
物価高騰と国民生活の悪化が深刻になっています。ところが岸田政権は、物価高騰と異常円安をもたらしているアベノミクス・「異次元の金融緩和」に固執し、対応不能に陥っています。「構造的賃上げ」と言いながら中身はなく、物価高騰のさなかに医療や介護の負担増を次々と押し付けるという血も涙もない政治を行っています。「総合対策」を打ち出しましたが、物価高騰はすべての分野で起きているのに、電気・ガス料金の抑制など、部分的・一時的対策に終始しています。
毎月発表される全国消費者物価指数によると、電気代や都市ガス代は前年比で2割前後上昇しています。帝国データバンクの主要飲食料品メーカー調査によると、2022年10月以降に値上げされる食料品は約7000品目にものぼり、年内では累計2万品目超、平均値上げ率は14%にも達するとされています。さらに、円安が急速に進むなか、「1ドル=145円の円安が続けば今年度家計負担増は8万円超」(みずほリサーチ&テクノロジーズの調査リポート)との試算も示されています。
政府の対策がいまの物価高がもたらす生活苦を打開できる内容ではないことは明らかです。
追加策を決めた政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」に内閣府が提出した資料には、大企業の経常利益は「円安による押し上げもあり…過去最高水準に」なる一方で、「中小企業(の利益)は原料高の影響もあり減少」したと記述されています。さらに低所得者層が食費・光熱費がかさんで消費を削らざるをえなくなっている現状が示されています。続く輸入物価の上昇への「円安の影響は5割程度」にもなると指摘しています。
ところが、岸田政権には、異常円安をもたらした「異次元の金融緩和」(アベノミクス)への反省は一切ありません。日銀は「異次元の金融緩和」政策の維持を発表しました。これでは、いくら物価対策をしても、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。
現状を打開するためには、賃上げを軸に実体経済を立て直すこと、とりわけ内需を活発にすることに本腰を入れることが必要です。そこに踏み出してこそ、マイナス金利などという異常な金融を正常に戻すこともできます。
金利を引き上げると、特に財政に対する影響が問題だとされます。しかし、財政収支試算(「中長期の経済財政に関する試算」2022年1月)では、長期金利が2027年度に1%となり、29年度には2・2%になっても、国の一般会計の税収と歳出の差額は、2022年度に比べて改善することになっています。
金融政策の転換ができないのは、日銀は債務超過に陥るからだともいわれています。金利上昇を認めると当座預金への付利が増大します。仮に金利を1%引き上げれば、年間でおよそ5.6兆円、保有国債が全額償還されるまでの期間で、およそ34兆円という巨額のものになると推計されています。これは、大規模な金融緩和で巨額の国債を買い続けた失政がまねいたもので、金融政策を正常化しようとすれば、いずれは必ず問題になることです。ただし、日銀の場合には、債務超過に陥っても、民間企業とは違って日常の業務に支障が出るわけではありません。
いま問題なのは、急激な円安対処のために、金融政策の見直しが緊急に必要になっているということです。このまま、破たんした金融政策を続け、国民生活と日本経済まで破たんさせるわけにはいきません。
金利上昇による国民生活への影響で懸念されるのが、中小企業の融資や住宅ローンの返済です。だからこそまず、金利が上がっても大丈夫な経済状況を早く作らなければなりません。それは何といっても、日本共産党が提案するように、大企業の内部留保を財源に中小企業での思い切った賃上げ後押しすることを軸に、暮らしを応援して実体経済を良くすることを最優先にすえた経済政策への転換です。
自公政権は、アベノミクスで消費税を5%も引き上げ、年額12・5兆円、国民1人当たり年間10万円もの大増税を行い、これが消費を冷え込ませ、経済の悪化をもたらしました。そのうえ物価高騰によって、1年前に比べた家計の負担増は、1世帯当たり約10万円にもなります。
ほとんどすべての商品とサービスに及ぶ物価高騰の影響は、所得の少ない人ほど深刻です。消費税5%への減税こそ、「だれ一人とりのこさない」物価対策、暮らしを守る最も効果的な対策です。
県内の中小企業は、コロナ危機と物価高騰によるダブルパンチに苦しんでいます。各種調査では中小事業者の多くが仕入れ値の上昇分を価格に転嫁できないと答えています。
世界では、コロナ危機以降、100もの国と地域が付加価値税(消費税)の減税に踏み切っており、日本でもただちに減税に踏み切るべきです。
自公政権は、物価高で苦しむ事業者を追いつめる「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)を2023年10月から強行しようとしています。それは、年間売り上げが数百万円しかない消費税免税事業者に新たな税負担と事務負担をもたらし、その影響は、請負労働者や建設職人など、最大で1000万人に及ぶとされます。
※参考資料(日本共産党HPより)
インボイスって何? どんな問題があるの?
◆インボイス(英語では「invoice」)とは、
一般には「請求書」のことで、品物を輸出するときに品目や数量、価格などを記載して添付する「送り状」の意味でよく使われます。消費税との関連では、業者間で消費税が課税される商品やサービスの取引をした際に、消費税を受け取った側の業者(品物などを販売した側の業者)が発行する請求書のことで、法律上の名称は「適格請求書」といいます。通常の請求書の記載事項に加えて、「税率別の消費税額」と「インボイスを発行する事業者の登録番号」が記載されていることが必要です。
◆まず知ってほしい 消費税の2つの基礎知識
<基礎知識 その1>消費税は「売った時」と「買った時」の差額を納税
消費税は、日本国内で商品やサービスの売買をしたときにかかります。消費者が買うときにはもちろん、事業者が事業者から買う「仕入れ」のときにもかかります。
消費税を負担するのは消費者ですが、実際に税務署に納税するのは、事業者です。事業者は、お客から受け取った消費税額と、仕入の際に自分が支払った消費税額との差を計算して、その差額を税務署に納税する仕組みです。
<基礎知識 その2>零細な事業者は「免税事業者」になれる
年間の売上を集計して消費税額を計算するのは、事務的にも大変です。税務署も集めるのが大変です。このため、零細な事業者(税抜きの年間売上が1000万円以下の事業者)は、消費税の納税が免除されることになっています。これを「免税事業者」といいます。
◆免税事業者は「益税」を得ているの?
よく、「免税事業者は、お客から受け取った消費税を自分の懐に入れてしまう」というようなことが言われますが、これは間違いです。小売業者がお客から100万円の消費税を受け取っても、それが事業者のものになるわけではありません。仕入れの時に80万円もの消費税を払っているからです。かりに「益税」となる部分があるとしても、最大で20万円です。しかも、実際には、こうした零細事業者の場合、大手業者との競争があるので、値引き販売をせざるを得ず、納税しなくて済む20万円についても「値引きの原資」に充ててしまって、手元には残っていない場合がほとんどです。
◆インボイスがないと「引き算」ができなくなる
消費税は、「売った時に受け取った消費税」と「仕入れの時に支払った消費税」との「引き算」をして、その差額を納税する仕組みです。これまでは、帳簿に「売上額」と「仕入額」がきちんと記載してあれば、この「引き算」ができました。
ところが、来年の10月にインボイスが導入されると、「仕入れの時の消費税」は帳簿だけではダメで、仕入れの時に受け取ったインボイスを保存しておき、それを元に計算する仕組みに変わるのです。インボイスをとっておかないと、この「引き算」ができなくなってしまうため、税務署への納税額が大幅に増えてしまいます。
◆免税事業者はインボイスが発行できない
インボイスには、税務署に登録すると割り当てられる発行事業者の「登録番号」の記載が必要です。その登録は消費税を納税する事業者でないとできません。つまり、「免税事業者はインボイスが発行できない」仕組みになのです。仕入れ先に免税事業者がいると、その仕入れ先からはインボイスがもらえないため、仕入れの際に支払った消費税の一部について、インボイスの保存ができません。インボイスがない分については「引き算」ができないため、納税額が増えてしまいます。
◆結局、零細事業者に大きな負担が
このように、仕入れ先にインボイスが発行できない免税事業者がいると、負担が増えてしまいます。これを避けようとすれば、次のいずれかが起こります。
仕入れ先の零細事業者は、①なら新たな納税の負担が、②なら値引きによる負担が増えます。③なら、仕事そのものを失います。いずれも、零細事業者には大きな負担で、廃業に追い込まれるところが相次ぐことになります。
◆影響は1000万人前後にも?
零細な事業者でも、消費者とだけ取引している場合は、お客さんから「インボイスを下さい」とは言われません。自分の店で消費者に売っているだけなら、インボイスを発行する必要はありません。
財務省の推計では、現在の免税事業者のうち、インボイスの発行が必要になり、新たに課税事業者になるのは個人・法人あわせて161万者だとされています。1者当り平均15・4万円の消費税納税が必要になり、合計2480億円の増税になると試算されています。
しかし、これは控えめな試算です。たとえば、消費者相手のお店でも、大口の注文があった場合には、インボイスを要求されるかもしれません。インボイスが発行できないと、せっかくの大口注文を断ることになってしまうかもしれません。
また、インボイスの発行が必要になるのは、商店や飲食店などの「事業者」に限定されません。最近では、雇用契約によらずに「フリーランス」の形で働いている人が増えており、こうした人々が広く対象となります。その総数は1000万人前後にもなる可能性があると言われています。皆さんのお知り合いにも、影響を受ける方がいるのではないでしょうか?
これらの人の中には、年間1000万円どころか、100万円~200万円くらいの年収しかない人も少なくありません。シルバー人材センターの会員にいたっては、せいぜい50万円くらいです。
こうした人に「課税事業者になって消費税の申告・納税をして、インボイス発行の事務をしろ」といっても、とても無理でしょう。しかし、インボイスがなければ取引先の消費税納税額が増えてしまいます。結局、「消費税分だけ報酬を減らす」ことになって、収入が10%減ってしまうおそれがあります。ただでさえ収入が少ないのに、さらに10%も減ったら大変です。
◆個人情報への不安の声も
昨年10月から、インボイス発行事業者の登録が始まっています。登録した事業者の名前と事業者番号は、国税庁のホームページに掲載され、誰でも閲覧できるようになっています。「取引先が登録事業者かどうかを確認できるようにするため」ということですが、個人の住所も含めた公開されている例もあり、「個人情報が悪用されないか」という不安の声も寄せられています。
◆インボイス中止の声を大きく
インボイス導入は、来年10月からと決まっていますが、影響を受ける事業者でも、まだ制度を知らない人が多い状況です。一方、消費税増税には賛成した保守系の経営者団体などからも、インボイスに対しては「中止・延期」を求める声が出ています。多くの零細事業者やフリーランスを苦しめるインボイスの中止を求める世論と運動を強めましょう。
■インボイス制度反対の声が急速に広がっています。
今年に入って、さまざまな団体からインボイス制度に反対する声が上がっています。
◆2月3日に、一般社団法人日本出版者協議会(出版協)が「インボイス制度(適格請求書等保存方式)に反対する」と題する声明を発表しました。著者・ライター・編集者・校正者・デザイナー・カメラマンといった多くの専門性を持つ人材が関与している出版業界からインボイス制度への反対の声が挙がっています。主な理由は次のとおりです。①消費税控除に必要な適格請求書を発行できるのは課税事業者のみのため、現在免税事業者であるフリーランスにも課税事業者として発行をお願いせざるを得ない。年収1000万円以下の免税事業者が排除されかねない。②仕入側としてもこれまで免税されていた分の消費税を出版社側が負担するのは困難。仕入の際に控除できるかの判定や税率記載が正しいかの確認作業等の事務負担が増加する。
◆4月22日には、「インボイス制度は実施中止・廃止に! 国会内アクション」が開かれました。税理士・イラストレーターをはじめとして約100人の参加と132箇所からのオンライン参加があり、次のような声が挙がっています。「イラストレーターにとっては、免税業者のままでは仕事が来ない。課税事業者になれば生活費を削ることになる。」「飲食店では、 コロナの影響も続く中で消費者の負担が大きい。」「建築業界でも資材の高騰もあり厳しい業界で、消費税を負担できない業者が廃業に追い込まれる。」
◆「日本税理士会連合会」は、全国の税理士団体が集まる団体で、会員数はおよそ7万9000人ですが、税のエキスパートである税理士の団体として明確な反対意見を出しており、6月29日には「令和5年度税制改正に関する建議書」も発表しています。建議書のなかでは事務的負担の増加や免税事業者への負担を挙げ、インボイス制度の延期・見直しを要求しており、今後の動向も注目されています。
◆「全国青色申告会総連合」は、個人事業主やフリーランスの青色申告をサポートする全国団体ですが、反対の姿勢を見せています。会員数は全国およそ109万人と大きな団体で、会員のなかには免税事業者であるフリーランスや個人事業主も多く在籍しています。2020年には「令和3年度 税制改正要望意見」のなかでインボイス制度導入に反対することを公表しました。
◆公益社団法人「日本漫画家協会」は7月4日、「現行のインボイス制度導入反対について」の声明を発表しました。出版社等の発注元が仕入税額控除を行うためには、漫画家からインボイスを発行してもらう必要があり、インボイスを発行するためには免税事業者の漫画家は課税事業者への変更を余儀なくされますと指摘。「声明」では「インボイスを発行できない場合、発注元と漫画家との関係悪化もしくは最悪、免税事業者であることを理由に取引が中止される等のリスクが考えられる」「インボイス発行に伴う事業者の事務処理負担が増加することも懸念され、いずれも漫画家の創作活動を阻害するおそれがある」として、多くの漫画家に不利益を喚起しかねない懸念事項が払拭されていない現行のインボイス制度には反対すると表明し、見直しを求めています。
◆一般社団法人「日本アニメーター・演出協会(JAniCA)」は7月5日、「インボイス制度への懸念に関する意見表明」を発表しました。「取引先の制作会社などから仕入税額控除ができないことを理由に不利益な扱いを受けるおそれを避けるため、課税事業者となる選択を迫られる」と指摘。「3万円以下の少額取引にも適格請求書等が必要など、アニメーターや演出などアニメ制作者のみならず、制作会社にとっても新たに相当の事務負担が発生する」として、「経過措置(免税事業者からの仕入れは全額控除可能)を継続する等の措置」を要望。「軽減税率導入により、事業者免税点制度が実質的に廃止されることは、税の公平という大原則に反する不当なもの」と異議を唱えています。
◆他にも7月には、一般社団法人「日本SF作家クラブ」が反対声明を出しました。
◆「インボイス制度の個人情報の公表・商用利用に抗議する声明文」も発表されています。インボイス制度の中止を求める税理士の会、インボイス制度を考えるフリーランスの会、協同組合日本俳優連合、フリーランスアニメーターの未来を考える会、フリーランスアニメ演出家の未来を考える会、フリーアニメプロデューサーの未来を考える会の6団体の連名です。「作家や俳優、漫画家など芸名・ペンネーム・屋号で活動している者も多く、公に本名を明かす必要はない」と指摘。しかし、国税庁の登録番号の「公表サイト」で本名と登録番号が必ず公表され、一度登録すると、登録を取り消しても7年間は公表サイトに情報が掲載され続けます。しかも、これらの情報を一括で、誰でも簡単に全件ダウンロードできるようになっており、商用利用が可能です。「声明文」は「個人事業主のプライバシーを著しく軽視し、配慮を欠いたものである上、その有効性も極めて疑問であると言わざるを得ない。…本件措置に強く抗議するとともに、かかる方針を直ちに撤回し見直しを求める」とし、「インボイス制度に対し、改めて強く反対する」と表明しています。
◆消費税負担が生活を脅かすレベルになる──税理士の有志団体「インボイス制度の中止を求める税理士の会」は6月9日の会見で、「インボイス制度」に反対の立場をあらためて表明した。同会の佐々木淳一税理士は「誰も得しない税金になる」と訴えました。インボイスを発行するのは商品やサービスを提供する事業者(取引では下請け)だが、発行には国税庁への登録申請(任意)が必要です。現在、課税売上高が1000万円以下の事業者は消費税の納税義務が免除されているが、インボイス発行事業者として登録すると、免税措置が受けられなくなります。これに対し、インボイス制度の中止を求める税理士の会は「経理や税理士の事務負担が増加する」「免税事業者の取引が阻害される」として反対の立場を主張しています。同会は、Twitterなどを通じて賛同する税理士を集めており、賛同者1000人を目標に活動しています。
◆インボイス(適格請求書)制度導入に反対する声優有志グループ「VOICTION」はこのほど、声優の収入実態調査(回答数260件、9月13日から)とインボイスに関するアンケート(183件、12日から)の途中集計結果を発表しました。声優は事務所に所属していてもほとんどが個人事業主であり、インボイス制度導入で2割以上が「廃業するかもしれない」と答え、97%が「反対」と回答。1万人以上といわれる業界が深刻な影響をうけることが分かりました。
■「約850万のフリーランスが課税業者に。」「シルバー人材センターが存続の危機に。」
日本共産党の田村貴昭議員は2022年2月の衆院財務金融委員会で、消費税増税に伴うインボイス制度(適格請求書)の対象業者や影響を国が把握していないことを明らかにし、「導入する政府として無責任極まる」と中止を強く求めました。財務省が2019年2月の日本共産党の宮本徹衆院議員への答弁でインボイス導入による免税事業者から課税業者への転換が約161万件にのぼるとしていが、その後の推計数について財務省は「申し上げることはできない」と拒否しました。
田村氏はフリーランスを例に挙げ、内閣官房試算で462万人、民間調査では1577万人で、55%が事業者相手の取引のため、民間調査の数字をあてはめれば約850万業者が課税業者への転換を求められると指摘。廃業するしかないとの悲鳴も上がっており「廃業も想定の範囲内か」と迫りました。財務相は「そうならないように支援策の周知・広報を丁寧に行う」と述べるだけでした。
田村氏は、鹿児島県のシルバー人材センターではインボイスで約15万円の消費税額が1034万円になるとして「センター存続の危機を招く」と述べ、「年金では生活できず働く高齢者がたくさんいる。センター会員の負担増を発生させずに、事業継続を保障すべきだ」と求めました。
◆シルバー人材センターの会員は請負などの契約で働いており、消費税法上は「事業者」と扱われています。センターの利用料には消費税がかかります。現在は、収入であるセンターからの配分金が月3万~4万円と少額であるため、会員は免税業者の扱いです。インボイスが導入された場合、課税業者であるシルバー人材センターが消費税を負担するか、会員が課税業者になるかを迫られることになります。会員は、事務負担からも経済負担からも、とてもインボイスを発行する課税業者になることはできません。
◆センターは仕入れ税額控除ができなくなり、センターの負担で消費税を納税することになります。新たな税負担は全体で200億円になることを政府も認めています。全国のセンター数はおよそ1300カ所なので1カ所あたりの税負担は1500万円になります。全国の自治体からは、インボイスのもとでは、センターの経営が成り立たないと異議をとなえる意見書が相次いでいます。昨年は100弱だったのが、いまでは242件に広がっています。
◆各地の意見書では「形式的に個人事業者であることをもって、インボイス制度をそのまま適用することは、地域社会に貢献しようと努力している高年齢者のやる気、生きがいをそぎ、ひいては地域社会の活力低下をもたらすものと懸念されます。センターにとっては、新たな税負担はまさに運営上の死活問題」(北海道伊達市議会)などと訴えています。
政府が2023年10月から導入をねらうインボイス(適格請求書)制度に対し、地方議会からの意見書が急増しています。2021年に97件だったものが、2022年9月末現在543件(289自治体)にもなっています。
日本共産党・田村貴昭衆院議員が要求して集計・提示されたものですが、財務省は表題に「インボイス」「適格請求書等保存方式」「シルバー人材センター」との文言が含まれるものだけを集計対象としており、さらに多くの意見書が採択されている可能性があります。
日本には、現在国会に議席をもつ9つの政党がありますが、その中で8政党がインボイス制度に対する意見を発表しています。そして8政党中5政党が反対の声を上げています。2022年11月16日には、インボイス制度の問題点を検討する超党派の議員連盟が設立され、動き出しています。
日本共産党は、コロナ危機と物価高騰から暮らしと営業を守るために、消費税の5%緊急減税とともに、「免税事業者が課税事業者になることを余儀なくされること」「免税事業者が消費税を納付することによる益税がほとんど発生しないこと」を挙げてインボイス制度の導入に反対しています。2022年5月30日には「消費税減税・インボイス中止法案」を参議院に提出しています。
立憲民主党は、2022年の参院選選挙における公約で、新型コロナの感染拡大や相次ぐ値上げ問題を受けて、国民の生活を守る目的で、「時限的に消費税を5%に減税」「インボイス制度廃止」を掲げました。また、インボイス制度に関する廃止法案も国会に提出しています。
国民民主党は、新型コロナウイルス感染拡大による経済的打撃を挙げ、インボイス制度導入に反対の姿勢を見せています。さらに、感染症の影響が収束されるまで、消費税の免除・減税を掲げています。
れいわ新選組は、インボイス制度の中止、消費税廃止を掲げています。消費税がなくなればインボイス制度自体も意味をなさなくなるため、反対の姿勢を見せています。
社会民主党は、参院選ではインボイス制度の廃止とともに感染症拡大を受けて消費税の3年間ゼロ税率を掲げました。
2022年6月10日には、日本共産党、立憲民主党、れいわ新選組、社民党の野党4党共同で、消費税減税とインボイス中止の法案を提出しています。
2021年度の消費税の新規滞納発生額は5121億円となり、コロナ前の2019年度に比べて1000億円以上も増えました。このままでは、消費税が払えなくて倒産・廃業する事業者が続出してしまいます。
コロナ危機長期化の下、今後中小企業は、コロナ対応「ゼロゼロ融資」の本格的な返済が迫られています。しかし、コロナ危機が継続しているうえに、物価高騰が中小企業に襲いかかり、返済に窮し、倒産に追い込まれる中小企業が急増することが強く危惧されます。
過剰債務に陥ると、金融機関から新規融資が受けられなくなり、せっかく仕事が出てきても受けられない資金繰り倒産に追い込まれてしまいます。過剰債務問題の解決は、年末・年始にむけて、喫緊の課題となっています。
そのときに、国として、債務の軽減・免除・返済猶予などに必要な財政的支援がまったくないことは重大な問題です。
現在、日本政策金融公庫は、コロナ対策として、金融機関から企業への融資の一定部分を「別枠」にし、出資とみなして、新たな融資ができるようにする「資本性劣後ローン」を実施しています。しかし数年後に一括返済を求められ利子負担も高いなど、中堅企業でも使いづらい制度で、小規模事業者は対象外におかれています。
――「別枠債務」は、一定期間(1~5年程度、経済状況によっては延長あり)、無担保・無利子のまま返済を猶予します。
――金融機関は「別枠債務」を既存の融資残高から除外し、その融資枠を新規融資にまわせるようにします。
――「別枠債務」は保証協会が保証をつけ、返済猶予期間の利子など地域金融機関にも借り手の事業者にも負担が生じないよう国が支援します。保証協会の保証料は国が負担します。
――「別枠債務」の返済が可能になった時点でも、その後の事業に支障がない返済計画に金融機関が協力できるよう国が支援します。
政府は「中小企業活性化パッケージNEXT」のなかで、関係金融機関が「事業再生スキーム」のもとで、借り手の中小企業にたいして債務の減免も含めた支援を行うことを要請しています。しかしあくまで関係者まかせで、すべての中小企業が対象にならず、小規模事業者は事実上の対象外となっています。
コロナ危機の影響、原材料高の影響、過剰債務の状況は、地域、業種によって格差があります。全国一律の対策だけでなく、地域、業種の実情に応じた支援の仕組みが必要です。
大企業「よびこみ」や「特区」にたよる地域振興策は、全国各地で破たんしつつあります。大型開発・産業基盤(インフラ)整備や補助金の大盤振る舞いが地方財政を圧迫し、暮らしや福祉、中小企業や地場産業のための施策が犠牲にされ、それが地域経済の疲弊に拍車をかけてきました。福岡県では、その反省もなく、総事業費3500円といわれる下関北九州道路つくる計画をすすめています。
世界ではいま、国連総会が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」を合言葉に、貧困に終止符を打ち、地球を保護し、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにすることをめざす積極的なとりくみがよびかけられています。
日本共産党は、住民不在・住民犠牲の浪費と対決し、地域経済を支える住民の消費、地域の産業、中小企業の活動を応援する政策に転換します。
地域に根差した中小・小規模事業者は、福岡県の地域経済を支える主役です。そうした事業者が元気になり、増えてこそ、地域循環型の持続的な経済成長を実現できます。ところが、先進国では日本だけが中小・小規模事業者数が減り続けています。
また、大企業と中小企業の賃金格差が2倍近くあり、ずっと改善されていないのも日本だけです。さらに、地方の中心市街地の商店街がシャッター通りというのも先進国では日本だけです。
EUのような「スモールファースト」の産業政策を実行し、中小企業と地域経済に元気をとりもどします。
異常円安と世界的な農産物・エネルギー価格の高騰は、食料自給率38%、エネルギー自給率10%という、食料とエネルギーを外国に大きく依存し続ける経済の危うさを浮き彫りにしています。食料・エネルギーの自給率向上は、地球規模での食料危機、気候危機の打開のために急務であるとともに、国民の生活と経済の基盤を強化するためにも待ったなしの課題です。
大半を輸入に依存する肥料、飼料、燃油、タネなど資材価格が急騰し、このままでは、農業と農山村、漁業の存続が危うい状況です。円安・コスト高から農業、漁業を守ることは、国民の食料生産を確保する緊急の課題であると同時に、食料自給率向上という国民生活と経済の基盤強化のために不可欠の課題になっています。
第一次産業の衰退と一体の地方の衰退は、自民・公明政権の新自由主義的政策による“人災”です。第一次産業に後継者がいないなどという国は先進国で日本だけです。食料自給率の引き上げは、もっとも重要な安全保障であり、それなしには国土の保全もできないという政治の一番大事な責任です。
本県の新規就農者は毎年200人を超えていますが、高齢化などにより離農が2000人を超え、農家の減少に歯止めがかかりません。基幹的農業従事者(ふだん仕事として主に農業に従事している者)は、食料自給率53%だった1985年度が346万人で、2020年度約136万人の2・5倍です。福岡県の基幹的農業従事者も、85年度の6万9738人は2020年度3万8077人の1・8倍です。
一次産業の再生なしに、地方の再生なし。一次産業を基幹産業として振興して“後継ぎができる産業”にします。先進国最低、過去最低の40%をきる食料自給率(カロリーベース)を「50%以上」を目標に引き上げていくことで、地方を元気にする。この道しかありません。
先進国で、第一次産業に後継者がいないという国は日本だけです。県の2020年度「農林水産白書」によれば、主たる仕事として農業に従事している人は、この5年間で17%減少し、65歳以上の割合が66%となるなど高齢化も進んでいます。県は新規就農者を増やす予算を講じていますが、歯止めがかかっていません。
自公政権が、海外の安い農産物をどんどん入れながら、農家には自己責任を押し付けたからです。農業所得に対して公的助成が占める割合がEU各国は「90%以上」に対して、日本はわずか「30%」です(2016年)。米国は「40%」ですが、販売価格と生産コストの差額を政府が全額負担しています。
さらに、コロナ危機が米価大暴落や畜産、野菜、漁業など農林水産業に大きな打撃となってきました。昨年の米価は、仮払金や買い取り価格が2~4割も下落しました。自民・公明政権は、農業にも自己責任を押し付け、2018年には、政府が生産調整から「撤退」して農業者任せにしてしまいました。そこへコロナ危機による需要減が直撃して、米価の大暴落が起きたのです。くわえて、燃料や資材、肥料・飼料などの高騰が追いうちをかけています。
農業の基幹的な担い手を維持・継承し、耕作放棄地の縮小を図るためには、市場まかせの輸入依存・低価格競争を放置するのではなく、他の先進国で実施されているように価格保障・所得補償を抜本的に拡充します。
増え続ける鳥獣被害は、農業者の生産意欲を失わせ、集落の衰退に拍車をかけています。
福岡高裁は、2022年3月25日、2010年12月に確定した福岡高裁開門確定判決の執行力の排除を求めて国が提訴した請求異議訴訟の差戻審において、請求を棄却した佐賀地裁判決を取り消して、国の請求を認容する不当判決を言い渡しました。「よみがえれ!有明訴訟」原告団・弁護団は、即日、上告及び上告受理申立を行いました。
原告団・弁護団は「声明」を出し、「この不当判決は、・・・2010年12月の福岡高裁開門確定判決・・・時から事情が変動しており、・・・同確定判決に基づく強制執行は権利濫用又は信義則違反になり、許されないとするものです。しかしながら、確定判決に基づく強制執行が軽々に権利濫用と判断されることになると民事訴訟制度の根幹が揺らいでしまいます。そのため、最高裁は昭和62年判例において『著しく信義誠実の原則に反し,正当な権利行使の名に値しないほど不当なものと認められる場合であることを要する』と、厳格な判断基準を示しました。今回の判決は、このような最高裁判例の厳格な基準には一言も触れず、そうした厳格な基準に基づく判断を放棄しています。」と厳しく指摘しています。
認定された事情変更の事実は、いずれもこうした厳格な基準に合致するものではありません。たとえば、中心的争点となった漁獲量に関して言えば、判決の認定は、漁獲量が全体的に増加傾向にあり、確定判決の口頭弁論終結時である2010年頃の数値からの改善がみられるなどというものですが、他方で、判決みずから、被控訴人である漁業者側の言い分を踏まえると、単純な評価は困難といわざるを得ないと述べるなど、自らの判断への自信のなさを露呈しています。
原告団・弁護団の「声明」は、「最高裁判例の『著しく信義誠実の原則に反し,正当な権利行使の名に値しないほど不当なものと認められる場合であることを要する』という厳格な判断基準からすると、こうした杜撰な判断で確定判決に基づく強制執行を権利濫用とすることは許されません。」と批判しています。
差戻審の過程において、福岡高裁は、2021年4月28日に「和解協議に関する考え方」を発表し、紛争全体の、統一的・総合的・抜本的解決のための和解協議を呼びかけました。原告団・弁護団のみなさんは、「国民的資産である有明海の周辺に居住し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、地域の対立や分断を解消して将来にわたるより良き方向性を得る」という和解協議の歴史的意義を踏まえ呼びかけを歓迎しました。しかしながら、この和解協議は国が拒否したために実現していません。
福岡高裁が「和解協議に関する考え方」で指し示した広範な関係者の話し合いによる解決は、紛争が深刻化、長期化、複雑化した今日においては、唯一の解決方法です。今回の判決は、付言のなかで、この判決によって「有明海周辺に実際に生じている社会的な諸問題は、直ちに解決に導かれるものではあり得ない。」などと自ら言い渡した判決の無力さを嘆きながら、「国民的資産であり、人類全体の資産でもある有明海の周辺に居住し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、双方当事者や関係者の(中略)全体的・統一的解決のための尽力が強く期待されるところである。」と「和解協議に関する考え方」と同趣旨のことを繰り返しています。
原告団・弁護団の「声明」は、「不当判決を言い渡しながら、解決の責任を転嫁する裁判所の無責任な姿勢はさておくとして、今後の紛争解決は、裁判所内外における和解協議を粘り強く追求するなかでしかあり得ません。」「わたしたちは、開門に反対する人々を含め、あらためて広範な関係者の話し合いによる紛争の解決を呼びかけます。福岡高裁が『和解協議に関する考え方』で述べたように、国民の利害調整を総合的・発展的観点から行う広い権能と職責とを有する国には、そのための特別の役割があります。」と強調し、次のように結んでいます。
――長引く不漁のなかで、多くの有明海漁民が辛酸をなめています。今季のノリ養殖においても、佐賀西南部においては深刻な色落ち被害のため、かつてない大凶作にみまわれ、廃業すら検討せざるをえない状況に追い込まれています。有明海漁業を持続するためには、有明特措法に基づく被害漁民の緊急救済が強く求められています。そして、こうした被害を生み出さない根本的解決のため、有明海再生に向けた開門と開門調査は不可欠です。
福岡高裁が「和解協議に関する考え方」で述べたように、「国民的資産である有明海の周辺に居住し、あるいは同地域と関連を有する全ての人々のために、地域の対立や分断を解消して将来にわたるより良き方向性を得る」ことを目指し、いまこそ、紛争解決のための話し合いを実現しようではありませんか。
いま、若者世代を中心とした地方への移住志向=「地方回帰」の現象のひろがりに加え、コロナ禍によるテレワークの導入や人の密集を避ける生活で、地方への移住が改めて見直されています。
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