
日本の社会保障給付費は、GDPの22・4%で、ドイツの27・7%、フランスの32・2%などに比べて低い水準です。これをドイツ並みにすれば25兆円、フランス並みにすれば50兆円、社会保障給付が増えることになります。
政府や財界は、社会保障給付が増えると経済の重荷になるなどと言ってきました。しかし、社会保障や教育に手厚い予算を充てることは、家計を支える面でも、地域経済を支える面でも、新しい雇用や投資を生み出し、経済を活性化させる面でも、健全な経済成長を実現する大きな力になります。
自公政権は、物価高騰のさなかに公的年金の給付水準を2022年4月から0・4%も引き下げ、同年10月から75歳以上の病院の窓口負担を2倍にするなど、「長生きは迷惑だ」と言わんばかりの政治です。
安倍・菅・岸田自公政権の10年間で、年金給付は実質6・7%の引き下げ、総額4兆円近い減額です。厚生労働省が示す標準的な例では、国民年金で年3108円、厚生年金(夫婦2人分)で年1万836円の減額となります。
自公政権が「100年安心」の名で、年金の支給水準を減らし続ける仕組みを導入したことが異常事態の元凶です。1970年代のインフレのときには、年金額を何回も引き上げ、物価スライドの前倒し実施も行いました。物価が上がれば年金も上がる、これが当たり前の政治です。
年金は高齢者の生活を支える“命の綱”です。政府の調査でも60歳以上の67%が「公的年金が主な収入源」(内閣府「高齢社会白書」)と答えています。しかし支給額は低く、就労を希望する理由で最も多いのは「収入がほしいから」です。福岡県の国民年金受給者数は127万7793人で、平均年金月額は5万5384円(令和2年度末現在)しかありません。もともと年金だけで生活できないのが実態です。
今回の減額は、2~4年度前に賃金水準が下がったら、その分、年金を減らすという不当なルールを適用したためです。2018~20年度の賃金変動はマイナスでした。その間の賃金の減少は安倍晋三政権の失政によるものです。非正規雇用を拡大した上、最低賃金の抜本的引き上げなど政治の責任を果たしませんでした。そのツケが物価高の今、年金受給者に押し付けられています。ドイツでは2021年の賃上げを反映させ、旧東独部で6・12%、旧西独部で5・35%、2022年7月から年金を増額しており、日本と対照的です。
年金は高齢化がすすむ地方を中心に経済に大きなウエートを占め、地域経済を支える重要な柱でもあります。厚労省が、家計全体の消費支出(家計最終消費支出)に対する年金支給総額の割合を都道府県ごとに集計したところ、20%超が13県あり、10%超が福岡県を含む46道府県(東京都以外)でした。同省も、年金は「地域経済における安定した消費活動の下支え」(17年版「厚生労働白書」)と認めています。年金の削減は消費を冷え込ませます。現役として働いている人たちの賃金に影響を及ぼし、さらに年金の給付額を引き下げる悪循環を生むことになります。
岸田首相は現行の仕組みを「持続可能な制度」と正当化しています。しかし減り続ける年金に現役世代の多くが不信を抱いています。国民が払う保険料が柱となっている年金制度の基盤を崩しかねません。自公政権の年金減額路線は、高齢者の命とくらしを脅かすとともに、地域経済にとっても家計の消費を冷え込ませる悪手です。逆に、信頼できる年金制度の確立は、高齢者だけでなく現役世代の老後の不安も解消し、消費拡大と経済の好循環という「やさしく強い経済」の実現にもつながります。
2021年、75歳以上の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる高齢者医療費2倍化法を、自民・公明・維新・国民が強行し、2022年10月から実施されました。物価高騰のさなかの年金引き下げと医療費2倍化の強行に、強い怒りの声が広がっています。
2倍化の対象となるのは、75歳以上で所得が一定額を超える370万人、負担増(給付削減)の総額は2022年の平年度ベースで1880億円、1人当たりの負担増は年5万円を超えます。物価高騰で大打撃を受けている高齢者にこんな負担増を強いるなど許せません。
厚生労働省は、負担増での受診控えで給付費を年1050億円も削減できると推計していますが、受診控えが健康悪化をまねき、逆に医療費の増大につながる悪循環を引き起こす危険をどう考えているのでしょうか。
本県の後期高齢者医療制度の保険料は全国一高く、高齢者の重い負担になっています。一方で、2021年期の余剰金は97億円と推定され、180億円ある運営安定化基金に積み増しされました。さらに、財政安定化基金62億円も積み立てられています。
国保加入世帯の年間平均所得はピーク時の1991年度から半減した一方、国保料は上がり続けています。国保加入者1人当たりの平均保険料は、中小企業の労働者が加入する「協会けんぽ」の1・3倍、大企業労働者が入る組合健保の1・7倍です。4人世帯では協会けんぽの2倍以上の格差が生じることもあります。
本県の国民健康保険の2022年3月末時点の加入世帯数は約68万2600世帯、被保険者数は約103万4400人です。国保被保険者全体に占める65歳から74歳までの割合は、2020年9月末時点で42・9%となっており、5割を超える自治体も16市町村もあります。
広域化になる前の2017年度と2021年度の1世帯当たりの平均所得をみると、2017年度は給与収入225万円、2021年度で202万3000円で、平均所得が5年間で約20万円下がっています(各市町村の「国民健康保険実態調査」)。ところが、モデル世帯、「40歳代夫婦と2人の子どもの4人世帯」の保険料を計算すると、約20万円もの負担があります。これはだいたい協会けんぽの2倍で、負担能力を超えた高さになっています。
全国知事会、全国市長会、全国町村会などの地方団体は、加入者の所得が低い国保が他の医療保険よりも保険料(税)が高く、負担が限界になっていることを「国保の構造問題」だとして、国の負担を1兆円増やして保険料(税)を協会けんぽ並みに引き下げることを再三要望しています。
国保料(税)引き下げのために不可欠なのが、「均等割」という日本の国保にしかない“人頭税”のような時代錯誤の仕組みの廃止です。日本共産党は、「子どもの均等割負担は、子どもの貧困対策にも、子育て支援にも逆行している」として、子ども(18歳になる年度末まで)の国保料(税)の均等割をなくすように求めてきました。国は、ようやく2022年度から就学前の子どもに限って均等割の5割を公費で軽減しますが、これでは不十分です。
2022年4月から国は、子育て世帯の経済的負担軽減の観点から、国民健康保険料(税)について、未就学児に係る均等割保険料(税)を5割減額し、その減額相当額を公費で支援する制度を導入しました。これは、国民世論の力です。
本県では、均等割5割軽減の対象となる未就学児は約3万2400人(2022年3月末時点)で、10割軽減にするには合計約2億5600万円余の追加負担が必要となります。これは、県独自でも十分予算化できる金額です。
いま、国民健康保険料(税)を毎年のように値上げする動きが広がっています。それは、国が、2018年度から国保制度を「都道府県単位化」(都道府県が市町村とともに保険者となった)したことを契機に、「都道府県内の保険料(税)を統一する」として、多くの市町村が保険料(税)抑制のために行っている一般会計からの繰り入れ(全国平均で1人当たり約1万円)を解消するように求めているからです。
2022年10月の県議会で県は、「市町村の法定外繰り入れは、以前は150億円相当ありましたけれども、国や県の指導もあり額が減っています。それでも、この5年間でも70億から100億程度の繰り入れが行われています」と答えています。県内市町村における2021年度の法定外繰入額は、約76億9000万円です。
福岡県の「国保運営方針」では、「法定外繰り入れや繰り上げ充用の削減・解消に取り組むことにより、財政収支の改善を図る必要」があるとされ、さらに「国保制度改革の更なる深化を図るため、引き続き市町村の 医療費水準の平準化等を図りながら、保険料水準の均一化を目指すこととする。」と書かれています。実際に県は、国の方針通り、保険料の均一化を目指して医療費を適正化する(「抑える」)ために、市町村に対して法定外繰入等の解消や削減に取り組むことを求めています。
しかし、法定外繰り入れや繰り上げ充用をやめて保険料を均一にすれば、いまでも高すぎる保険料はますます高くなります。命を守るためには、被保険者の負担を減らすことが急務です。保険料・税負担を抑えるための市町村の努力に対して、国は、これをやめるよう強力に指導しており、保険者努力支援金制度とういものまで作って、特別交付金に反映させています。
国は国保の国庫負担を減らし続けていますが、この国保県単位化にあたっては、3400億円が投入されました。ところが保険料引き下げには程遠い状況です。だからこそ、市町村は被保険者に寄り添った立場で、今も法定外繰り入れを行っているわけで、これをやめろというのならば、国の投入額を全国知事会等が以前要求していたように1兆円規模にすべきです。
本県の国保滞納世帯は、2021度、70万世帯のうちの約7万世帯で1割です。そのうち短期被保険者証の交付が59市町村で2万6477世帯、資格証明書の交付が44市町村で1万2915世帯です。
滞納世帯の半数以上は、所得100万円以下で、払いたくても払えない、低所得が滞納を生んでいることは間違いありません。短期保険証、特に窓口10割負担の資格証明書の交付というのは、命にかかわります。全日本民医連が毎年発表している「手遅れ事例」が、2021年は全国45事例で、そのうち福岡県は最も多い9例が示されました。「無保険で病院に来るのが遅れた。」「窓口負担が払えない。」という受診抑制や、「がんと診断されていても病院に行かない。」「運ばれてきたときは全身に転移していた。」「コロナで仕事や収入が減ったため受診をためらった。」等々の事例が報告されております。
すでに、「資格証明書を交付して制裁を強めても、国保料収納率の向上につながらない」というふうに判断して、名古屋市のように資格証明書の交付をやめた自治体もあります。本県は、民医連の調査に現れたように、医療保障という点で極めて深刻な状況に置かれています。実際、滞納者を制裁し、保険料を払えといっても、払えない。そして手遅れになっているのです。
新型コロナウイルス感染症の影響による国民健康保険料(税)の減免世帯数は、2021年度納付分で6347世帯、傷病手当金支給被保険者数は、2021年度分が2022年7月末現在で95件です。
コロナ禍が続く中で、昨年度は「コロナの減免」の対象者が減っています。
コロナ減免制度とともに、新型コロナに感染した被保険者等に対する傷病手当金が、国が財政支援をして、2022年12月31日までの期間限定でつくられました。この制度は長年にわたり、国保の関係者が要求してきたものです。国の財政支援終了後の傷病手当金の支給は、保険者である市町村の財政負担になります。
本県の2021年の窓口負担(一部負担金)の減免件数は888件、減免総額は約8700万円です。
国保法第44条の規定は、被保険者が疾病や失業等により一部負担金の支払いが困難となった場合に、市町村がこれを減額又は免除する制度です。ところが、災害があったとき以外は、ほとんど活用されていません。
また、現状では、民間病院が負担を伴いながら実施している無料低額診療で年間延べ40万人以上の医療を保障されています。これは、本来ならば国保法44条が適用されるものです。
介護保険制度は、「社会で支える介護」をかかげて導入されましたが、実際には、要介護度に応じてサービス内容や支給額が制限されるなど、スタート当初から「保険あって介護なし」と言われてきました。一方で、介護保険料は値上げが相次ぎ、全国平均で基準額が制度開始(2000年度から)の2倍以上になり、これからも3年ごとの値上げが繰り返されようとしています。
さらに、自公政権がこの間すすめた要支援1・2の方の介護保険外しと市町村の事業化、ホームヘルプサービスの利用回数の制限、利用料本人負担を最大3割、介護施設の不足(特別養護老人ホームの待機者が36万人)などで、「高い保険料を払っているのにいざという時に必要な介護を受けられない」「介護保険だけで在宅生活を維持できない」状況はますます深刻化しています。
第二次安倍政権からの年金の連続削減、消費税2倍化、さらにこの間の物価高騰のうえに、2022年10月からの75歳以上の医療費2倍化され、高齢者の生活は追いつめられています。ところが自公政権は、今度は介護でも大規模な負担増と給付削減をしようとしています。
厚生労働省の審議会は、2023年度の制度改定に向けて議論を本格化しています。介護関係者が「史上最悪」とよぶ改悪メニューは、「介護サービスの利用料2割、3割の対象拡大」「要介護1と2の保険給付はずし(訪問介護、通所介護のサービスを、介護給付から市町村の「総合事業」へと移管)」「ケアプランの有料化」「老健施設などの相部屋(多床室)の室料有料化」「介護保険料の支払い年齢の引き下げ」「福祉用具貸与制度の販売(購入)への転換」などです。財界や財務省は、所得額を問わない「原則2割負担化」も主張しています。
※参考資料
#要介護1と2の保険外し」がTwitterトレンド入り
家族の会「到底容認できない」 オンライン署名に多くの賛同者
【Joint(介護ニュース)編集部】2022年10月1日
要介護1と2の高齢者に対する訪問介護、通所介護のサービスを、現行の介護給付から市町村の「総合事業」の枠組みへと移管する構想をめぐり、「認知症の人と家族の会」による反対のオンライン署名運動に支持が集まっている。1日16時の時点で2万9065人が賛同。Twitterでは一時、「#要介護1と2の保険外し」がトレンド入りした。
この構想は、次(2024年度)の介護保険制度の見直しに向けて財務省などが具体化を求めているもの。狙いは膨らみ続ける介護費の抑制にある。
総合事業の特徴は、運営する市町村が地域の実情に応じてサービスの運営基準や報酬などを独自に決められる点。全国一律のルールに基づく介護給付と異なり、例えば地域の住民やボランティアを主体とするなど人員配置を緩和しつつ、その分だけ低い報酬を設定することも可能だ。現行では、要支援の高齢者に対する訪問・通所などがこの枠組みで運営されている。
地域の多様な資源・人材を活かす仕組みを作れたり、より効率的な体制を実現できたりする一方で、課題も少なくない。報酬の低さもあって請け負う担い手が十分に存在しないこと、サービスの質が低下しやすいことなどを指摘する声が多く、地域による多少の違いはあれど、総じてまだまだ発展途上と認識されているのが実情だ。このため介護関係者の間では、この総合事業を要介護1と2の訪問介護、通所介護にも拡大する構想への慎重論が大勢を占めている。
家族の会はオンライン署名サイト「Change.org」で、「制度はあってもサービスが使えないものになってしまう」と問題を提起。「到底容認できない」と訴えている。
※ 家族の会はこのほか、介護の利用者負担の引き上げを見送ることもあわせて主張している。
政府は9月28日の「全世代型社会保障構築会議」で、このテーマを今後の論点として扱っていく方針を明示。厚生労働省に対し、社会保障審議会などで検討を深めていくよう要請した。次の介護保険制度の見直しでどう対応するのか、厚労省は年内に大枠の方針を固める予定だ。
特別養護老人ホームの入所待機者は、2014年時点で52万人だったのが、自公政権が2015年の改悪で入所資格を原則「要介護3以上」としたため、当時の待機者のうち「要介護1・2」の17・8万人が待機者から外され、見かけ上減りました。それでも、2019年時点での待機者は29万人にのぼります。
特養待機者が膨大な数にのぼる背景には、高齢世代の貧困があります。低年金・低所得の人が要介護状態になったとき、最期まで入居できる施設は特養ホームしかありません。ところが、政府は、社会保障費抑制のために特養ホームの増設を抑え、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅など、低所得者には利用できない施設の整備ばかり応援してきました。その一方で、病院からの高齢者追い出しを推進してきました。
そうしたなか、行き場を失った高齢者がホームレス用の宿泊施設を転々としたりするなど、メディアが「介護難民」「老人漂流社会」と呼ぶ状況も広がっています。こうした事態を解決するには、特養ホームの抜本的増設に舵を切るしかありません。
コロナ危機は、日本の公的介護制度の弱点と矛盾を浮き彫りにしました。
新型コロナ感染症の感染拡大を受け、訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)では深刻な利用抑制が起こり、介護事業所が大幅な減収に見舞われました。感染防護に向けた現場の必死の努力にも関わらず、全国各地の介護・福祉施設でクラスター(集団感染)が発生し、多くの利用者・従事者が深刻な被害にさらされました。
もともと、介護の現場では、職員の低処遇・長時間労働・人手不足が大問題となっていましたが、コロナ危機で、職員の過重労働はいっそう苛酷なものとなりました。現場の疲弊は極限に達し、介護従事者の「コロナ離職」も相次いで、介護事業所の「倒産」「休廃業・解散」も過去最多水準となっています。
政府は、コロナで経営難となっている事業所への救済策として、通所介護、ショートステイなどの報酬を加算しましたが、その結果、利用者が負担する1~3割の利用料も引き上がる事態が起こりました。
コロナ危機によって困窮状態に陥る人が激増するなか、生活保護では、生活困窮者が制度の利用を行政によって阻まれたり、保護を利用する人の人権が侵害されたりする事態が各地で起こり、問題となっています。
親族等への扶養照会がかけられるのを怖れて、困窮者が申請をためらう事態が広くあります。扶養照会の慎重な運用を自治体に求めた厚生労働省「事務連絡」(2021年3月30日)の趣旨を徹底しなければなりません。
生活保護は、憲法25条が明記した国民の生存権をまもる”最後の砦”です。ところが、自公政権はこの間、社会保障費削減のため、2度にわたる生活保護費削減を強行し、申請者の親族に対する扶養照会の強化など、保護を利用しにくくする制度改悪を連打してきました。
日本共産党は、生活保護の受給基準を削減前の水準に戻し、窓口対応の改善など、必要な人がみんな受けられる制度にするため、以下のような改革・改善を求めます。
日本の障害者やその家族は、明治以来の「家族制度」が続く中で、自己責任・家族責任が押し付けられる中、とりわけ母親に介護が集中してきました。家族介護を前提とした障害児者施策はもはや限界です。
日本が2014年に批准した障害者権利条約は、「障害のない市民との平等の実現」が貫かれています。障害者が障害のない人と同様の当たり前の暮らしをするために、あらゆる権利を保障し、支援をおこなう社会的責任が国や自治体にあることを宣言しています。障害者権利条約や憲法にもとづいた障害者福祉の拡充のため、国際的に見ればGDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの4分の1(国立社会保障・人口問題研究所2021年度「社会保障費用統計」)にすぎない極めて低い障害関連予算を、早急に引き上げて公的責任を果たさせていきましょう。
社会保障審議会障害者部会では総合支援法の「3年後の見直し」が話し合われてきましたが、「基本合意」や「骨格提言」とはほど遠い内容です。
支援が必要にもかかわらず福祉利用の対象からもれてしまう、または対象であるにもかかわらず適切な支援を受けることができない障害が多数あります。
コロナ禍で鮮明になった、ケアを支える福祉労働者の重要性に見合う処遇改善は、これからの社会を展望していくうえでも、不可欠です。
15~64歳のいわゆる稼働年齢層のなかで、メディアや研究者が「ひきこもり」「孤立無業者」などと呼ぶ、社会的な孤立状態にある人たちの増加が、日本社会の直面する問題となっています。孤立・無業状態にある50歳代の子を、80歳代の親が支え、親子共倒れのリスクを抱える「8050問題」もメディアの話題となっています。
2019年3月、内閣府は、初めて行った「中高年のひきこもり」に関する調査結果を発表し、40~64歳のひきこもりが全国で61・3万人にのぼるとの推計値を明らかにしました。2016年に発表された、15~39歳の「若年ひきこもり」の推計値54・1万人とあわせると、ひきこもりの総数は115万人を上回ることになります。
背景には、過度の競争教育、長時間・過密労働、職場におけるストレスの増大、弱者たたきの風潮のまん延、格差と貧困の拡大など、日本社会の矛盾があります。専門家からは、ひきこもりを「自己責任」と捉えるのは誤りで、このまま現状を放置すれば、近い将来、膨大な”貧困高齢者”が生みだされ、孤独死の激増など、深刻な社会問題を引き起こしかねないという警鐘も鳴らされています。
ところが、「ひきこもり」の当事者への公的支援は乏しいままです。関係者が努力して国が予算をつけるようになりましたが、その額は数十億円に過ぎず、経済的支援もありません。
現在、全都道府県・政令指定市に79カ所の「ひきこもり地域支援センター」が設置されていますが、国の予算は1カ所当たり1000万円程度で体制は薄く、事態の拡大に対応しきれていません。
ひきこもりへの対応は、自治体によって、支援の格差や、理解のばらつきがあるのが実情です。ひきこもりの人の家族が役所を訪れても、担当部署が不明確だったり、相談窓口自体がわかりやすく整備されておらず、「たらいまわし」になったり、必要な支援につなげていない実態が各地から報告されています。とくに、家族が、「世間への負い目」や焦り、不安、混乱などを抱えて自治体の窓口を訪れても、「本人が来ないと、どうにもできない」「本人の甘えや家族の育て方が原因ではないか」などと言われ、あきらめてしまうケースも少なくありません。
補聴器助成制度は、補聴器を購入した人に、助成金を出す制度です。国の制度としては、障害者総合支援法にもとづく補装具費支給制度があります。しかし、この制度は、障害者手帳を交付される、聴力が70デシベル以上の重度・高度に限っています。軽度・中等度の難聴者は対象外です。
国の制度から外れた中等度の難聴者を対象にしているのが自治体の制度です。多くが2万円から3万5千円の現金給付です。補聴器は30万、40万の高額なものが多いですが、「それでも助かる」と喜ばれています。補聴器そのものを給付する現物給付もあります。
大半が住民税非課税など所得制限を設けています。年齢は65歳以上が多く、補聴器が必要だという耳鼻科医の証明を要件としています。制度そのものを知らない人が多いのが実情です。
難聴になると、外出がおっくうになるし、会話に入っていけないという人は多い。社会参加の必需品です。認知症の防止にも有効であることがわかっています。欧州諸国は難聴を医療の対象として手厚い公的補助をしています。
政府は、年金制度改変の議論とも呼応させながら、高齢者の就労促進を叫んでいます。しかし、実際には、雇用継続や再雇用が認められる代わりに「賃金ダウン」「子会社への出向」といった待遇悪化を強いられ、ハローワークに通っても希望どおりの職種が見つからないなど、働き続けたいと望む高齢者の多くは、さまざまな困難を強いられているのが実態です。高齢者を安い労働力として使いたいという財界の要望に応える政策が続くのでは、高齢者の雇用をめぐる矛盾は拡大するばかりです。
地域の実情に応じて、高齢者の就労・社会参加の場を広げることも大切な課題です。
日本の高齢者の就業率は欧米諸国に比べて高くなっていますが、「高齢者が就労を希望する理由」は、日本では、「収入が欲しいから」が51・0%の断トツのトップで、「仕事が面白いから」と答えた人は15・8%にとどまりますが、ドイツやスウェーデンでは「仕事が面白いから」がトップで「収入が欲しいから」と答えた人は少数派です(内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」、2020年)。
この事実は、日本で多くの高齢者が就労を希望する要因に、公的年金の水準が低すぎ、収入のために「働かざるを得ない」実態があることを示しています。いま、コロナ禍で仕事がなく、働かなければ生活できない高齢者が増加しています。
2018年、水道事業の広域化や運営権の売却(コンセッション方式)を推進する改定水道法が、自民、公明、維新などの賛成で可決、成立しました。日本共産党、立憲民主党、国民民主党、無所属の会、社民党、自由党は反対しました。
与党は、大阪北部地震を口実に成立を急ぎましたが、本末転倒です。大阪北部地震におけるライフラインの被害調査を行った土木学会地震工学委員会の報告では、広域水道への依存度の高さや自己水源の不足が指摘され、バイパスの確保と浄水場やポンプ場の耐震化による分散的な貯水機能の向上が提案されています。地域の自己水源を生かした地域分散型の水道システムへの転換を求めています。
水道事業者の認可は自治体に残したまま、運営権を民間業者に売却するコンセッション方式は、利益優先の民間業者の参入で水道事業の安全や安定性の後退につながりかねません。民間業者への「モニタリング(監視)」も、自治体が人手不足で「第三者機関」に任せることが認められており、これでは安心・安全の水道事業は維持できません。
水道事業では、管路の老朽化や耐震化の遅れなどが深刻になっているだけに、コンセッション方式では、「経営効率化」の名のもとに、安全性・安定性の後退や水道料金の値上げなどが懸念されます。実際に、海外ではそうした問題が起きて水道事業の再公営化が広がっています。
水道事業は人員不足から技術の継承が困難であり、水質等の十分なモニタリングができない一方で、専門的技術のある自治体職員が民間事業者に吸収される心配もあります。運営権の譲渡は長期設定となることから、後戻りできない事態になることを直視しなければなりません。
また、広域化の押し付けで、地域の自己水源の放棄や過剰なダム水が住民負担になるおそれがあります。改定法は、都道府県を広域化の推進役にしていますが、全国の自治体で先行する広域化計画では、住民負担やサービス後退を招いています。それにもかかわらず、広域化などの「基盤強化計画」について都道府県議会の議決も不要とし、国の助言、勧告などの権限もなくしたことは重大です。
水ビジネスは2025年に100兆円の市場になるとの業者の声もあります。いのちの源である水道事業を、ビジネスの対象にすべきではありません。
日本における住宅政策は、長年、住宅確保を「自己責任」として、公的責任を後退させる新自由主義的政策がとられてきました。アベノミクス以降の格差と貧困の拡大によりその傾向はさらに強まりました。しかし、政府は持ち家対策に偏重した住宅政策を取り続けています。その内容は持ち家取得・維持のための、ハウスメーカーと金融機関の要望を受けた「経済対策」ばかりです。
その結果、「家賃が高すぎて収入の7割以上、これでは生活を維持できない」など、収入が年金のみの世帯、学生を含む単身者世帯、シングル子育て世帯等々、賃貸住宅に暮らす世帯で高すぎる住居費が家計を圧迫しています。加えて、引き続くコロナ禍や昨今の物価高騰が何重にも暮らしの危機的状況を招いており、ホームレス状態なども含めた住宅困窮者の生活はより深刻さを増しています。
政府も、国民の暮らしの危機の広がりのなか住宅困窮者対策に取り組み始めましたが、必要な人にいきわたったとは到底言えません。
政府の住宅セーフティネット制度に基づいた、最大月額4万円の家賃低廉化(家主に給付する家賃補助)の対象となる登録住宅居住者への給付実績は、2020年度は全国でわずか17自治体208戸、2021年度も21自治体の298戸(給付額4985万円)のみです。コロナ禍の住宅困窮者対策としての役割をまったく果たしていません。
一方で、仕事を失うなどして家賃が払えなくなった人に対し、自治体が一定額を上限に実際の家賃額を支給する「住居確保給付金」の給付実績は、コロナ特例で要件緩和もされる中、2019年度の新規相談件数4270件、給付額5・8億円から、2020年度はそれぞれ15万3000件、306・2億円となり、件数34倍、給付額53倍へと激増しました。「住まいの貧困」を如実に示しています。もっとも、住居確保給付金も、給付期間が最大9か月のみとか、「収入制限が厳しく児童扶養手当等を合わせると対象から外れる」というシングルマザーの声があるなど多くの課題があります。しかし、入居者に直接家賃相当額が給付される点は他の制度と段違いに実効性が高く、生活困窮者の住まい確保に一定の役割を果たしました。
政府の検討会でも、恒久的な家賃補助の必要性について議論が始まっています。今こそ、恒久的な家賃補助制度を創設するときです。
自公政権は、住宅政策への公的責任を後退させてきました。「住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で賃貸」する公営住宅はニーズが高いのに、2005年度の219万戸をピークに2019年度は214・8万戸まで減少し、全住宅に占める比率はわずか3・6%にすぎません。全国的にも、公営住宅を供給する必要性は都市部中心に引き続き高いですが、政府はその整備どころか削減の方向を強めています。
また、公営住宅は、法制度の改悪により、月収15万8000円以下などのごく限られた低所得者しか入居できません。加えて、居住者の高齢化や外国人居住の増加等で住民間のコミュニケーションに新たな課題が生じ、自治会活動など住民の共同活動も困難を抱えています。自治体まかせではなく、地域の実情を踏まえた国の支援が求められます。
全国公団住宅自治会協議会が2020年9月に行ったアンケート結果によると65歳以上の世帯主は70・6%、約7割が世帯収入354万円未満です。また、現在の家賃負担が重いと答えた世帯は74・7%に上っています。加えて昨今の物価高騰で低所得入居者の生活は危機に瀕しています。高家賃対策は急務です。
生活困窮者の家賃負担軽減のため、明確に法的根拠のある機構法25条4項の「家賃の減免」規定を現在の入居者に一刻も早く適用すべきです。国と機構が決断すればすぐにできることです。そのうえで、UR賃貸住宅は、生活に困窮する入居者に対し高すぎる家賃を引き下げるべきです。そのためにも、都市再生機構法を改正し、高すぎる家賃の原因となっている「近傍同種家賃」(民間と同等の市場家賃)制度を廃止することが必要です。
なお、2020年度からUR賃貸住宅も対象となる「セーフティネット登録住宅制度」の家賃低廉化は、本来民間の空き家等を対象に住宅を確保し、家主に家賃値下げ分を給付する制度です。UR賃貸住宅の家賃低廉化の適用自体は住居費負担軽減につながりますが、本来UR賃貸住宅は、国が関与する公的賃貸住宅ですから、国の責任で家賃を値下げすべきです。
バス路線廃止など地域公共交通の衰退、地域住民の足がなくなるという深刻な事態に歯止めがかかりません。そのもとで、住民の足が奪われ、高齢者等の移動が制約され、住民の日常生活や地域社会活動に支障をきたしています。
人口減少等を背景として地域公共交通の利用者が減少し、乗合バスの地方部の収支は約15%の赤字で、三大都市圏に比べ、厳しい赤字構造下にあります。また、バスやタクシー等の運転手の平均年齢は全産業平均よりも高く、第二種大型自動車運転免許保有者は15年間で約25%も減少し、自動車運転の職業の有効求人倍率は2009年の0・7倍から、2018年には3・05倍まで上昇するなど、運転手不足が年々深刻化しており、赤字や運転手不足による路線バスの廃止や減便の事例が発生しています。「福岡県交通ビジョン2022」は、「今後、人口減少や運転手不足の加速により、生活活交通の維持・確保が益々困難になることが予想されます。」としています。
国立社会保障・人口問題研究所によると、本県の高齢化率は年々増加しており、2045年には約35%に達すると予測されています。こうしたもとで、高齢運転者による事故が多発しています。こうした事故も背景に2019年60万人、2020年55万人を超える運転者が運転免許証を返納しており、今後も増え続ける状況にあります。
自家用車も運転できない住民が増えるなかで、地域公共交通の重要性がいっそう増しています。地域公共交通のこれ以上の衰退に歯止めをかけ、地域の社会経済基盤の再生、活性化を目指して、取り組みを強めなければなりません。
ところが、「福岡県交通ビジョン2022」が、「基本方針1 世界を視野に九州・山口の一体的発展を支える交通ネットワークをつくる」で第一にあげているのは、「下関北九州道路の早期整備に取り組みます。」です。
「基本方針3 住み慣れたところで『働く』『暮らす』『育てる』ことができる持続可能な交通をつくる」で、「1 地域公共交通の維持・確保」「2 誰もが移動しやすい交通環境の推進」「3 まちづくりと連携した交通環境の整備」がありますが、具体的な対策に欠いています。
2007年に成立した地域公共交通活性化再生法による支援は、2021年度に1150以上の地方自治体、協議会、事業者へと広がっています。
路線バスなど地域公共交通を取り入れている地方自治体は2020年度、1500を超え87%以上にのぼります(総務省の地方交付税算定額で措置されている自治体数)。そのうち、コミニティーバス導入が1367市区町村、デマンド型乗合タクシーが573市区町村(いずれも2021年3月末時点)。本県では、コミュニティバス等の広域運行(市町村域を越える運行)の路線数が、2015年度28路線から2020年度40路線に増え、デマンド交通導入市町村数が2015年度12市町から2020年度20市町(3分の1)に増えています。
都市と都市を結ぶ幹線バス路線は、県など広域的協議会が主体となり、地域内フィーダー路線は市町村が担っています。定時に決まった停留所のある路線を運行する定期路線バス、事前予約しドアtoドアで運行するデマンド乗合タクシーなど地域住民の実情に合った形態の運行も実施されています。
一方、制度の導入に踏み出せない自治体もまだ残されています。制度を導入している自治体でも、運行路線でカバーできない地域や停留所から遠い地域、便数不足など過疎地域、交通不便地域が残されたまま、増加しているところもあり、「交通空白地域」(例えば鉄道駅やバス停から半径500mの範囲で公共交通が存在しない居住地)は、日本の可住面積の3分の1(九州に匹敵)におよびます。
福岡県が「交通ビジョン2022」で示している「公共交通空白地域」は、「人口居住地域のうち、鉄道駅1km圏又はバス停(コミュニティバス含む)500m圏及びデマンド交通圏に含まれない地域。」とかなり広く定義しているため、2021年度の「公共交通エリア人口カバー率」が 鉄道+路線バスで90・3%、鉄道+路線バス+コミュ二ティバスで97・8%と、実状とも多くの県民の生活実感とも乖離したものとなっています。
2020年には、「地域公共交通計画」の策定を地方自治体の努力義務とする地域公共交通活性化再生法の改正がなされ、2024年度までに1200件の策定目標を掲げています。
政府は、コンパクトなまちづくりを地域公共交通と連動させながら進める「コンパクトシティー+ネットワーク」政策を推進しています。地方自治体に居住誘導の「立地適正化計画」と交通再編の「地域公共交通計画」を一体的に策定するよう求めていますが、2022年3月末時点で適正化計画に具体的に取り組んでいる626市町村のうち、地域公共交通計画を持っているのは、316市町村にとどまっています。(地域公共交通計画は、2022年4月末までに727件が策定され、地域公共交通再編実施計画は、47件が国土交通大臣により認定されている。)県内では、2021年5月末までに策定した市町村が28で、うち立地適正化計画作成済みが10市町村です。
国の支援制度としては、地域公共交通維持確保改善事業が取り組まれています。そのうち、陸上交通では、幹線バス路線と地域内フィーダー路線への支援があります。複数市町村にまたがる赤字路線バスについて、赤字分の1/2を国が直接補助し、残りを県が補填する仕組みです。しかし、実際は、国からは1/2に満たない補助しかなされていません。国の補助を受けるには、自治体や公共交通協議会が、公共交通維持確保計画を策定する必要があります。また、2020年の法改正では、路線バス等が一方的に廃止したり、新規参入でバス事業が競合したりしないように地方自治体の関与が強められました。
一方、地域公共交通の活性化・再生を保障する国の予算は、2011年度導入時は305億円の補助金が計上されていましたが、22年度は207億円に減らされています(ただし、21年度補正予算で258億円計上)。
ネットリサーチ「DIMSDRIVE」実施のアンケート「車」(2018年3~4月、インターワイヤード社)によると、「車を利用している」率は、東京都53・6%に対して福岡県は78・0%で、90%を超えている県も少なくありません。同調査は、「“車の利用率” から、移動手段の地域格差の広がりがうかがえた。」としており、公共交通網が発達し、車がなくても移動に不便がない都市では車離れがすすみ、地方では車が欠かせないものになっています。県内でも、福岡市内中心部と他地域では移動手段の地域格差が大きいことは明らかです。
「県民ニーズ調査」でも、公共交通機関を利用しない理由は、「通勤・通学」では「自家用車やバイクの方が所要時間が短い」(49・0%)が最も多く、次いで「鉄道やバスのダイヤが不便」(30・9%)です。「日常の買い物や通院等」では「車やバイクの方が所要時間が短い」(40・6%)と最も多く、次いで「荷物を持って移動しなくて済む」(38・3%)です。
地域住民が、いつでもどこでも自由に、安全に移動することは、健康で文化的な生活を営むうえで欠かせないものです。憲法に保障された生存権、移転の権利、幸福追求権などをもとに移動する権利を保障する施策が国や自治体に求められています。地域公共交通をめぐる深刻な状況をみれば、住民の移動権を実質的に保障する施策を進める必要があります。
EU諸国では、「移動権の保障」を明文化しているかどうかにかかわらず、住民の自由で安全な移動を支える施策を進めています。地方バス路線等を公共インフラ(社会基盤)として位置づけ、公的に支える制度が設けられています。フランスでは地域の公共交通を維持するために、労働者の通勤などで受益がある地域内の事業者から交通税(2019年基本法により現在はモビリティ税)を徴収し(2018年は約5800億円)、バス事業等に補てんしています。ドイツでは、エネルギー税(ガソリン、石油製品、石炭等に課税)の一部を地域公共交通分野に配分するなどして、連邦政府として1兆円を超える財政援助を続けています。
地方の鉄道、公営バス、コミュニティバス、LRT、離島航路・フェリーなど、生活に欠かせない地域公共交通を維持します。そのため、国と地方公共団体、事業者等の責任と共同により、地域公共交通を維持するために必要な財源を確保します。
住民の足、生活基盤である地域公共交通を地域社会経済基盤として再生するためには、運賃など事業収益が低下し、採算が取れず公共交通事業からの撤退、路線廃止、減便が相次いでいる事態に歯止めをかけなければなりません。事業者まかせでは限界があり、地域公共交通を活性化し再生する展望は開けません。
日本共産党は、2022年12月13日、「全国の鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐために」と題する提言を発表しました。鉄道、地域を守ることを願う人たちと力を合わせ、地方活性化の共同を広げます。
2022年は日本の鉄道開業150年です。記念すべきこの年に、自民・公明政権は、利用者の少ない路線の廃止を政府主導でさらに進める方針を打ち出すという鉄道網を寸断する新たな動きをすすめています。住民の足を奪い、地方に悪影響をもたらす廃線をこれ以上許すわけにいきません。
国土交通省の検討会は2022年7月、輸送密度1千人未満の路線について、国が主導してJRと自治体との協議会を設置し、廃線や地元負担増などの結論を3年以内に出すとの提言を発表しました。国交省はこれを基にして2023年の通常国会に法案を提出するとしています。
料金値上げや地元自治体の財政負担増を迫り、それができなかったり、収支が改善しなかったりすれば廃線となりかねません。
対象となる線区は2019年度の実績で61路線100区間です。1987年の国鉄分割・民営化前後を上回る規模の廃線になる恐れがあります。地域の公共交通を失い、旅客だけでなく、貨物輸送にも大きな打撃を与えます。
検討会は、地方路線が「危機的状況」だといいますが、国が路線存続の責任を放棄したことこそ最大の原因です。分割・民営化で掲げた原則は、JR各社が都市部の路線や新幹線、関連事業の収益で不採算部門を含めた鉄道網を維持することでした。このやり方が破綻した結果にほかなりません。
人口減少や地域経済の疲弊で苦しむ地方路線に国はまともな支援をせず、2000年には、認可制だった路線廃止を事前届け出制に規制緩和しました。
国民の交通権・移動の権利を保障することは国の重要な責務です。地方路線の維持・活性化は地方再生にとっても欠かせません。気候危機を打開するうえでも、二酸化炭素の排出量が自動車、航空機より格段に少ない鉄道の利用拡大を図る必要があります。
日本共産党は、「民間まかせ」をやめ、国が責任を果たす改革への転換を提言しました。
北海道、四国、九州の3社は、分割・民営化の時点で赤字になることがわかりきっていました(九州は不動産事業等で黒字化しているが鉄道事業は赤字)。経営安定基金を積んで、その運用益で赤字を補填する仕組みにしましたが、この運用益だけでは鉄道事業を維持できなくなっています。三島会社(JR北海道、四国、九州)の鉄道事業の経営難は分割方針の破綻であり、国が路線存続に責任を持つのは当然です。
とくに、JR北海道は大規模な廃線と大きな自治体負担を関係自治体に迫っています。国は経営安定基金の運用益を増やす「追加支援」を行いましたが、きわめて不十分です。JR北海道の全線を維持するための財政支援を行うべきです。
また、気候危機打開のためにも、鉄道による貨物輸送を「市場まかせ」のままにすることはできません。国交省は「トラック輸送から環境負荷が小さい鉄道に転換させる」モーダルシフトを推進しており、この点からも国がJR貨物に対する必要な支援を行うべきです。
JR東日本、東海、西日本の本州3社は、コロナ危機で赤字に転落しましたが、行動制限がない2022年度には黒字回復することが見込まれています。しかも、3社ともに巨額の内部留保を抱えています。「不採算路線を含めて維持する」とした民営化時のルール=約束を果たせなくなったという条件はありません。当面、すべての路線を維持するのは当然です。
政府は、鉄道事業法を変え、鉄道廃止の手続きを認可制から事前届け出制に規制緩和しました。国は何の責任もとらず、住民や自治体関係者の声も無視した鉄道路線の廃止を可能にしてしまいました。28道府県知事連名の「未来につながる鉄道ネットワークを創造する緊急提言」(2022年5月)でも「鉄道事業法における鉄道廃止手続きの見直し」が要望されています。この規制緩和は撤回すべきです。
全国鉄道網を維持・活性化し、未来に引き継ぐためには、「民間まかせ」「地方まかせ」を根本から改め、国が責任を果たすことが不可欠です。完全民営のJRの鉄道網を国有民営に改革します。国が鉄道インフラを保有・管理することで、鉄道事業を安定させ、運行は、現行のJRが引き続き行います。
35年が経過し、株式の売却、関連事業とその資産などJR各社の経営や資産の状況は異なっていることもあり、上下分離で国の関与と責任を明確にすることが、もっとも合理的な道になっていると考えます。整備新幹線は、国の鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設・保有し、JRに貸し付ける形態なので実質的に上下分離がすでに導入されており、全国鉄道網の維持・活性化の方式として十分活用できます。
国が線路や駅などのインフラを保有・管理する上下分離は、欧州の鉄道事業では当たり前の形態で、完全民営は日本だけと言っても過言ではありません。欧州では、自動車や航空機など他の交通機関との公正な競争条件としても道路や空港と同じように線路や駅というインフラは国が責任をもつという考え方も重視されています。
全国鉄道網を維持・活性化するためには、国が財政確保のシステムをつくることが必要です。「公共交通基金」を創設し、運行を担うJRの地方路線とともに、地方民鉄やバスを維持するも含め、地方の公共交通を支援します。
財源は、ガソリン税をはじめ自動車関連税、航空関連税などの一部を充てるとともに、新幹線や大都市部などでの利益の一部を地方の公共交通維持に還流させ、交通の面でも生じている大都市と地方の大きな格差と不均衡を是正します。
2017年7月九州北部豪雨で被災し、不通になったJR日田彦山線添田駅~夜明駅間について、県と沿線自治体は、「鉄道による早期復旧」をJR九州に対して強く求めました。同社の青柳俊彦社長(当時)は、株式上場前の2015年の国会で、「鉄道ネットワークを維持していく」と明言しました。ところが、JR九州は、この国民への約束を投げ捨て、地元自治体にバスによる代行運転などの3案を示し、鉄道復旧案については路線の赤字を理由に地元自治体に年間1・6億円の負担を求めるという理不尽な姿勢をとったのです。
2019年5月、わが党の田村貴昭衆議院議員、県議団との懇談で、添田町の寺西明男町長は、「もともと、これは災害復旧。民営化するなか、さまざまな優遇措置をうけたJR九州が経営優先で行動するのは理解しがたい」と訴え、東峰村の渋谷博昭村長(当時)は「日田彦山線を(災害を契機としたローカル線切り捨ての)最初の事例にしてしまえば全国にどんどん広がる。私たちは一歩も引きません」と語りました。
ところが、被災3年目の2020年になって、福岡県は不通区間のバス路線化(BRT)を「容認」すると表明し、JR九州とともに日田彦山線を廃線にする側に立ちました。この県の「裏切り」によって、2020年7月に、彦山駅から宝珠山駅を専用道区間とするBRT(バス高速輸送システム)で復旧する方針が押しつけられました。
JR九州の九州全体の鉄道利用者の推移をみると、1998年度を100として2019年度は108・0と増えています(資料:九州運輸要覧)。JR九州は、株式上場以降、利益第一主義を強めています。しかし、同社は、ただの民間企業ではありません。国民の巨大な財産を譲り受けたうえに、巨額の財政支援や固定資産税などの優遇を受けてきたことを肝に銘じ、それらを元手にあげている全体の収益で「鉄道ネットワークを維持していく」社会的な責任がある企業です。
災害で不通になった道路や橋が復旧されないことなど考えられませんが、鉄道は災害による廃線が相次いでいます。災害で不通となった鉄道を廃線に追い込んだり、復旧に手を付けずに放置することは、被災地の復興を妨害し、災害による地域の疲弊を加速させることになります。
JR九州は、株式上場後、駅の無人化、大幅減便などを沿線自治体や住民の反対の声にも耳を貸さずに繰り返してきました。2022年も3月のダイヤ改正にあわせ、29駅(うち県内9駅)を無人化、切符の販売窓口も48駅(県内24駅)で廃止しました。JR九州が公表している2020年度駅別乗車人員によると、無人化される駅には、1日の乗車人員が、篠栗線の門松駅(1132人)、日豊本線の南行橋駅(1122人)のように、コロナ禍でも1000人を超えている駅がありました。また、有人駅であっても時間帯により駅員が不在となる「時間帯無人駅」も増やしています。
駅の無人化は、安全面や利便性、バリアフリー化、定住促進や地域活性化に逆行します。利用者の声を聞かない一方的な減便は、利便性を損ね、さらに利用者を減らす悪循環におちいります。
2006年、新しいバリアフリー法(バリアフリー新法)が制定され、2018年に、理念として、「共生社会の実現」、「社会的障壁の除去」を明示するなど改正されています。「誰もが自由かつ安全に移動・利用することは基本的権利である」という考え方にたち、「事業者まかせ」ではなく、国として、国民の足の確保、交通・移動の権利を保障しうる施策を計画的に実施することが必要です。
相次ぐ駅ホームからの転落事故を防止するため、ホームドア設置は喫緊の課題です。
全国でも無人駅が増加しています。2019年度4564駅(総駅数比48・2%)あり、この5年間で104駅増加しています。
1日当たり3千人以上が利用する3580駅で、段差が解消されている鉄道駅は、2019年度で92%です。300駅近くがまだ整備されていません。1日5000人が利用する駅でも112駅がまだ未整備です。
海洋プラごみをはじめプラごみ対策は、地球環境の将来がかかる大問題です。
日本は、プラごみの再利用分を除いて7割を焼却処理し、残りを埋め立てています。政府は、焼却処理の8割弱はエネルギー回収しているから、リサイクルだと主張しますが、国際的には焼却によるエネルギー回収はリサイクルとは認められていません。そもそもプラスチックの焼却は化石燃料を燃やすことと同じであり、二酸化炭素の排出により温暖化へ深刻な影響を与えます。
行き場を失いつつあるプラごみの拡散・流失を抑制するためにも、生産の段階から環境に負荷を与えるプラスチックを減らすことが不可欠です。政府は「プラスチック資源循環戦略」で、使い捨てプラスチック25%削減を掲げていますが、2050年、CO2排出「実質ゼロ」に見合うものではありません。
2021年5月に「プラスチック資源循環法」が可決・成立しました。同法では、容器包装か製品かに関わらず、プラスチックのリサイクルを進めるとしています。企業に対し、ストローやスプーンなどの使い捨てプラ製品の削減、リサイクルしやすい製品づくりや代替素材への転換を推進するとしています。また家庭から排出されるプラスチックごみの回収については、企業による自主回収と、自治体が行なう容器包装プラの回収と一緒に回収しリサイクルを行なっていくとしています。
しかし、今回の新法でも企業の負担は限定的で、自治体と住民に負担を押しつける仕組みは変わっていません。
世界では、使い捨てプラスチック製品の製造・販売・流通の禁止に踏み込む流れが広がっています。一方で日本は、1人当たりの使い捨てプラスチックの廃棄量が米国に次いで2番目に多い国です。
レジ袋など使い捨てプラスチック製品を含むプラごみの削減には、企業の自主的努力まかせでなく、発生元企業の責任において不必要なプラ製品を生産しないなどの適切な規制が必要です。
北九州市若松区にあるPCB処理施設は、2019年3月31日に高濃度の処理が終了し、三重県以西の西日本に残っているそれ以外のPCB処理は北九州市に搬送され、2021年度末までに処理される予定でしたが、処分する量が増え、処理作業の期限を2年延長するという国からの要請が2021年9月に発表されました。
犬や猫などのペットは、いまは単なる愛玩動物としてだけでなく、コンパニオン・アニマル=「伴侶動物」と考えて飼育する人も少なくありません。保健所への持ち込みや捕獲による犬や猫の殺処分数は、この間、市民団体や保健所の譲渡・返却の懸命の努力で2010年度には年間20万件を超えていたものが、2020年度には2万3800件まで減少しました。
環境省のデータにもとづく2020年度の都道府県別殺処分数の順位で福岡県は、1067件で全国9位でした。福岡県と人口が近い北海道が175件の40位ですから、異常な多さです。殺処分率=殺処分数÷収容数(収容された犬猫のうち何%が処分されたか)で福岡県は、全国平均の36・6%を上回る39・1%です。
この間の新型コロナのパンデミックで在宅機会が増えて、ペットを飼い始める人が急増し、同時に手放す人も増えていることに懸念が広がっています。
環境省による「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」(2014年6月)の要旨には、「殺処分をできる限り減らし、最終的にはゼロにすることを目指します」とあります。
愛護団体の粘り強い働きかけを受けて、超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」が提案した改正動物愛護法が2019年6月に可決、成立し、2021年6月から施行されました。飼育頭数など数値規制については2024年6月に完全実施です。
改正法では、ペットショップなど動物取扱業者に順守を義務付ける基準として、飼う施設の構造や広さ、従業者数、環境管理、疾病への対応、展示・輸送方法、繁殖回数・方法などについて環境省が定めました。
2022年6月からマイクロチップ装着の義務化は、繁殖業者などが対象で、犬猫の生年月日や業者の情報が分かる識別番号が記録されたチップを、犬猫に装着されます。犬猫を買った人は飼い主情報を登録する義務が生じます。すでに飼っている人は、装着は努力義務となります。
動物愛護法の改正で、愛護団体の要求も取り入れられましたが、殺処分を減らすためには、なによりも飼い主の責任として、終生飼育が基本です。同時に、引き取り手の見つからないまま子猫・子犬が処分されることがないよう、里親を探すなど譲渡する数をふやすことが依然として重要です。
改正法では動物愛護管理センターを都道府県は設置し、動物の適正飼養・保管の専門知識をもつ動物愛護管理担当職員を置くと定め、政令市・中核市、特別区にも動物愛護管理担当職員を置くよう努めるとしています。さらに自治体と「民間団体との連携の強化」や、「地域における犬猫等の動物の適切な管理」が加わり、国はそのための情報提供、技術的助言など必要な措置を講じるとしていますが、現状では担当する自治体職員の補充や予算の確保が進んでいません。
子犬は引き取り手が見つかりやすいのに比べ、成犬はみつけにくく処分されることが多いといわれています。譲渡の可能性を広げるためには、性格を知り、生活ルールなどを身に付けさせ、一定期間の健康管理をするなど手間と時間が必要です。行政だけでこうした措置をカバーすることは困難です
動物の保護に力を尽くしている支援団体も、コロナの影響でボランティアの確保や財政的な基盤である寄付にも影響が出ています。
気候変動の影響で、豪雨、風水害などの気象災害が増加し、地域によっては、命を守るためのくり返しの避難を毎年余儀なくされています。また、実際に災害が起きた場合は、一定期間の避難所生活を強いられます。避難指示が出ても、家族同様のペットを放置できないと、自宅にとどまる人もあります。
元々人手不足で過重労働だったエッセンシャルワークの現場は、コロナ危機でたちまち「崩壊」状態になりました。これを知りながら放置している自公政権の責任は重大です。他の先進国と比べて少なすぎる医師・看護師、教員を増やし、ケア労働者の賃上げと処遇改善を実行し、保健所や消防の職員をはじめ必要な公務員を抜本的に増やすことで、「危機に強い福岡県」にします。
岸田首相が2022年10月の臨時国会の所信表明で、新型コロナの対応について、「行動制限を行わずに、今年の夏を乗り切れた」と言ったのには耳を疑いました。「第7波」による死者は1万3000人を超え、最悪となっています。無為無策、なりゆきまかせの対応への厳しい反省を強く求めます。
いま、とくに重要なのは、政府が「ウイズコロナ」への対応として、「療養の考え方の転換」なるものをすすめようとしていることです。今後、発熱外来を受診できる対象を、高齢者、基礎疾患のある人、子ども、妊婦に絞り、それ以外の患者は、自己検査を行い、自宅療養を求めるというのです。今年の冬にかけて、コロナとインフルエンザの同時流行が危惧されるもとで、高熱に苦しむ患者が医療を受けられない事態が、さらに深刻化しかねません。
1日に受け持つ授業数でみた現在の教員定数は、教職員定数を定めた義務教育標準法の制定時と比べ2割も足りません。文部科学省による初の全国の公立学校の「教師不足」に関する実態調査結果(2022年1月31日公表)をみると、2021年4月の始業日時点で小中高校、特別支援学校で2558人の教員が未配置、同年5月1日時点でも2065人が未配置という深刻さです。ところが、新型コロナの感染拡大で子どもたちへのきめこまかな支援が求められてきたにもかかわらず、岸田政権は2022年度に公立小中学校の教職員を3302人も減らそうとしています。
●国に対して、小中学校で9万人の教員定数増を計画的に進め、同時に少人数学級を推進することを求めます。
教員不足の最大の原因は、平均勤務時間が1日約12時間という異常な長時間労働です。公立小学校で3割、公立中学校で6割の教員が過労死ラインを超える長時間労働を強いられています。その結果、精神疾患の休職者が毎年5千人を超えるなど、病休や中途退職に追い込まれる教員が後を絶ちません。
さらに本来必要な教員まで非正規教員の大量採用でまかなうため、病休等の代わりが見つからない。欠員が出ると残った教員に負担がしわ寄せされ、ドミノ倒しで教員が倒れています。2学期、3学期と進むほど病休などが増え教員不足は加速します。年度当初の文科省調査は氷山の一角です。こうした長時間労働は、小学校の教員採用倍率が3年連続で最低となるなど、学生が教職を避ける傾向すらもたらしています。
多忙化の要因の一つだった教員免許更新制度(2009年導入)は、退職教員などの免許を失効させ代替教員の確保をきわめて困難にしたため、廃止せざるを得なくなっています。ところが、岸田政権は教員免許更新制度の廃止と引き換えに、教員の研修受講履歴の記録と管理を教育委員会に義務づけ、教員への統制を強めようとしています。これでは学校現場の疲弊と教職の魅力低下は拍車がかかる一方です。
そもそも、政府が何回も教育現場の「働き方改革」を叫んでも、なかなか成果が出ないのは、教員不足と不要な負担を放置し続けているからです。
厚生労働省が集計する「保育所等関連状況取りまとめ」によると、2022年4月1日時点の待機児童数は、調査開始以来、最少となる2944人で3千人を切って過去最少を記録する一方、直近のピークである2017年4月の2万6081人の約9分の1に減って、「待機児童ゼロ」を達成した自治体は85・5%にもなりました。2022年4月1日現在の福岡県の待機児童数も、2015年度以降最少の100人となっています。
しかし、国や自治体の待機児童数には、「隠れ待機児童」がカウントされていません。「家の近くの保育園でないと通わせられない。」「きょうだいで別々の園は困る。」「入園が決まらなくて就職活動すらできない。」――こうした理由で入園できなかった子どもは、いわゆる「隠れ待機児童」とよばれています。
2022年4月時点の隠れ待機児童は、昨春に比べ1123人減ったものの、「待機児童数」の24倍の7万2547人(国の企業主導型保育事業の利用者も含む)にのぼり、5年前(17年6万9224人)から減っていません。
待機児童数と隠れ待機児童数(地方単独事業を利用している者を含まず)の合計順位(2021年4月1日)でみると、福岡県は、47都道府県中7位で2670人です。人口510万人の福岡県の待機児童数が、人口520万人の北海道の待機児童数1571人の1・7倍です。また、福岡県の公営保育所等保育士数は2119人で2002年の3739人の56・7%に激減し、公営保育所等保育士数は人口510万人の福岡県は人口520万人の北海道の67・4%しかありません(2019年、総務省調査)。
2015年からは「子ども・子育て支援新制度」(以下「新制度」)を導入し、市町村の保育の公的責任を後退させ、規制緩和と企業参入を拡大してきました。ビルの一室、園庭・ホールのない保育園が増え、保育園内での事故やお散歩先で子どもが置き去りにされる事態が増加するなど、保育の質の低下が大きな問題になっています。
さらに政府は2021年度から始めた「新子育て安心プラン」に、クラス担任を非正規でもよしとする新たな規制緩和を盛り込みました。さらに、保育の質の確保を担保するための保育所等に対する年1回の実地監査の義務付けをなくし、書類やリモートで可能とする案も検討しています。
この間、認可保育所より基準が低い小規模保育(0~2才対象)を促進し、認可外の企業主導型保育は7万人分も作られました。公立保育所の統廃合・民間委託を促進し、認可保育所が足りない地域でも進められ大きな問題になっています。
コロナ禍で業務量が増えるなど、保育士の負担は大きくなっていますが、根本的な配置基準の引き上げはなされず、賃金の底上げも進んでいません。
長年自公政権は、「基準緩和」と「詰込み」をすすめ、公的責任を投げ捨て民間・企業頼みの安上がりな保育を推進してきましたが、待機児童ゼロさえ実現できていないのです。
自公政権は、保育所の「待機児ゼロ」の目標達成を先送りしています。「受け皿」拡大は、保育士が基準の半分の「企業主導型保育施設」など、基準緩和・詰め込み型が中心で、求められる認可保育所の建設が足りず、「保育の質の低下」が重大な問題になっています。
国や自治体はこれまで、入園できる園児の定員拡大を推し進めてきましたが、保護者の保育ニーズとの溝は埋まらないままです。定員拡大にともなって、定員に満たない園も増加し、先行きに不安を抱える園の声が広がっています。
要因には、国や自治体から給付される運営費が、園児の定員に対してではなく、入園している園児数に応じて支給されることがあります。園が定員に応じた保育士らを雇用しても、定員に満たなければ、保育士の人件費などは園側の負担になるからです。
これまで、認可保育園への入園は、進級や卒園によって定員に空きが出やすい「4月」でないと難しい実態でした。ただ、出産や復職を希望するタイミングに合わせ、本来はいつでも入園できるような余裕があることが望ましいのです。育児不安や入院など、急に保育を必要とする場合にも、定員の余裕は必要です。専門家からは、受け皿の量的な拡充に力を入れるだけではなく、より丁寧な要望の把握を進めるほか、質の向上にも軸足を移していくことが必要との指摘が出ています。
保育所は、コロナ禍であっても、社会的インフラを支えるため開所を続け、保育が果たしていえる社会的役割が浮き彫りになりました。保育所は、マスクの着用が難しい子どもたちが多く、密が避けられない環境です。保育士たちは感染対策と子どもの発達をどう両立させていくか、行事や保育内容を見直すなどそれぞれの園が様々努力をおこなってきました。
子どもたちへの感染も広がり、全国の保育所でクラスターが発生し、多くの園が全面休園するなど、休園や登園自粛が求められ、働く父母にも大きな影響を与えてきました。政府からはまともな対策が打たれず、こまめな消毒などの感染対策の業務負担は増えてもそれ見合う体制の補充はなく現場は疲労感が増しています。
感染対策の面からも、子どもたちの成長・発達の面からも、保育士が安心して保育ができるゆとりある保育基準をつくることがどうしても必要です。
子どもたちが放課後や休みの日に、生活の場として安全に安心して過ごせる学童保育の拡充は、働く父母の切実な願いです。コロナ禍でも、学童保育は働く父母を支えるため、開所し続けました。学童保育が社会的に必要不可欠な施設であり、その果たしている社会的役割の重要性が浮き彫りになりました。
しかし、学童保育は施設数が足りず待機児童も多くいます。厚生労働省の基準では、集団の規模は「おおむね40人以下」とされていますが、今も4割が41人以上の大規模施設です。施設環境も不十分なところが多く、指導員の処遇は大変低い、市町村事業なので各自治体の裁量で施設や運営に大きな違いが生じるなど問題が山積しています。
最大の要因は、自公政権が長期にわたって法的拘束力のある施設基準の制定をしてこなかったことにあります。2014年に初めてできた施設基準も極めて不十分でしたが、そのわずかな基準さえもすぐに後退させるなど、一貫して学童保育、子どもたちの安心・安全な育ちを軽視する自公政権の姿勢にあります。
保護者と指導員のみなさんとともに、安心して預けることのできる学童保育をつくり、ひろげるために、遅れた学童保育制度を抜本的に拡充します。
父母や指導員たちの長年の運動によって、2014年にようやく厚生労働省が設備と運営に関する基準を示しましたが、子どもの安全を守ることが第一義的に求められている学童保育のそれを保障する「従うべき基準」とされた職員の複数配置が、人手不足を理由に「参酌化」に改悪されました。
指導員不足の背景には、その専門性に反し低すぎる処遇があります。指導員の多くが非正規雇用で、年収は半数以上の指導員が150万円未満という状況は深刻です。
温暖化など地球規模での気候変動の影響で、県内でも豪雨による深刻な被害が相次ぎ、今後も懸念されています。そうしたなか、開発や防災対策のあり方、監視・観測や研究体制の脆弱さが改めてきびしく問われ、従来の延長線上でない「防災対策」の抜本的な転換が求められています。
近年、県下の豪雨災害では、過去に経験がない雨量をもたらし、国の一級河川である筑後川や遠賀川でたびたび危険水位をこえ、支流の水を本流に流せなくなり、広い範囲で内水氾濫を起こし、深刻な浸水被害をまねいてきました。とくに、久留米市や大牟田市では、毎年同じ地域で浸水被害が起きています。
県が管理する52水系のうち、河川整備計画が策定されているのは17水系のみです。日本共産党県議団が要望を続けた結果、河川の浚渫(しゅんせつ)などの予算は2021年度にわずかに増えましたが、県単独予算であるため長年にわたって減らされ続けてきました。
近年の豪雨災害の特徴は、土砂災害の発生で多くの人命が失われていることです。土砂災害は「自然崖」だけではなく、都市部住宅地にある「人口崖」で起きているものも少なくありません。ところが、災害復旧への公的支援は「自然崖」だけが対象のため、人家のある場所の「人口崖」を自力復旧できないままブルーシートを張ったままのところも増えており、二次災害が心配です。
県内に1万3000箇所以上ある土砂災害危険箇所のうち、特に緊急を要する土砂災害危険箇所5571カ所の未整備率は80%強と大幅に遅れています。
被災者の生活再建、被災地の復興の大きな障害になっているのが、「私有財産は支援しない」という国の「原則」です。被災者の運動で、被災者生活再建支援法や中小企業再建のためのなりわい再建補助金制度などで、この「原則」は崩れつつありますが、この「原則」を抜本的に転換し、被災者や被災事業者が自力で歩んでいけるまで必要な生活再建に向けた支援を行う政治へと転換させます。
発災時の応急対策や被災者支援だけでなく、防災や復旧に関する計画の作成や修正、防災情報の観測・伝達など、防災に関する人員体制を充実させなければなりません。
大規模な災害発生時、消防や警察などの救援部隊を全国的に派遣する体制は急速に整備されてきました。一方、地域の防災対策を日常的に点検・強化し、災害発生時には被災者救助の中心的役割を担う市町村消防の実情は、職員の不足が常態化しており、広域化による市町村災害対策本部との連携や地理不案内による初動体制の遅れなどが懸念されます。
福岡県内の24の消防本部(局)の消防職員数は、定員5078人に対して実員4954人と124人足りません(2021年)。半数余の消防本部(局)が定員割れです。
国家公務員全体の非正規率は22・1%(2019年4月1日)で、もっとも非正規率が高い省庁が、コロナ危機のもとで公衆衛生や労働行政を担う厚生労働省の53%です。総務省によると、非正規の地方公務員は15年で1・5倍に増え、3人に1人が非正規公務員で、その4人に3人が女性です。福岡県内の市町村職員の非正規率は約44%(2020年4月1日)で、1万4000人余の非正規職員がいます。
政府公表の「人口1000人当たりの公的部門における職員数の国際比較」では、フランス90・1人、イギリス67・8人、アメリカ64・1人、ドイツ59・7人に対して、日本は36・9人です。「公務員が多すぎる」キャンペーンはまったくのデマでした。日本の国家公務員数は、2001年の中央省庁再編時から3分の1に減らされました。国も地方も人件費を削るために、正規公務員がしていた仕事を賃金が3分の1の非正規公務員に置き換えただけです。コロナ危機や多発する自然災害で、公務員の重要性が見なおされています。
この間、新型コロナウイルス感染者の入院調整などにあたる県職員12人の時間外勤務が月200時間を超えていた(2021年5月)など、国が「過労死ライン」とする月100時間を大幅に上回る事態が相次いできました。2021年5月に読売新聞が、九州沖縄の12自治体(県と市)の保健所職員の残業時間を調べました。100時間以上の職員が3割以上となったのは福岡県、福岡市、熊本市の3自治体で、職員の平均残業時間は福岡県の92・7時間が最長でした。
福岡県は、「財政難」を理由に県職員の定数を抑制し続けてきましたが、新型コロナ危機から住民の命を守れないほど“減らしすぎ”ていることが明らかになりました。
この間、多くの地方自治体が、新型コロナ対策として、「財政調整基金」という自治体の貯金を取り崩しており、自治体財政が一層圧迫されています。これに対して政府は、地方創生臨時交付金で手当てするというものの、全国知事会はそれでも不足しているとしています。福岡県の財政調整基金など3基金は、2019年度残高357億円から20年度残高229億円へ、コロナ対策として95億円取り崩されています。
立命館大の平岡和久教授(地方財政論)は「国のコロナ対策が不十分で感染が広がり、自治体の支出は増え、経済は悪化している。穴の開いたバケツに(国の臨時交付金を)逐次投入するが、うまくいかないという状況ではないか」と指摘しています。
同時に、基金はコロナ禍や物価高から県民の生活と生業を守るためにこそあるのであり、県はすでに基金の残高をコロナ前まで回復させていることをみても基金の活用にちゅうちょする理由はありません。
県が策定した「福岡県財政改革プラン2022」(5カ年計画)は、「今後、高齢化の進展に伴う社会保障費や、県債の償還のための公債費など義務的に支出する経費の増大が続くことから、本県財政を取り巻く環境は厳しさを増している。さらに、令和2年度には、新型コロナウイルス感染症対策や県税の大幅減収による多額の財政調整基金等三基金の取崩しを経験するなど、経済の急変に対応するため、その残高を確保する重要性が増している」として、5つの柱――1)事務事業の見直し、2)社会保障費の増加の抑制、3)建設事業の重点化、4)効果的・効率的な組織体制の整備、5)財政収入の確保の改革措置を打ち出しています。
日本共産党が提案する県財政改革対案の3つの柱は、「県財政改革プラン」に決定的に欠如している立場であり、やればできるし、やれば夢と希望が語れる内容です。
地方自治体が、平時も非常時も「住民の福祉の増進」という本来の役割にふさわしく住民の命と暮らしを守ることを最優先にとりくむためには、国による財源の保障が欠かせません。自公政権による地方財政の抑制路線を転換し、医療や介護、子育てや地域振興など自治体の財政需要に見合った一般財源総額の確保と、地方交付税の充実が必要です。
長引くコロナ禍のなか、地方公務員の長時間労働が深刻です。日本自治体労働組合総連合の調査では、「保健所やワクチン担当部署で平均時間外労働時間が100時間に達していた職場さえある」と告発しています。労働基準法第33条第3項にある「臨時」の超過勤務が無制限・青天井となっています。過労死ラインを超える長時間労働は規制されるべきです。何より必要なのは、人員の増員と適正な配置です。
人手不足をもたらした原因は、国が自治体職員定数の純減を押し付けてきた集中改革プランです。プラン以降も職員定数の抑制基調がもたらされました。
新自由主義的な経済政策は、非正規雇用を増やして賃金を抑え、社会保障の負担を増やし、教育費の大きな負担を放置し、消費税を10%まで引き上げました。気候危機打開にも、ジェンダー平等にも本気でとりくまない政治が続いています。その結果、貧困と格差を広げ、県内の地域経済の衰退を加速し、国と地方の財政も悪くしました。
長生きできるようになったのは、経済大国になったからです。そして経済大国になったのは、いまは高齢者のみなさんが懸命に働いてきたからです。感謝をこめて経済力にふさわしく「長生きを喜べる国」にするのが当たり前です。ところが、自公政権と財界は、社会保障を手厚くすると保険料や税負担が増え、経済成長が抑制されるとして、高齢化がすすむなかで「現役世代の負担軽減」などと称して社会保障予算を連続削減してきました。
社会保障の財源が足りないのは、高齢者が増えたからではなく、富裕層や大企業の税負担を優遇し、経済力ふさわしい税収を投げ捨てているからです。また、使い捨てのワーキングプアを広げ、現役世代が社会保障を支えられなくしているからです。ここにメスを入れ、日本の経済力にふさわしく社会保障の予算を増やせば、将来不安が低減して消費を喚起し、この分野への投資と雇用も増えます。現に、社会保障を削ってきた日本が「経済成長できない国」になり、日本よりも経済力が小さなヨーロッパの国々が立派な福祉国家を築きながら高い経済成長を実現しています。
県と日本共産党を除くすべての会派の県議会議員があげて推進する下関北九州道路計画は、約3500億円に達するといわれています。何よりも、小倉東断層をまたぐ無謀で危険な計画であり、必要性も採算性もない事業であることは、これまでの国会、県議会、市議会での日本共産党の追及で明らかになり、当局はまともな説明さえできなくなっています。
下関北九州道路推進勢力は、その必要性について、「関門トンネル、関門橋の老朽化にともなう代替道路としての役割」「交通事故で関門トンネルの渋滞や通行止めが頻発している」ことをあげています。
現在のトンネルと橋の「老朽化」については、道路を管理するネクスコ西日本(西日本高速道路)自身が、党北九州市議団の聞き取りに対して、「関門橋も喚問トンネルも定期的にメンテナンスをすれば、まだ長期につかえる。阪神淡路大震災なみの地震でも大丈夫」と太鼓判を押しています。
「渋滞や通行止め」については、「工事を除くと通行止めは、2016年までの5年間で405時間、1日当たり12分弱で、落下物によるものが大半」(ネクスコ西日本)です。
関門橋と関門トンネルの設計上の1日あたり通行可能な車両台数は、合計8万4000台で、2017年度の1日平均通行台数は、橋・トンネルあわせて約6万5000台です。余裕があり、かつ通行台数は減少傾向です。
下関北九州道路の採算性も大赤字です。市当局も「通行料金では建設費はまかなえない」と認めています。試算では、通行料金は普通車280円、1日2万2200台で年収約23億円です。建設費約2000億円(現在は約3500億円という試算)、30年返済として、年間の返済金は、利息を除く元金だけでも約67億円です。年間数十億円にのぼる赤字は、税金で穴埋めすることになり、地元負担となる可能性大です。
何よりも安全性が大問題です。計画路線の直下には、「小倉東断層」という活断層があり、政府の地震調査委員会は、マグニチュード7・1、2mの活断層のずれを予測しています。
かつて第2関門橋とよんでいたこの計画は、2008年にわが党の仁比聡平参議院議員の質問に、冬柴鉄三国交相(当時)が「今後は調査を行わない」と答弁し、いったんは凍結されました。ところが、2019年、当時の安倍政権が、下関北九州道路整備計画の調査を突然国直轄事業に移行させたのです。この決定について、自民党の塚田一郎・国土交通副大臣が福岡県知事選挙の応援演説で「総理とか副総理が言えないので私が忖度(そんたく)した」と発言したことが大問題になりました。日本共産党の仁比議員は19年の参院決算委員会で、与党国会議員有志で結成された「関門会」が2016年に石井啓一国交相あてに提出した要望書に安倍晋三首相(当時)の名前があることを明らかにして、「忖度させてきたのではないか」と追及しました。
その後、2020年7月、国土交通省社会資本整備審議会道路分科会中国・九州地方合同小委員会において海峡部を吊橋とする案が承認され、同年12月、国土交通省社会資本整備審議会道路分科会中国・九州地方合同小委員会において彦島(下関市)~日明(北九州市小倉北区)間を橋梁で繋ぐルート案が承認されました。2021年3月30日には、国土交通省が、下関と北九州両市中心部を約8キロの最短距離で結ぶルートで事業化を目指す方針を決め、2021年度から環境影響評価と都市計画決定に向けた調査が行われています。
自治体主導の「下関北九州道路整備促進期成同盟会」は、地元経済団体や企業で組織する「下関北九州道路建設促進協議会」等と連携しながら、早期実現に向けた気運を高め、必要性を広くアピールするためとして、「下関北九州道路整備促進大会」を開催しています。その整備促進大会が7月31日、新型コロナ禍で3年ぶりに下関市で開かれ、早期の事業化に向け、地元政財界関係者が気勢を上げました。
大会では、同盟会会長の村岡嗣政・山口県知事が「事業化に向けて歩みが着実に進められ、地元の機運も一層の高まりを見せている」とあいさつし、副会長の服部誠太郎・福岡県知事も「この地域が世界から選ばれ、持続的な発展を遂げていくために早期の整備が必要だ」と訴えました。与野党問わず、地元選出国会議員も早期整備を訴えました。
山口県の村岡知事は、「(安倍元首相は)道路の重要性を認識し、大変な後押しをしてくれた。このプロジェクトはしばらく前に進まなかった時期があるが、安倍内閣の下で再び前に進み始めた」と評価しています。
8月31日に服部知事は、山口県知事(下関北九州道路整備促進期成同盟会会長)や中尾正幸県議会議員(北九州下関道路整備促進福岡県議会議員連盟会長)、吉村悠県議会議員(同連盟事務局長)らと、下関北九州道路の早期整備に向け、国土交通省などに対し、要望を行いました。知事は、「本県が世界から選ばれ、持続的に発展していくためには、本道路の早期整備が必要と考えている」と話し、必要な手続きが着実かつ迅速に進められるよう要望しました。
自治体主導の「下関北九州道路整備促進期成同盟会」は、福岡・山口両県、北九州・下関両市及び地元経済団体等で構成され、下関北九州道路の整備促進、調査、研究などを行っています。会長は山口県知事、副会長は福岡県知事、北九州市長、下関市長、会員に中国経済連合会会長、九州経済連合会会長ほかが名を連ねています。
財界主導の「下関北九州道路建設促進協議会」は、会長が九州経済連合会の倉富純男会長、副会長が中国経済連合会、福岡県商工会議所連合会など、理事には日本製鉄、九州電力、JR九州、西鉄などの九州・山口の大企業がずらり、監事に福岡銀行、顧問に福岡県と北九州市、山口県と下関市などが名を連ねています。
これらの布陣をみてもわかるように、財界・大企業の目先のもうけのために、自公政権と県政をあげて突き進んでいる事業です。残念ながら、国政では野党の国会議員、県会議員らも、日本共産党以外は推進の立場で、7月の下関北九州道路建設促進大会にも参加しています。ブレーキをかけるべき福岡県議会では、自民・公明をはじめ日本共産党以外のすべての会派が北九州下関道路整備促進福岡県議会議員連盟に参加し、アクセルを踏みっぱなしです。
福岡県の児童生徒数(公立)は、2021年5月1日現在、小学校27万9290人、中学校13万9657人、特別支援学校(幼稚部~高等部)6440人で、計42万5387人。文部科学省が出している公立小中学校・夜間定時制高校の1人当たりの給食費が3967円(コロナ前の2018年度)で単純計算すると、無償化のための費用は16億8700万円余ほどです。下関北九州道路の事業費3500億円――これだけあれば、県内の学校給食費を、20年間無償化できます。
下関北九州道路推進勢力は、2023年度にもその都市計画決定をめざしており、今度の県議選での党の躍進は決定的なノーの審判となります。
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