競争的な性格」が「子どもの肉体的および精神的な健康に否定的な影響を及ぼし、子どもの最大限可能なまでに発達することを妨げている」(2004年)、「自己に関わるあらゆる事柄について自由に意見を表明する子どもの権利が尊重されていない」(2019年)など、子どもをめぐる制度の根幹に対する厳しい評価が示されています。
ところが、日本政府はそれらを無視し続け、何も変えようとしてきませんでした。社会問題となった校則ですら、政府は「子どもの意見表明権の対象外」だと答弁しているのです。背景には、政権党の自民党のなかに、いまだに「子どもに権利などとんでもない」という古い考えが残されているという問題もあります。
子どもの個人の尊厳を尊重した、子どもの声にていねいに応える教育でこそ、子どもたちは豊かに育ちます。そのためには、一人ひとりに目が届く教育条件と、子どもの状態に応じて教育をすすめられる自主性が欠かせません。
また、先進国でワーストレベルの、日本における「子どもの貧困」が広がるなか、多くの国民が、幼児教育から大学教育まで誰もがお金を気にせず教育を受けられるようになることを願っています。「持続可能な開発目標」(SDGs)も「質の高い教育をみんなに」をかかげ、無償教育の拡大を強調しています。
ところが、歴代の自公政権は、世界最低の水準の教育予算を放置する一方で、過度の競争と管理を教育に持ち込むという、最悪の教育政策を続けてきました。その結果、日本の教育はどうなったでしょうか。
重すぎる教育費負担は学生を苦しめ、親世代が子どもを産むことをためらう最大の要因にもなっています。学校現場は多忙化がとまらないうえに教育の自主性が損なわれ、教職員は疲弊し、教員のなり手がみつからない「教員不足」が社会問題になっています。1クラス20~30人が当たり前な欧米諸国にたいし、日本では中学高校は40人学級、小学校もようやく35人学級です。不登校の子どもの割合は「安倍教育改革」の8年間で2倍近くに増え(2012年1・09%/2020年2・05%)、本当は学校に行きたくないなどの隠れ不登校は5人に1人にのぼると推計されています(2018年、NNK調査)。テストの点を一点でもあげることを優先する全国学力テストなどの競争教育で、子どもも教員も疲弊しています。
「下着や靴下の色は白」「ツーブロック禁止」などの校則のあり方が社会問題となりました。理不尽な校則に象徴される過度の管理教育は、子どもを人間として傷つけ、教員も苦しめています。子どもの尊厳と権利にかかわる問題であり、教育に必要な子どもと教職員の信頼関係を損なうことも憂慮されます。
日本共産党は2021年春に校則アンケートを実施し、中高生・保護者・教職員・市民約3000人の声を聞いてきました。多くの中高生は、頭髪や服装などを細かく指定する校則に「監視されているようで窮屈」と答え、人間として深く傷つけられていることを訴えています。保護者・教職員・市民の90数%が校則の見直しに賛成でした。今こそ、校則の抜本的な見直しに踏み切る時です。
憲法上、子どももおとなも、頭髪や服装をじぶんで決める自由をもっています。子どもの権利条約は学校の規律について「学校の規律が児童の人間の尊厳に適合する方法で及びこの条約に従って運用されることを確保するためのすべての適当な措置をとる」(28条2)と定めています。
文部科学省の生徒指導に関する基本文書『生徒指導提要』は、校則や学校の規律に関して、子どもの尊厳や人権には一言もふれていません。校則を「社会規範の遵守」と位置づけ、校内規律に関する指導の基本を「規範意識の醸成」としています。これでは人権を著しく制限する校則でも、”規範だから遵守させよ”と言っているようなものです。『生徒指導提要』を、子どもの尊厳と基本的人権の尊重を土台とするものにして、校則に関する国の姿勢を改めるべきです。
経済的に苦しくなったとき家計で切り詰められるのは食費です。貧困が原因で、朝ごはんぬきで学校に登校、両親が働いているため家で1人きりのコンビニ弁当――食事難や孤食と称される実態が広がっています。「子どもの貧困」が社会問題になるなかで、親が経済的に困窮し食事も満足に取れない子どもたちに対して、無償で食事を提供する「子ども食堂」が活発化するとともに、学校給食の役割がますます重要になっています。
憲法26条第2項で「義務教育は無償」と定めているにもかかわらず、公立小中学校に通う子どものいる保護者の年間負担額は、小学生1人約10万円、中学生で同約18万円もあります。その費用のなかで大きな割合を占めているのが学校給食費です。ところが、自公政権は、憲法がいう「義務教育の無償化」の範囲は授業料と教科書だとして、学校給食の無償化に背を向けています。
福岡県の公立学校における学校給食費平均月額は、小学校で月3967円=年4万7604円、中学校で4632円=年5万5584円で、10年前よりも小学校8・9%、中学校8・5%値上がりし、貧困家庭には大きな負担となっています(文部科学省「2018年度学校給食費調査」)。
コロナ前に文部科学省が調査、発表した「2017年の学校給食費(食材費)の無償化等の実施状況及び完全給食の実施状況」では、1740自治体のうち学校給食費の無償化を実施している自治体は、小学校・中学校ともに無償化を実施しているのが76自治体(4・4%)、小学校のみ無償化が4自治体(0・2%)、中学校のみ無償化が2自治体(0・1%)にとどまっています。このとき福岡県内では、無償化を実施した市町村はありませんが、一部無償化・一部補助を実施しているのは18市町村で、全国平均24・4%を上回る30%ありました。
無償化に踏み切っている自治体の多くが町村(71自治体=93・4%)で、かつ人口1万未満の自治体(56自治体=73・7%)です。同調査で文部科学省は、学校給食費の無償化が人口が多い自治体ですすまない進まない理由として、予算の継続的な確保が困難なことにあるとしています。
しかし、近年都市部の自治体でも無償化を実施するところが生まれてきました。2020年4月に兵庫県明石市の全13中学校で、中核市レベルで初めての学校給食費の無償化が実施されました。そのために同市は、新たに約3億5000万円の負担を計上しています。財源は、同年10月から国の幼児教育・保育の無償化で市の財政負担が年間約7億5000万円減った分の一部をあてました。
東京都葛飾区は9月7日、区立小・中学校の給食費の完全無償化を2023年度当初予算案に盛り込むと発表しました。所得制限を設けない学校給食の無償化は23区で初めてです。対象は区立の小学校・中学校・特別支援学校計74校に在籍する計約2万9000人の児童・生徒です。
そして、都道府県単位では初めて、千葉県が、公立の小中学校や県立学校に通う第3子以降の児童・生徒の給食費を2023年1月から無償にします。県内全体でおよそ4万5000人が対象になる見通しです。食材価格が高騰し、家計が圧迫されている子育て世帯の負担軽減につなげます。公立の小中学校の場合、市町村と経費負担を半額ずつ折半する。政令市の千葉市は県が4分の1、市が4分の3を負担。県立の中学校や特別支援学校は県がすべて負担します。
物価高騰のもとでの給食費負担の軽減を求める国民の声を無視できず、文部科学省は2022年9月9日、物価高騰等に対応した学校給食費の保護者負担軽減に向けた取組状況について公表しました。
学校給食費の保護者負担軽減を実施または実施予定の自治体は83・2%にのぼり、うち臨時交付金を活用または活用予定の自治体は77・3%でした。回答数は1793自治体(事務組合含む)。
学校給食費の保護者負担軽減に向けた取組みを「実施している」のは679自治体(37・9%)、「実施を予定している」のは812自治体(45・3%)で、全体の83・2%にあたる1491自治体が実施または実施を予定していました。実施自治体のうち「臨時交付金を活用している」のは54・8%、実施予定のうち「臨時交付金の活用を予定している」のは96・2%となり、実施・実施予定のうち77・3%が臨時交付金を活用・活用予定としました。
一方、「実施を予定していない」と回答したのは302自治体(16・8%)。うち、284自治体は「現時点で学校給食費の値上げを行う予定がない」としており、実施・実施予定の自治体とあわせると、実質保護者負担を行っていない自治体は1775自治体(99・0%)にのぼりました。
その他、「今後値上げを予定しており保護者負担の軽減については対応を検討する」3自治体、「学校給食費の値上げを行ったが、子育て世帯への給付金の支給事業を行う予定で重複する取組みとなるため」1自治体、「軽微な学校給食費の値上げのため等」14自治体となっています。
文部科学省では、自治体等関係者へ取組状況を周知し、引き続き、学校給食費の保護者負担軽減等に向けた取組みを促すとしています。日本共産党は、小中学校の給食費の無償化を一貫して提案してきましたが、この5年間で無償化する自治体が約3倍に広がり、全国223自治体が実行しています。吉良よし子参議院議員の質問に、岸田首相は、「(学校給食費を)自治体等が補助することを妨げるものではない」「無償化については、自治体において適切に判断すべきもの」と答弁しています。
自公政権は、子どもの医療費助成を国の制度とすることを一貫して拒否しています。すべての市区町村が、子どもたちの命と健康を守り、子育てしやすい社会環境をつくるため、独自の財源で子どもの医療費を助成し、無料化をしています。しかし、年齢、所得制限など、助成の内容は自治体ごとに異なります。
県内60市町村では、助成対象年齢は、入院・通院とも18歳までが7自治体、入院が18歳までで通院が中学3年までが3自治体、残る50自治体は入院・通院とも中学3年までです。県が中学3年まで助成対象を広げたことで、市町村の助成対象年齢がそろってひろがりました。
また、医師不足による小児科病棟の休止、病院の閉院、救急医療施設の減少は、地方でも都市でも深刻です。出産できる病院・診療所も激減したままです。
国による初の全国調査「子供の生活状況調査分析報告書」(2021年)によれば、世帯構成員の生活水準を表すよう調整した等価世帯収入の水準が中央値の2分の1未満に該当する貧困世帯はひとり親世帯で50・2%に上り、調査対象の約25%が現在の暮らしの状況について「苦しい」「大変苦しい」と回答しています。
田村貴昭衆院議員の質問に、内閣府は「コロナ禍での困難な状況を示すもの」と認めました。ところが、貧困層への支援制度の活用は、就学援助58%、児童扶養手当46%、生活保護6%にすぎません。とくにシングルマザーの多くは生活保護の受給経験がなく、コロナ禍でも求職活動をしています。
次の時代をつくる子どもたちが貧困と格差を経験して「僕たち、私たちはダメなんだ」となれば、次の社会も貧困は続きます。
2014年1月施行の「子どもの貧困対策の推進に関する法律」を受けて、「子どもの貧困対策」に真正面から向き合い、取り組んできだ沖縄県の姿勢に学ぶべきです。歴代自民党政権は、本当にひどい沖縄の貧困問題を長年放置し、貧しさを利用して札束で基地を押しつけ、平和で、誇りある豊かさを奪ってきました。
2014年の県知事選で勝利した故翁長雄志氏は、公約の柱に据えていた「子どもの貧困対策」を本格的におし進めました。都道府県レベルで初めて県独自の子どもの貧困率を算出し、全国の倍の3人に1人の子が貧困であるという現実に立った上で、さまざまな施策を着実に実行しました。県当局が各市町村を説得し、協力を得て世帯の所得情報など市町村が持つ生のデータを、個人情報を除去した上で活用するという全国初の試みで、精度の高い「子どもの貧困率」が得られました。
こうして子どもの貧困を可視化し、県政の主要課題に据え、「なんとかしなければ」との思いを県民全体に浸透させました。県は2016年3月に6年間の「県子どもの貧困対策計画」を策定し、「子ども未来政策課」の設置、「県子どもの貧困対策推進基金」(30億円)の創設に取り組みました。知事を会長とする県民運動組織「沖縄子どもの未来県民会議」を立ち上げ、基金を含め、2016年度は162億円、17年度175億円、18年度187億円と、子どもの貧困対策の予算を増やしています。
沖縄県はまた、2015年度から「小中学生調査」「高校生調査」「未就学児調査」を行い、施策に反映。テレビコマーシャルなどで就学援助の広報を徹底し、市町村の就学援助の拡充に4分の3を補助することを始めました。
放課後児童クラブ利用料の5千円程度の軽減や、低所得世帯の高校生の通学費の負担軽減措置としてモノレール運賃を半額にすることを実施。10月から一人親世帯の高校生のバス通学費の半額補助を開始します。同月に県内全域で未就学児の医療費の窓口無料化も始まりました。
年収400万円以下の世帯を対象に、県外進学のための給付型奨学金制度(月額7万円、入学支度金30万円)を創設。35歳未満を正社員として雇った企業に1人当たり60万円の助成金を支給する「正社員雇用拡大助成金事業」も行われました。
翁長氏のあとを継いだ玉城デニー知事は、引き続き「子どもの貧困対策」を最重要政策に掲げ、翁長県政で設定した子どもの貧困対策計画を着実に実施し、行政と民間の幅広い支援態勢を構築しました。
沖縄県が2022年5月に決定した今後10年の沖縄の方向性を示す振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」でも、子どもの貧困は「自己責任論ではなく、社会全体で取り組むべき問題」と位置付けるなど、自己責任論を振りかざす自民党政治から県民を守ってきました。
2022年度からは、すでに実現していた就学前までの通院・入院費と中学卒業までの入院費無料に加えて中学卒業までの通院費も無料化し、県内全41市町村で中学卒業まで医療費の窓口負担のない「現物給付」が実現しました。
デニー県政では、翁長県政が2016年に30億円を積み立てて創設した、「県子どもの貧困対策推進基金」を活用し、就学援助の認定基準の緩和など拡充が進みました。就学援助の受給者数は仲井真県政下の11年度に比べ20年度は8367人増の3万5261人、就学援助率は5・8%増の24・1%に拡大しています。
デニー県政は切れ目ない子どもの貧困対策のため、同基金の期間を延長。前年度までの残高に今年度の予算で約57億円を積み増し、過去最大の60億円規模にしました。
少人数学級も推進し、1人当たりの児童・生徒のために使われる教育費も拡大しました。今後、中高生のバス通学無料化をすすめ、子どもたちが安心して放課後を過ごせるよう「放課後児童クラブ」の公的施設への設置を推進、母子を孤立させないよう母子保健と子育て支援が一体となった「子育て世代包括支援センター」を全市町村に設置します。また、子どもの医療費助成のさらなる拡充に取り組みます。
「子どもの貧困」を解決するには、若い世代の雇用・賃金の立て直しとともに、子育て世帯の困窮を解決し、くらしと育児を応援する総合的な対策が必要です。
就学援助とは、「経済的に就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない(学校教育法第19条)」とする制度です。就学援助によって、学校給食費をはじめ、学校で必要な文房具・楽器などの学用品代や、クラブ活動費、PTA会費が支給されます。経済的な困難をかかえる子どもに義務教育を保障するための命綱です。
福岡県における就学援助の対象となる「要保護及び準用保護児童生徒数」(2019年度)は、9万152人(6008人増) です。これは公立小中学校の全児童生徒に占める割合は22・2%(1・6ポイント増)で、5人に1人に当たり、全国平均の14・5%よりかなり高い水準です。
自公政権は、「子どもの貧困」が深刻なときに、制度への国庫負担を廃止し、各地で就学援助の縮小を引きおこしました。
沖縄県が2018年度に行った子どもと家族の生活実態を調べる小中学生調査の中間報告で、就学援助の利用率は小1の困窮層で15年度調査から15ポイント上昇して49・8%となったものの、いまだ半数は利用できていないことが明らかになりました。
就学援助を利用していない理由として、小1の困窮層は「制度を知らなかった」が15年度の23・1%から9・8%に半減し、利用率の伸びは、周知広報事業に力を入れた成果と見られています。「テレビやラジオのCMで制度を知った」とする割合は他学年より高く、初めて制度を利用する小1の親により効果的だったと見られています。
就学援助制度の周知は市町村によりバラツキがあり、就学援助制度を知っていても手続きの煩雑さ、貧困家庭であることを知られたくないという思いから、申請にいたらないケースがあります。そのため、同制度を必要とする子どもたちに、サービスが届いていない可能性があります。沖縄県では、テレビやラジオ等を通して県民に広く制度の周知・広報を行うテレビのCM放送(180本)ラジオのCM放送(144本)を行ったほか、市町村共通リーフレットの作成・提供・配布し、その他コンビニ内広告、求人広告誌広告掲載等就学援助制度の周知広報を行っています。
テレビCMは、県のHPでもみることができますが、「学校へ行こう」篇、「できること」篇、「子供の権利」篇、「学ぶために必要なもの」篇と4種類あり、就学援助は権利であることを強調し、利用をよびかけています。同時に、市町村が、「就学援助の充実を図る事業」を実施し、事業では、就学援助の認定基準の見直し、対象費目や単価等の拡充を行ったほか、保護者等へ周知を図るための事業を行いました。
ひとり親世帯は142万世帯にのぼっています。先の内閣府の子どもの貧困調査で現在の暮らしについて「苦しい」「大変苦しい」と合わせたひとり親世帯は51・8%、母子世帯の割合は53・3%にのぼります。「食料が買えなかった経験」があったとする割合は、ひとり親世帯は30・3%、母子世帯では32・1%です。物価高が押し寄せ、さらなる暮らしを圧迫する事態が起きており、困窮世帯への支援の拡充が必要です。
子どもたちに食事を無料・低額で提供する子ども食堂や、生活保護世帯の子どもたちの学習を支援する無料塾の取り組み、食料支援やフードバンクの取り組みが広がってきました。コロナ禍で一層貧困化が進む事態にもなり、困窮する子どもや学生たちを見捨てられないと、感染対策を徹底し工夫をして取り組みを広げています。
コロナ禍で、家庭に居場所を失った子どもたちからの相談が急増しています。こうしたなか、子どもたちが、性的搾取の被害に遭うことを防ぐために、民間団体が必死の努力も行われています。
日本共産党は、高校の完全無償化をめざして、公私ともに所得制限のない授業料無償化、授業料以外の負担の軽減をすすめます。沖縄県は、低所得世帯の中高校生へのバス通学費支援事業(バス・モノレール通学費支援)を行っています。
2021年度の学費は、国立大学(標準額)で入学金28万2000円、年間授業料53万5800円。私立大学(平均額)は、入学金26万2026円、年間授業料95万8749円。専門学校の初年度納付金は、平均125万5000円。入学を辞退しても返ってこない「入学金」という理不尽な制度があるのは日本だけです。
「バイトがなくなりお金がない」「1日1食」など、コロナ禍で多くの学生が食事にも事欠くような困窮に陥りました。高い学費と劣悪な奨学金制度のために、アルバイトをしないと学生生活が成り立たない現状を、コロナ危機が直撃したのです。日本民主青年同盟が県内各地で繰り返し行なっている食料支援は、「返済不要の奨学金の拡大」や「学生への給付金の支給」を求める声が多く寄せられています。
教育の分野も日本の経済力にふさわしい予算がつかわれていないのが一番の問題です。日本の教育への公的支出は、OECD加盟国で比較可能な38カ国中37位(2020年9月 OECD発表)で、先進国最低水準です。GDP比で先進国最低の教育予算をせめて先進国平均くらいまで増やせば、学校給食の無償化や学費の半減などはすぐに実現できます。
子育て世代の教育費負担をこれだけ大きく軽減したら、その分が他の消費にまわります。これらのこと全体が県内経済を押し上げる大きな力となります。
奨学金を利用する学生が増えており、学生支援機構の奨学金を利用している学生は、およそ2人に1人、平均の借入総額は324万3000円、月々の平均返済額は1万6880円、平均返済期間は14・7年です。
「奨学金返済の負担で、将来設計もできない」―――卒業後の返済が長期に渡るため、結婚、出産をためらう声が少なくありません。返済が滞って、保証人である家族や親せきを巻き込むケースも多発しています。
多くの若い人が奨学金という名の多額の借金を背負って社会に出る異常な状態をただすことは、学生にとって相対的に賃金が低い“地方で就職する選択肢”を広げることにもなります。そして、教育費の負担軽減は、「子どもの貧困」と少子化の克服にもつながります。
※参考資料
今野晴貴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。9/17。
――「一人で生きていくので精一杯」「ブラック企業でも奨学金返済のために辞められない」「結婚も子育ても諦めた」「自分が死ねば借金なくなるかもと考える」「ダブルワークで休みなく働いて借金返済している」「普段の仕事では賄えないので、過去に風俗で働かなければならなくなった」
これらは「日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金を現在借りている・借りたことがある方へのアンケート調査」に寄せられた奨学金返済をしている若者たちの「生の声」です。
若年世代は、不安定な雇用や上がらない賃金のなかで、子育て、高い教育費や住宅費の負担、親の介護など様々な重荷を背負わされており、経済的に結婚や出産を諦めなければならない状況が広がっています。そこに拍車をかけているのが、本来、若者の学ぶ環境を保障するはずの奨学金制度です。海外では「奨学金」といえば返済の必要がない給付を意味するが、日本ではそのほとんどが借金です。
昨今、この奨学金制度は社会問題として認知されるようになってきました。自己破産した当事者の連帯保証人・保証人になっていた親や親戚にまで債務が連鎖し、「家族破産」に追い込まれるケースが増えてきているのです。
さらに、今年に入ってからは、日本学生支援機構が半額の支払い義務しかない保証人に全額を請求していたことが問題となり、札幌地裁で「過払い分が不当利得と認識しながら支払いを受けた『悪意の受益者』」と指摘されるなど、奨学金のあり方が社会的に問われています。
こうした状況のなかで、Z世代の若者たちが、「奨学金帳消しプロジェクト」を立ち上げ、2022年6月から「#奨学金返せない 「奨学金」という名の債務の帳消しを求めます!」とのオンライン署名を開始。すでに31874筆(9月15日現在)が集まっており、返済に苦しむ若者たちの多さを物語っています。
さらに彼らは、2022年7月9日からは、Google formを用いたオンライン形式で調査を開始。こちらも反響は大きく、回答数は現在までに3121件(2022年9月15日時点)に上っています。
この調査の特徴は、20代から30代までの「奨学金返済中」の若者たちが多数回答している点。これまでは自己破産するほど追い詰められるまで支援団体や弁護士とつながることができず、返済している人たちがどのような困難を抱えているのかは十分に明らかにされてきませんでした。寄せられた回答からは、自己破産にまで至らなくとも、奨学金返済がいかに彼ら彼女らの人生の重荷となり、その可能性を剥奪し、社会的排除を生み出しているかが読み取れます。
利用者は拡大傾向にあり、大学・短大に通う学生のうち奨学金制度を利用しているのは、2004年度の4・3人に1人(23・3%)から2019年度には2・7人に1人(36・5%)まで増加しました。この背景には、①高卒での就職困難と大卒との学歴格差の拡大を背景にした大学進学率の増加、②高額な学費負担、③平均所得の低下による親世代の教育費負担能力の低下が指摘されています。
こうした状況に対して、日本学生支援機構は、有利子である第二種奨学金が、無利子である第一種奨学金の貸付額・人員を上回り、「利子付きの借金」を拡大することによって対応してきました。(ただし近年では、第一種奨学金の利用条件が緩和されたことで、第二種奨学金の利用者が減少傾向にはある)。
労働者福祉中央協議会が行った「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」(2019年3月)によると、日本学生支援機構の奨学金利用者の平均借入総額は324万3000円にもなり、借入総額500万円以上の割合も12・4%に上っています。大学を卒業した時点でこれだけの借金を抱えて社会人としての生活がスタートするのです。
返済は、とくに返済猶予などの手続きをしなければ、卒業した年の10月ごろからはじまります。毎月の返済額の平均は16880円。新卒の初任給20万円程度からこの金額の返済はかなりの負担です。
日本学生支援機構は、返済が困難な状況にある者に対して、以下の4つの「救済制度」を設けていますが、その内容は充実しているとは言えません。
返還免除。これは、「死亡、精神・身体の障害によって返還ができなった場合」であるなど、適用条件が厳しい。
返還猶予。これは、通算10年を越えてしまえば、どんなに経済的に返済が困難な状況であっても返還を求められる。
減額返還制度。これは、月々の返済額を減らすことができるが、総額は代わらない。
所得連動返還型奨学金制度。これは2017年度以降創設されたものだが、返還月額が卒業後の所得に連動する方式であり、2017年度以降の申込者と第一種奨学金のみに限られている。
救済策が不十分な一方で、返済の「取り立て」はかなり厳しい。延滞が2ヶ月続くと延滞金が発生し、3カ月以上になると信用情報に延滞情報が登録され「ブラックリスト」に載ることになる。一度登録されると借金を返済しても5年間は信用情報に残り、クレジットカードやローンなどの利用が困難になってしまいます。
延滞が9カ月以上になると、日本学生支援機構から通知書がきて、返済の意思を示さなければ法的処置に移行していくことになる。2021年度には、JASSOによる支払い督促申し立て予告が13393件、支払い督促申し立てが6297件ありました。
また、延滞が9カ月を超えた時点でJASSOは一括返済を請求する。そのため、奨学金に関する自己破産件数は2016年度までの5年間で延べ1万5338人にも上る。このような自己破産件数について、日本学生支援機構はホームページで「奨学金返還者における自己破産の割合は、日本全体における自己破産の発生割合とほぼ同水準であり、特別高いわけではありません」と述べています。
しかし、そもそも「奨学金」を名乗るにもかかわらず、日本全体における自己破産の発生割合とほぼ同水準でよいのだろうか?
さらに、財産等を差し押さえる強制執行の件数も増加している。強制執行は2008年度には13件に過ぎなかったが、2015年度には498件へと増加し、その後も毎年300件程度で推移しています。
なぜこうした状況が広がってきているのだろうか。そもそも18歳の時点で多額の借金を背負わせる奨学金制度は、大学に進学すれば安定した雇用を得られること、要するに「学生の未来を担保」にすることが前提となってきた。しかし、いまや安定した雇用が得られる保証はないのです。
たとえ正社員として就職できたとしても、若者を使い潰すいわゆる「ブラック企業」が社会問題化している。過酷な労働環境に耐えられず、非正規雇用になれば低賃金・不安定が常態化し、キャリアアップも困難です。そこに奨学金返済が重くのしかかってきており、人生設計に大きな影響を与えています。
こうした高度成長やバブル経済時代を前提とした制度設計の問題は、繰り返し指摘されてきた。しかし、根本的な改革はなされず、今日に至るまで若者を苦しめ続けています。
ここからは、冒頭で紹介したアンケート調査に寄せられた回答から、奨学金を返済する若者たちが実際にどのような困難を抱えているのか。まず見えてくるのは、低賃金のなかで返済しなければならず、心身を消耗していく若者たちの姿。
――「新卒で入った会社で手取りが安く(11万くらい)、初めての一人暮らし で返済もあり、食費を削って心身共に壊した。もっと賃金が上がれば良いのだが、その前に身体を壊して働くのもままならない」「もともと生活に余裕がない世帯だったため奨学金を利用した。それが就職したところで急に生活に余裕がでるわけがなく、今になっても収入が低いまま返済できずにいる」「返済できる年収が20年以上もない状態(バイト、非正規労働しかない)で、取り立ての電話が何度も来て困窮しています。親戚にも同様に書面等が来て困っています。大学卒業前に父が急死して、奨学金なしには規定の課程を終えることができなかったので、借りたことはやむを得なかったと思いますが、返済できないほど年収が少ない生活を何十年も強いられることになるとは想像もしていなかった」「毎月今でも2万弱の返済をしています。昨年コロナで給与が7割まで減った時も大変に返済が厳しい状況でした。本業の他に副業をしないといけない状況でした」「収入が低過ぎて生活が苦しい。夫婦共働きで子供もいるがギリギリの生活が続いている。中小企業で働いているが給料はほとんど上がらないから、余裕がない」「現在、奨学金の返済金額がまかなえないため、週7で働いており休みがありません。普段の平日の仕事に加えて、土日にバイトや業務委託、個人での仕事などなんでもやっております」
さらに、過酷な労働環境であったとしても、借金返済のために「辞められない」という声は多い。「ブラック企業」でも働き続けることを強いて、精神疾患を発症するまでに追い込んでしまうケースも多々見られる。
――「返済に気を遣い精神面が悪化したのとブラック企業をなかなか辞めることが出来なくなった」「仕事を辞められない、辞めても熟考せずに次の仕事につかざるをえなかった」「毎月4万近くの返済額がありますが、社会に出てすぐの頃は満額で払える金額ではありませんでした。返済が可能になった後も毎月4万の返済は、生活の大幅な負担となり、職場がブラックであっても転職の検討を躊躇しています。また、ダブルワークも必須となり休日や時間の圧迫も激しく、結婚・出産は選択できません。結局職場の問題で休職に追い込まれました」「とにかく就職しようと思い、賃金が低くても勤めようと思った。最初の数年間は低賃金なので返済を猶予しながら勤務し、資格をとってステップアップする予定で転職したがブラック企業で過労により抑うつ状態となり失職」
まともに返せない状況のなかでの返済が、精神的な負担になっており、ついには自殺を考えるほどまで追い詰められている若者たちもいる。
――「元々借金がある家庭でその上でさらに借金をしたため、専門学校卒業後は返済に追われいくら働いても手元に何も残らない生活が続き精神的に病み現在も働けていない状態が続いている」「奨学金は私が死ねば返済義務は無くなるので、死ねばチャラになるんだなとぼんやり考えることがあります」「自己破産をすれば連帯保証人や保証人に借金がいくのでできない。自殺を考えた」
そして、低賃金・不安定な労働市場が広がるなかでの返済の重さは、結婚や子育てを希望しているにもかかわらず、それを断念せざるをえないという社会的排除を生み出している。
――「結婚してからも返済が続き、子どもが作れなかった」「結婚したい相手はいるが、子どもはあきらめた。この薄給だと奨学金を返すのでいっぱいだし、返しきる頃には適齢期を過ぎている」「返済金額がまだ残っており将来に希望もなくなる、結婚したかったが諦めている」「結婚予定のパートナーがいますが、出産・その後の子育てに耐えうる経済力がないので、子供を持つタイミングを先延ばしにし続けています。身体面でのタイムリミットもあるためなるべく早く決断しないといけないのですが、難しいです。毎月の返済額が重く、貯金に回す余裕が作れない状態です」
以上見てきたように、大卒後の「安定した雇用」は失われてきており、奨学金制度は卒業後の若者たちの人生を大きく制限し、「借金地獄」のなかに追いやっている。前提となる労働市場の安定が失われた現在において、奨学金制度や教育費政策のあり方も見直さなければなりません。
政府もこのような状況を問題視はしている。岸田政権は「「人への投資」の抜本強化」を掲げ、「出世払い型奨学金」などの新たな政策を検討するようになってきた。だが、返済当事者たちの状況を踏まえた抜本的な対策には程遠い。
そうしたなかで、先程紹介した「奨学金帳消しプロジェクト」には、当事者を含めた若者たちが集まり、この状況を変えるために動きはじめています。
プロジェクトに参加しているAさん(20代、女性)は、教員を目指して私立大学に進学するため400万円の借金を抱えることになった。3人の兄弟も同様に奨学金を借りており、4人で1千万円にのぼる。
彼女は大学を卒業後、希望通り通信制高校の教員になることができた。しかし過酷な労働環境で体調を崩し、退職せざるをえなくなってしまう。退職後は返済に困り、一時は知人に借金をするなどして対応していた。「死んで奨学金をチャラにするしかない」と考えたこともあったという。
その後は派遣の仕事をしながらなんとか返済を続けていたが、その仕事もコロナの影響で失職。現在は失業給付をもらいながら職業訓練を受けている。少しでも早く返済をしたいと考え、返済猶予は利用せず、減額返還制度を申請した。現在もわずかな収入から返済を続けている。
彼女は奨学金帳消しプロジェクトにかかわる理由を次のように語る。
――「勉強をするために借金をするなんておかしいです。本来、奨学金は家庭環境や親の収入による格差や不平等を無くし、誰もが教育を平等に受けられるようにするものではないでしょうか。今の奨学金はほとんどが貸与型であり、ただの借金でしかありません。さらに、家族から保証人を出せなければ、保証会社を使うことになりさらにお金がかかります。生まれによって罰を課せられたようなものだと思います」
プロジェクトには、Aさんのように親の経済的事情から大学進学のために奨学金を借りざるを得なかった若者たちが多数参加している。さらに自身は借りていなくても「友人が多額の借金に苦しんでいてなんとかしたいと思った。不平等を強いる制度はおかしい」と参加する若者も多い。
今後も奨学金帳消しプロジェクトは、「日本でも、奨学金制度は大きく転換すべき時が来ています。経済成長の時代はとっくに過ぎ去り、今まで「普通」とされていた生き方が成立しなくなった今だからこそ、私たちの世代で、より公正な、誰もが生存可能な社会を作っていきましょう」と呼びかけ、この状況を変えるために様々な取り組みを行なっていく予定です。
今後は、アンケート調査の分析や記者会見等での情報発信、政治への働きかけや政策提言など様々な運動を行なっていく予定だという。
アメリカでも学生の多くがローンによって教育費を賄っているが、近年、その借金返済を帳消しにすべきだというムーブメントが広がりをみせており、大統領選において公約にも組み込まれてきました。
そして8月24日、バイデン大統領は学生ローンを抱える数百万人の借り手に対し、1人あたり1万ドルの返済免除を行うと発表しました。学生ローン返済免除措置は最大で4300万人に恩恵をもたらし、約2000万人は債務が全額免除になる見込みだという。
学費の高騰と教育ローンの拡大、労働市場の不安定化――世界的にもこうした傾向は拡大しており、若者たちが不公正な状況を変えようと声をあげ、政治に影響を与えています。日本でもこうした動きが広がれば、状況が変わる可能性は十分にあります。
沖縄県では、県独自の給付型奨学金「県外進学大学生奨学金」を創設しています。県は、「この奨学金制度は、能力があるにも関わらず経済的な理由で県外進学が困難な県内高等学校等生徒の県外難関大学等への進学を促進し、大学等進学率の改善を図るとともに、本県におけるグローバル人材の育成を促進していくため、県外指定大学への入学及び修学を支援するための奨学金を給付するもの」としています。東京都には、介護職員対象と中小企業対象の制度があります。
(独)日本学生支援機構調べによると、奨学金返還支援を26都府県が実施していますが、福岡県はしていません。
その目的は、それぞれ県内の企業等の人材確保、若者の県内回帰・定着、UIJターン就職促進などのための経済的負担の軽減などとなっています。対象は、UIJターン就職者や定住のみのところ、県内中手企業対象(県内に本社機能のある大企業を含むところも)、県が「製造業」などと業種指定をしているところ、県内の中山間地域・離島の企業等を対象にしているところ(島根県)などさまざまです。
東京都は、介護職員対象と中小企業対象の2つがあります。企業と2分の1ずつの負担にしているところが多いようですが、UIJターンや定住の促進を目的にしている県や東京都の介護職員対象の制度など、企業負担を求めていないところもあります。ただし、よくみると条件が厳しく、募集枠が少ないなどの問題(三重県13名)もあります。また、いずれも正社員だけを対象にしており、非正規雇用になった若者を差別し、格差を広げるという問題もあります。
なお、支援機構の調査結果にはありませんが、沖縄県も奨学金返済支援事業を行っています。県内中小企業の人材確保・定着を支援するため、企業が従業員に対して行う奨学金返還支援に対し、企業が負担する経費の一部を補助するというものです。
(参考資料)
若い世代が、家族・近親者の世話や介護に追われ、重い負担に苦しんだり、成長や進路の障害となったりする、「ヤングケアラー」の問題が深刻になっています。
おとなに代わり家族の世話や介護などを担う「ヤングケアラー」について厚生労働省が4月、小学校6年生を対象にした初の調査結果を公表しました。回答した9759人のうち6・5%が「家族の世話をしている」と答えました。約15人に1人です。ケアを始めた年齢は10~12歳が40・4%、7~9歳が30・9%で6歳以前からは17・3%いました。早くから家族のケアに携わるケースが少なくない実態が浮き彫りになりました。
ヤングケアラーは「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子ども」(日本ケアラー連盟)とされます。年齢や成長の度合い以上に重い責任を負わされ、生活や学業に困難をきたす子どもへの支援は重要な課題です。
調査によれば、ケアを必要とする家族は「きょうだい」が71・0%と最も多く、次いで「母親」の19・8%でした。内容は、「見守り」40・4%、「食事の準備や掃除、洗濯」35・2%、「きょうだいのお世話や送り迎え」28・5%などです。
頻度は「ほぼ毎日」が52・9%でした。平日1日にケアに費やす時間は、1~2時間が27・4%と最多ですが、7時間以上も7・1%いました。ケアにあてる時間が長くなる子どもほど遅刻や早退が増えています。「授業中に寝てしまう」「宿題ができていない」「提出物を出すのが遅れる」という子は、ケアする人がいない子の約2倍でした。学校生活に支障が出ていることが改めて確認されました。
しかし、「特にきつさを感じていない」との答えは半数にのぼりました。7時間以上ケアをしている子どもでも、3割超が「とくに大変さを感じていない」と回答しました。家族へのケアが常態化し、大変さを十分に自覚できていない可能性を示唆しています。
ケア時間が長い子ほど「家族のことを話したくない」「相談しても何も変わらない」という割合が高くなりました。困難を抱え込み、孤立を深める姿が浮かびます。学校やおとなへの要望では「特にない」が50・9%の一方で、「自由に使える時間がほしい」15・2%、「勉強を教えてほしい」13・3%、「自分のことの話を聞いてほしい」11・9%との声も寄せられています。「頑張りをほめてほしい」という切実な訴えもあります。
子どもの状況を的確につかみ、耳を傾け、心を通わせるきめ細かな対応が重要です。相談・支援を開始した自治体もあります。子どもが希望を持てる支えをつくるために国は責任を果たすべきです。
家族のケアに時間を割く子どもは多くの場合、親が病気などの困難を抱えています。一人親世帯などでは経済的な苦しさも重なります。コロナ禍で生活が一層悪化した恐れもあり、政府や自治体の生活困窮者支援の強化は欠かせません。
家族のケアで困難にある子どもが見えにくいとされる大きな要因は「家庭内の問題」とみなされる風潮です。医療・介護・福祉行政の大幅後退が、家庭に責任を負わせる流れに拍車をかけています。岸田文雄政権・与党には「家庭」を過度に強調する傾向が顕著です。「自己責任」論で子どもを追い詰めることは許されません。
2021年度の公立小学校数は1989年度比で5272校減少。15年に文部科学省が「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」を発表して以降、「適正規模」に合わせた統合が進んできました。文科省は、「適正とされる学級数を持つ学校」は、昨年7月時点で、小学校が47・8%、中学校が38・1%となっているとの実態調査を公表し、さらなる学校統廃合を促しています。
高橋千鶴子衆院議員が、手引は「適正規模ありき」でなく、「小規模校として存続」の道も認めているはずだと指摘したら、文科省は「学校は地域コミュニティーの核でもあり地域づくりと密接不可分だ。市町村の判断は尊重する」と答弁。存続を決めた学校への教職員の加配やスクールバスなどの予算があると答えました。
世界の主要国の学校規模(初等教育)は100~200人程度で、しかも1学年1学級でクラス替えがないのが一般的です(「ユネスコ文化統計年鑑1999」)。日本は、300人を超えており、世界標準の2~3倍です。アメリカは、日本を越えていますが、無理な学校統廃合で学校規模が拡大し、学校の荒廃が広がったことの反省から、現在では小さな学校の意義が見直されています。
いま進められている学校統廃合は、多くの場合、学校の「標準規模」(12~18学級/校)を目標に計画されていますから、1つの学校の児童・生徒数が480人~720人というような世界に例を見ない大規模校をめざしていることになるのです。
諸外国で学校規模が小さいのは、それだけ教育効果が高いからです。「小さな学校」「小さなクラス」ほど、学習意欲や態度が積極的になり、子どもたちの人格形成・人間的成長にとっても効果的であることが実証されています(学校の規模が小さいほど教育効果が高まることを実証した「コールマン報告」1966年。学級の規模が小さいほど教育効果が高まることを実証した「グラス・スミス曲線」1982年)。
WHO(世界保健機関)も、学校は小さくなくてはならないとして、生徒100人を上回らない規模が望ましいとしています(カークパトリック・セール 『ヒューマンスケール』教育不在の「教育」機関より)。この基準では、小学校の場合は1学年あたり16人以下、中学校の場合は1学年あたり33人以下となります。いま、政府や地方自治体が強引に統廃合を進めようとしている学校の多くは、WHOの基準、つまり教育的観点に逆行しているのです。
これからの時代、単なる知識の詰め込みだけの受身の教育では役に立ちません。知識を応用し、いろいろな課題解決に取り組む力、集団の中で自らの能力を主体的・積極的に発揮する力が求められます。そうした力を培うには、小さな学校が有効です。
財務省は、学校統廃合がすすみ「効率化」ができたと「成果」を強調し、今後、地方自治体や国をあげて学校統廃合を促進させる方向を提起しています。自公政権は、子どもたちのためではなく、教育予算削減のために学校統廃合の推進を打ちだし、各地で一方的な統廃合が強行されています。統廃合は、地域の教育力の衰退、子どもの長時間通学、いざという時の安全面の不安などでもデメリットがあります。統廃合の理由とされる小規模校では教育がうまくいかないという「適正規模」論は何の道理もありません。
小規模な学校は子ども一人ひとりに目が行き届くなどの優れた面があるとともに、地域の維持と発展にとってもかけがえのない役割があります。
※参考資料
私立合馬小学校「のびのびフレンドリースクール」
(党北九州市議団 市議会ニュース『100万人の笑顔のために』22・12・1より)
市議団は「のびのびフレンドリースクール」に取り組む小学校の一つ、合馬小学校(児童数57人)を視察しました。
自然環境に恵まれた小規模な小学校に通学区域を越えて転入学できる制度で、市内3つの小学校でとりくんでいます。校区外から通学している児童は30人、何らかの学びにくさを抱えて同校に公共交通機関などをつかい自力通学している児童たちです。
視察で、とくに印象深かったのが「合馬子ども神楽」の練習風景でした。児童が舞い、横笛を奏で、教職員が見守り、地域の人たちもいっしょになって神楽をつくりあげる。全校、地域が一体となる瞬間でした。
1クラスの児童数は6~12人。少人数だからこそ、すべての教師が一人ひとりの子どもの特性を理解し、さまざまなとりくみができている。校長先生によれば、学力も市内トップクラスとのことです。
少人数学級のよさを体現している合馬小学校のようなとりくみを全市的に広げるべきではないか。フレンドリースクールが教えてくれました。
小中一貫校、中高一貫校導入は様々なケースがあり、子どもの成長・発達にとってどうかから、その是非を判断します。
自公政権のすすめる「小中一貫校」構想は、それによって学校統廃合をすすめることが最大のねらいです。しかも小学校高学年の自覚などこれまであった子どもの成長に有益なものが失われる、学校がマンモス化する、中学のテスト体制や厳しい管理が小学校に拡大するなど多くの問題をかかえています。
この間すすめられてきた「中高一貫校」は、その学校を特別の受験校にすれば、中学受験などの競争を助長することになります。「スーパーハイスクール」なども含め、同じ公立学校なのに一部だけに破格の予算をつけるやり方は、行政の側から教育格差を広げるものとして問題が大きすぎます。すべての学校の教育条件の向上を重視します。
障害のある子どもの教育は、その子どもの成長し発達する権利を保障し、障害のある人々の「社会への完全かつ効果的な参加」を実現するものでなければなりません。日本共産党は、特別支援学校だけ学校設置基準がなく、教室をカーテンで仕切って2学級で使用、図書室も音楽室もないなどの過大過密が放置されている問題を取り上げ続け、ついに2021年に学校設置基準の制定を実現させました。その到達をふまえ、次の政策の実現に力をそそぎます。学級の上限人数や校舎面積、備えるべき施設などの設置基準は2023年4月1日から施行されます。
子どもの障害の重度化重複化に対応するため、重度重複学級が制度化されていますが、この間、重度重複なのにそうでないと認定し、その分教員を目減りさせるという問題が起きています。その結果、学校現場では子どもへの支援が十分にできなくなるなど深刻な問題がおきています。
通級指導教室は、数十万人と推定されている通常学級に在籍する発達障害の子ども、その他さまざまな事情から支援が必要な子どもの教育にかけがえのない役割をはたしています。ところがその整備が遅れ「希望しても入れない」などの事態が広がっています。
国により通級指導教室の基礎定数化が図られていますが、1人の教員で何十人もの子どもを指導する事態は解消されていません。
すべての学校に教室が設置されているわけではないため、送り迎えの条件がなければ、希望しても教室に通わせることができません。子どもの送迎のために仕事をやめざるをえない保護者もでています。
高校や大学、専門学校などでも特別な支援を必要とする子どもや学生が増えています。
夜間中学は、戦争の混乱や経済的な理由により教育を受けられなかった多くの人、不登校の子ども、障害者、「中国帰国者」や在日外国人らにとってかけがえのない義務教育の場となっています。ところが公立夜間中学は全国にわずか34校しかありません。
文科省は各都道府県と政令指定都市に1校以上の公立夜間中学の設置を促しており、福岡市は2022年度に公立夜間中学を設置しました。
不登校の子どもの割合がこの間再び急増し、第二次安倍政権の8年間で2倍近くに増えました(2012年1・09%/2020年2・05%)。これは、学校が子どもにとっていかに息苦しい場となっているかを示しています。その背景に、安倍政権以降の子どもの個性や多様性を押しつぶすような教育施策があるのではないでしょうか。不登校は、社会や教育のあり方を背景にしたもので、本人や家庭の責任とすることは誤りです。
子どもたちの、学校強制でない教育への権利、安心して休む権利、自分らしく生きられる権利などを保障する立場から、以下の政策を進めます。
ICTをどう教育にとりいれるかの探求は始まったばかりです。ところが、政府のGIGAスクール構想は、ICTさえ使えば教育がバラ色になるといわんばかりの短絡した発想で、子どもの成長や発達を深く考えていません。また、費用負担や安全面などでも問題をかかえています。子どもの学習や健康第一に考え、ICT教育に対応します。
タブレットは義務教育段階では無償ですが、壊れた時や自宅で使う場合の通信費は対応がさまざまです。
ICTを使えば必ずいい授業になるわけではありません。授業の質は、教員自身の深い教材研究や、子ども同士や子どもたちと教員との生きたやりとりにあります。ICTはあくまでその補助です。教員の得手不得手もあり、どう使うかは個々の教員にゆだねなければ、かえって授業の質が落ちかねません。タブレット使用が自己目的化し、一律の使用方法などを徹底するようなことは、本末転倒です。
文部科学省が2021年に始めた「#教師のバトン」は、教員自らが仕事の魅力を発信し、なり手不足の解消を目的としたプロジェクトでした。ところが、ツイッターには過酷な労働環境への悲痛な叫びであふれ、炎上しました。萩生田光一文科相(当時)が会見で「願わくば学校の先生ですから、もう少し品のいい書き方を」と述べ、火に油を注ぎました。教員の多忙化は、限界に達しています。コロナ対策に加えICT導入の実務まで教員の負担となればいっそう深刻な事態となります。
多くの専門家がICTによる近視やネット依存症などの健康被害を指摘しています。また、ICTの使用によって深く考えるということがかえって阻害されることを指摘する研究者も少なくありません。
文部科学省は、「教育データの蓄積、分析、利活用」を強調しています。子どもがタブレットを使えば、練習問題の結果、日々の生活などが「学習ログ」としてクラウド上に蓄積されることになります。こうした保護されるべき個人情報が教育産業に流出することを防ぐ有効な手立てを進めます。
デジタル教科書は、思考力を阻害したり健康被害の危険がある懸念があります。海外では、いったん導入しても健康被害と教育効果から紙の教科書に戻すケースもうまれています。
もともと学校へのタブレットの性急な普及は経済産業省が推進してきたものです。そこでは「生徒達は自分の好きな学習塾の先生などのオンライン講義動画をタブレットで見て、自分の進度に合わせて個別に学ぶのが一般的になる」(「未来の教室」第一次提言)と明け透けに教員不要の安価な教育が構想されていました。これに対し、文科省はICTを双方向型の「協働的な学び」に活用する方向を打ち出しました。
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